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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「イン・アメリカ 三つの小さな願いごと」

2010-10-03 | 映画──社会派・青春・恋愛
2003年の映画「イン・アメリカ 三つの小さな願いごと」は、アイルランド系移民の家族が、ニューヨークで暮らしながら、喪失体験を乗り越えていく感動作。
ただ、私がこの映画に感じたのは、感動ではなく、感傷だったのかもしれません。

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アイルランドからニューヨークに移住した四人家族。
父のジョニーは売れない俳優、母のサラはすこしセンチメンタル。ふたりにはクリスティとアリエルの幼い姉妹がいる。
生活が苦しい上に、両親は脳腫瘍で亡くした愛息フランキーのことを悔やんでいた。無邪気な姉妹は、亡くした弟にみっつのお願いごとをすることに。そのひとつめが、姉妹の欲しい人形を手にするために父親をゲームに勝たせることだった。

夜勤のタクシー運転手となって家計がいくぶん楽になった頃、サラは子を身ごもる。そして、姉妹はアパートの住人で黒人の画家マテオと知り合いになるが、彼は病気に冒されていた…。
ふたつめの願いは、階段から落ちた彼を救うためでした。

夢を追いかけてばかりいた父親。夫と仲が悪いわけではないけれど、亡くした子のことで自虐心に囚われている、どこか病んだような母親。そのふたりに新しい子が授かりますが、妻は以前、亡くした面影をそこに重ねてしまう。

いっぽう、年端もいかない姉妹のほうは、かなり冷静に事態を受けとめています。これはまだあの年頃では、死というものの重さ、暗さを認識していない幸福からくるものと思われます。

家族四人の前にとつじょ現れた黒人のマテオ青年。肌の色こそ違いますが、彼は家族が失った存在の可能性としてありえた未来像として登場したようなもの。マテオが「よその惑星からやってきて地球が肌に合わずに弱ってしまった異星人」なのかどうかはともかく、彼は、やがて夫婦に生まれてくる第三子への命のつなぎとして、任を終えていったようですね。

時代は現代だと思いますが、いまだに半世紀も前にはやったアクションペインティングふうの画家なんているのかな、という疑問は湧きました。

さて、姉妹が最後に願ったことは、なんともいえない、けれど切実な願いでしたね。
大きな喪失から立ち直ることは容易ではない。
ジョニーの顔が亡きフランキーに似ているから顔を背けたというサラ。そして、弟が死んだのに自分が生き残っている居心地の悪さを抱えながら、気弱な父を支えきた長女のクリスティ。そして、姉についていく妹のアリエル。
胸の奥が痛くなる映画でしたね。

監督は、知的障害の画家の半生を描いた「マイ・レフト・フット」で著名なジム・シェリダン。
主演の妻サラを演じたのは、「マイノリティ・リポート」で、神秘的な予言者を演じてみせたサマンサ・モートン。本作でも中性的な風貌に、女性らしい強さと脆さを併せ持った役柄ですね。

マテオ役のジャイモン・ハンスーは、「サハラに舞う羽根」でもエキセントリックな黒人役を演じていましたね。エディ・マーフィやウィル・スミスのように、いわゆるスラム街にいてダンスとジャズに長けた都会派ではなく、原始的でただならぬ威圧感を感じさせる希有な役者です。

クリスティとアリエルを演じた女の子ふたりは、実の姉妹だったんですね。じつに可愛すぎます。

イン・アメリカ 三つの小さな願いごと(2003) - goo 映画

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