さて、LEAP/E2020の36号の英語版が出た。無料版の方と有料版とがあるが、無料版の方の概要は先のエントリーで分かるので、今回は有料版の方から興味深い部分を紹介しておきたい。無料版のボランティアの方の翻訳も2chにある。
基本的には無料版と同じだが、三つの、舟を飲み込むような巨大な波(rogue waves)が、2009年の夏の終わりから襲ってくるとする。その三つはかならずしも一緒に襲うわけではなく、非同期的に突然襲ってくる。
ひとつめは膨大な失業者の波だ。時期の差があり、アメリカ・英国・スペイン・アイルランドでは2009年の夏の終わり、中国・東南アジア・南米・新規EU加盟国・トルコ・中東・アフリカでは2009年の秋の終わり、そして、欧州・北欧・日本では2009年から2010年にかけての冬に、その波が襲ってくる。彼らは社会的セイフティーネットから外れた存在となり社会的・経済的に大きな問題となる。
二つ目は、会社・銀行・住宅・州・町の連続的な破綻の波だ。上記の失業者の増加・税収や収入の減少によって連鎖的に破綻が広がる。これによって、各国に保護主義的な動きが顕著になってくる。
三つ目は米国と英国の国債、およびドルとポンドの末期的な危機の波だ。2009年の夏の終わりに、米国は国債の利払いが不可能となり、また英国は財政危機から、IMFに援助を求めることになる。そして年末には、かねてから予測した地政学的分裂のフェーズが始まる。実際このたびのBRICsサミットがそのような分裂の最初の兆候であった。ここでは、ドルの危険性が認識されたため、お互いの国同士で、債権を買いあい、米国債を減らすことを決定した。
2009年の夏の末には、米国と英国の資金の必要性はその抑制がきかない状態となり、また同時に買い手の側の疑念も大きくなる。この二つが結合した時こそが、彼らが真実に到達する時となる。そして、米国債と英国債の継続的購入がなされなくなるということになる。
この場合に考えられる第一のシナリオは、FRBと英国中銀が大量の国債を自己で購入することであり、この場合には、ドルとポンドが他の通貨に対して大きく下落することになる。
第二のシナリオでは、米国国債の償還ができなくなることを、米国のオバマ大統領・ガイトナー財務長官・バーナンキ議長がテレビで宣言し、ドルの3割から5割の減価を容認するというものである。これはすでに過去の月報で述べてきた「新ドル」という方法に対応する。
いずれの場合も、ドル(とポンド)は他の通貨に対して大きく下落するため、米国と英国とは輸入インフレに見舞われるだろう。一時的には、ハイパーインフレの状態になるかもしれない。他の国では、デフレの影響により、インフレになることはないだろう。
なお、これらの状態に対応するため、資産の30パーセントは現物の金で持つようにし、また理想的には6ヶ月分の生活費を金で持つのがいい。(その他の通貨レートや、不動産についての対策は省略するが、これは有料版で詳しく読まれたい。)
以上が有料版の要旨である。2009年夏という時期はかなり前から予測していたもので、それは今回も動かされていない。三つ目の、米国債デフォルトが夏に起こるという予測は、なかなか信じがたいものがあるが、彼らも言うように2007年にはサブプライム危機を予測し、2008年には投資銀行の破綻を予測してきた実績があるのであって、無視するわけにはいかない。彼らの予測は時期がずれることはあったが、根本的に違っていたものは少ない。(なお、為替レート予測は大きく外れることが多い。)
ということで、今後、米国・英国がデフォルト的な状態になることはかなり確度が高いと考えている。時期的にはもっとも早くてこの夏の終わり、常識的には来年の春以降と考えていいのではないか。時期の問題は更に検討してゆきたい。
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有料版の内容と翻訳読ませていただきました。ありがとうございます。今のうちに準備できることはしておきたいと思います。
ご存知かもしれませんが、もしデフォルト、銀行封鎖となると、お金の価値が大きく下がりますが、そこで貨幣の逆転現象というものが起こるんだそうです。すなわち紙幣よりも額面の低い硬貨の方が利便性が良いため、相対的に価値が上がるということです。店は客から紙幣を出されてもお釣りが用意できないというのが理由だそうです。・・・ということで、最近せっせと500円玉の備蓄を始めたところです(笑)
