陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

芸術文化と映画 その1

2010-11-03 | 映画──社会派・青春・恋愛
読書の秋です。芸術の秋です。ひっくるめて文化の秋なんです。
10月10日に固定されなくて実感の湧かない体育の日にくらべて、文化の日は分かりやすいですね。明治天皇の誕生日でもあったから、動かしにくいのでしょうね。

文化の日を記念しまして、アート、古代遺跡など文化に関わる映画を選りすぐってみました。昨年の特集は、「芸術と映画」(09年11月28日)にあります。今回は芸術という括りをゆるめて、広く「文化らしきもの」を扱ったものを対象にしました。二部構成でお送りします。



《音楽の秋ならこの映画》

「お熱いのがお好き」
ビリー・ワイルダーお得意の愉快痛快ラブコメ。逃亡中のミュージシャン、女だらけの楽団に潜伏中。マリリン・モンローの歌唱シーンがあまりにも有名。主演のジャック・レモンは最近お亡くなりになりました。

「真夏のオリオン」
太平洋戦争末期、米国軍艦と交戦中の日本国海軍潜水艦たちを描いた戦争映画。一枚の楽譜が、日本国潜水艦を救う。音楽に国境も戦闘もないのだと気づかされる。

「風の丘を越えて─西便制─」
伝統の歌声バリソンを守ろうとする旅芸人の男とその娘、息子の愛憎を描く悲劇的なドラマ。韓国で一大ムーブメントを巻き起こした話題作。

「サウンド・オブ・ミュージック」
歌の力が、彼女の明るさが、寂しい家族を支えた。「エーデルワイス」「ドレミの歌」など多くのナンバーを送り出したミュージカル映画の最高傑作。

「シャイン」
実在するオーストラリアの天才ピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴッドの波乱に満ちた半生。音楽を巡る父と子との愛と葛藤のドラマでもあります。

「天使にラブ・ソングを…」
「天使にラブソングを2」
ウーピー・ゴールドバーグ主演。あばずれ歌手が潜伏したのは、なんと修道院。ブギウギふうに変えられてしまった教会でのコーラスが圧巻。カウンターカルチャーと古典の擦り合わせの妙。続編では、荒れたハイスクールを救うために大活躍。

「おくりびと」
アカデミー賞外国語映画賞受賞の話題の邦画。失業した音楽家が、死を扱う職務に生きがいを見出す物語。


《映画の秋ならこの映画》

「オリヲン座からの招待状」
宮沢りえ演じる、京都のちいさな映画館のオーナーの未亡人と、映写技師の青年との純愛を描いたほのぼの作品。テレビの普及に伴って衰退していく映画館をまもりつづけた男女のひたむきな情熱。

「雨に唄えば」
雨の日になると、コレがかならず観たくなる! トーキー到来期のハリウッド。映画スターと声の美しい歌姫との恋を描いた名作ミュージカル。トーキー到来期のハリウッドを話題にしており、映画史を語るうえでもかかせない逸品。

「ニュー・シネマ・パラダイス」
シチリアの小さな村にある映画館で育った少年と老いた映画技師との交流をえがく有名作。劇中ふんだんに挿入される名画の数々は、映画ファンには垂涎もの。

「ハリウッド・ミューズ」
シャロン・ストーン主演。売れない映画脚本家が、創作の女神のご機嫌取りに。名うてのハリウッドの監督たちが本人役で出演。


《美術の秋ならこの映画》

「宮廷画家ゴヤは見た」
動乱の十八世紀。宮廷画家ゴヤは見た、彼が描いた男と女たちの栄光と挫折を。画家ゴヤの伝記映画ではなく、画家が目にした世相の混乱、黒い絵シリーズなどを描かせた人間の欲望や権力者の裏側、激動期にあっても逞しく生き抜こうとした市井の人びとを描いた良作。

「恋するマドリ」
新居に引っ越してきた女子美大生が、奇妙な三角関係に巻き込まれるラブコメディ。姐さん風をふかせる女性家具デザイナーを演じた菊池凛子は、ずいぶんと演技力のある女優に成長したものです。

「イン・アメリカ 三つの小さな願いごと」
アイルランド系移民の家族が、ニューヨークで暮らしながら、喪失体験を乗り越えていく感動作。ジャイモン・ハンスー演じる黒人の青年画家が存在感を放っています。

「純愛中毒」
生き残ったレーサーの弟に家具アーティストの兄の魂が移った…? よくある憑依モノ(最近だと東野圭吾原作のドラマ「秘密」みたいな)には終わらないどんでん返しがラストに。主演のイ・ビョンホンの陰陽ふたつの役柄の演じ分けがすごい。

「マイ・レフトフット」
実在するアイルランド人身障者画家クリスティン・ブラウンの半生に迫ったヒューマン・ドラマ。エイブルアートという括りでお慰みで評価を得たいのではなく、ふつうに自由な手足をもった創作家と同じように扱ってもらいたがっているのではないかと感じさせる問題提起がある。

「リプリー 暴かれた贋作」
マット・デイモン主演の「リプリー」の設定を借りて、舞台を現代美術界に置き換えた異色ミステリー。

「海辺の家」
末期癌を宣告されたアウトローな設計デザイナーが、家族のために家を建てる。父と子との絆の回復でもあるヒューマンドラマ。生活の全てが詰まった家という箱ものは、家族の依りどころになるということを考えさせてくれる。


《演劇の秋ならこの映画》

「イヴの総て」
ひとりの女優が一夜にしてスターにのしあがる。華麗なる演劇界の裏側をシニカルに描いた不朽の名作。端役ですが、あの若き日のマリリン・モンローが、新進女優役で登場しているのにもご注目。

「櫻の園」
吉田秋生の名作漫画を映像化。柔らかな花びらのようにすぐに散ってしまう一瞬の煌めきをみせる女子高生たち。彼女たち演劇部員が縋りついている大木というのが、いわば「櫻の園」というお芝居だった。

「オール・アバウト・マイ・マザー」
「すべての母親に、すべての女性に捧ぐ」──スペインの鬼才ペドロ・アルモドバル監督のヒューマンドラマ。臓器移植コーディーネーターの母が息子をうしなったのを契機に、過去の舞台女優時代を回顧する旅に出る。

「心の香り」
幻のおばあちゃんを求めて。京劇を通じ、交流する祖父と孫息子をのんびりと描いた中国のホームドラマ風映画。

「さらば、わが愛 覇王別姫」
激動の中国、衝動の愛と憎悪と悲劇。京劇役者が演じた、半世紀に及ぶ壮大な大河ロマン。「覇王別姫」とは、中国の戦国時代の楚王項羽と妃の虞美人との悲恋を描いた京劇の古典。

「道」
フェデリコ・フェリーニ監督作品。旅芸人の男に身売りされた女の悲しい一生。フィギュアスケート男子シングル高橋大輔選手がフリーで演じ、バンクーバー五輪で銅メダル、世界フィギュアスケート選手権では金メダルに輝きました。(氷上のエース、初快挙!(前)氷上のエース、黄金のステップ参照)


音楽や映画界を舞台にした映画が多いですね。
後半で触れる予定の作家の自伝的要素が強い回想録みたいなものは、基本的にはあまり好きではありません。写真家や建築家を話題にした作品が少ないように見受けられるのですが、あまりに現実的で泥臭くファンタジー色がないからなのでしょうか。おそらく観た中にあったのでしょうが、あまりその職業が物語上、重要な位置を占めていないので記憶になかったのかもしれないですね。


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