陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「道」

2009-12-16 | 映画──社会派・青春・恋愛
1954年のイタリア映画「道」は、旅芸人の男に身売りされた女性の苦難の人生を描いたもの。
とにかく、ひたすらかわいそうとしか言いようがない。
そして、酷い男もいたもんだと思ってしまうのです。けれど、どこか憎みきれないのはラストの哀切漂う男の姿のためでしょうか。

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以下、ネタバレあり。

貧しい一家の長女ジェルソミーナは、口減らしのために、一輪車で旅回りをする男ザンバノに売られた。
暴力的でずる賢いザンバノは、芸のときだけは気のいい夫婦のような振りをしているが、舞台を降りれば奴隷のようにこき使い、罵る。そして、浮気もする。

ザンバノがある一座のバイオリン弾きと喧嘩沙汰になった際に、別れるチャンスがあった。だが、あれほど酷いことをされてもジェルソミーナはついていくという。
だが、ある事件をきっかけに、ふたりに別れが訪れてしまう…。

表題の「道」は、おそらく不器用で他に生きる術がないヒロインがすがっている男との人生を指しているのでしょう。
バイオリン弾きはジェルソミーナに教えます。どんなにつまらない小石だって、何かの役に立っている。その言葉を信じて、ジェルソミーナはまた相棒と寄り添う決心をした。
ひととき、ふたりの間にやさしい情のようなものが芽生えるのですが、それはザンバノがみずから犯した罪を密告されないための打算に過ぎない。

けなげに相棒を信じるも最後は裏切られてしまう悲しい女性。その人生を彩るかのようなニーノ・ロータのもの悲しいメロディが涙を誘う。

主演は、ジェルソミーナに、ジュリエッタ・マシーナ。美貌ではなく演技力で勝負する実力派の女優。
共演はアンソニー・クイン。

監督はイタリア映画界の巨匠フェデリコ・フェリーニ。妻は主演のジュリエッタ・マシーナ。
本作はヴェネチア国際映画祭 サン・マルコ銀獅子賞、アカデミー賞外国語映画賞を受賞。フェリーニの国際的名声を高めた代表作。

本作のBGMは、2009年のフィギュアスケートグランプリシリーズで、高橋大輔選手がフリーの演技中流した曲でもあります(「フィギュアスケートGPカナダ杯」参照)スマートな外見の高橋選手に主役の筋肉質のザンバノは似つかわしくないので、道化役のジェルソミーナを演じたのでしょうか。グランプリファイナルのフリーでは惜しいことにミスが目立ったのですが、カナダ杯では躍進の演技で完全復活を印象づけた記念すべき音楽でもありますね。彼もまた、自分の走るべき道をあきらめなかったのでしょう。
フィギュアスケートって映画好きでも楽しめるすばらしいスポーツなんですね。

道(1954) - goo 映画


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