いつも興味深くロムさていただいています
さて、金を少々、個人向け国債(モッチロン日本の)少々もっています
一連の流れで、個人向け国債はだいじょうぶなものでしょうか
ご教示いただければ、うれしいで^す
まさに経済のビッグウェーブが世界を襲うとすれば後世に渡って記憶に残る天文現象になるかと期待しています。
この通りになればこの夏は大変です。少しでもマイルドな流れになることを祈っています。
チャーリーさん、
そうですね。ゴジラさんのブログのコメントでよく話題になってるので、私もちょっとは備えておこうかなどとおもっています。無駄になっても問題ないことですので。
みくるんさん、
よほどの大事にならない限り、国内だけで償還のループが完結している日本国債は大丈夫だと思っています。ポートフォリオの一部に入れておいてもいいのではないでしょうか。
にっぽりさん、
来月は皆既日食ですか。ファフロッキーズ現象が日本海側各地で起こるなど、なんか異常なかんじですね。なるべくマイルドなプロセスになることを祈っています。
本当にいつも貴重な情報をありがとうございます。
LEAP/E2020はいつも衝撃的な内容となっていますが、今回のは、これまでの中で最高に衝撃的かつ絶望的な内容だと感じました。
ここまでくると、もはや不可抗力ですのである意味では、あきらめ(明らかに究める)る事ができ、覚悟を決めるきっかけとなります。
何事も前向きに捉えていかなくてはならない事は頭では理解しているつもりですが、やはり怖いですね。
まだ恐慌に突入していない現段階でも既に私の回りの人々は疲弊しています。
景気は底をうったなどと寝ぼけた事を言っている政府ですが、何らかの意図があるのではないかと考えています。
そちらの地方の様子はあまりよくないみたいですね。これから半年ちょっとの間に、世界的激動が来るようです。いろいろな情報のうち何がホンモノかを見極めてゆきたいと思っています。
ハンニさん、
本当の情報が入手しにくいです。だましのない情報を押さえてゆくことが重要です。失業率、銀行の倒産率、貨幣乗数、ケースシラー係数あたりはごまかしがないものなので、重要視すべきでしょう。何がごまかせない指数であるかを追求してゆきたいです。
世界一の金保有国であるアメリカのはずですが、デフォルトした、けどGoldたんまり持ってます、っていう状況でしょ?
こういうのってデフォルトというのでしょうか?
金価格にドルが下支えされるということはないのでしょうか??
アメリカは確かに金は持っていますが、それにしても外貨準備高の8割程度で、現在の膨大な借金に比べたら少ないものになってしまいます(現在の金価格での話です。)これは英国も同じです。
もし、英米が、この金を本当に役立てたいなら、金価格を猛烈に引き上げる政策をとらなくてはなりません。そうすれば、デフォルトを避けるか、かなり影響を緩和することができるはずです。
ですから、起こるはずのことは、金価格にドルが下支えされるのではなくて、ドル建ての金価格を上げることで(例えばオンス1万ドルとか)、国家財政の助けとするということになるはずです。
ということで、いずれにせよ、今後、最終的な局面で、インフレなり、政策なりで、金価格が上昇することは避けられないと思っています。
今なら「デフォルトしたけどGoldは全然持ってませんよー」って状況でしょうけどね。
仮にゴールドがあっても、ドル自体を下支えは出来ないでしょう。通貨体制が違います。
なにか明るい側面はないかと思っていたのですが、
保有する金も焼け石に水でしたか・・・。
やまはさん、Jiaさん、ありがとうございました。
これに関してはゴールドに対する米政府の嘘や欺瞞を追求しているGATAというサイトが分かり易いです。検索されると良いでしょう。
簡単に言えば、ドルの価値を維持する為に保有している金を市場に放出し、市場操作を行っている疑いが非常に高い、と言う事です。しかも各国の中央銀行や大手銀行、関連団体等と連携しています。
この話はゴールドバグやシルバーバグ達の間ではいまや常識に近い話ですが、一般のメディアからは隠蔽されていますから表のメディアからしか情報を得ない人だと、知る機会が少ない話です。
コメントありがとうございます。
アメリカの金の在庫がどれだけあるかはまさに秘密に包まれてますね。FRBの資産内容と同じです。今回の危機でその問題が表面化する可能性があることは確かですね。