(最後に、無料版翻訳へのURL追記あり)
英語版38号であるが、ちょっと多忙にて訳している時間がないため、ほんの概要だけをレポートしておく。
今回は、世界システム危機の第4段階(危機の熟成時期)と第5段階(地政学的転位時期)の姿がだんだんと明らかになってきているとして、米国と英国のデフォルトの危機が底流にある中、欧州はどのように対応すべきかということが中心となっている。基本的には、米国・英国中心の経済・通貨体制から離れ、EUがリーダーシップをとって、BRICs諸国をまとめて、ユーロを中心とした新通貨体制を作っていかなくてはならないとする。この意味で、例のインディペンテント紙のフィスク記者のスクープを高く評価し、実際に行われているものと考え、原油のドル取引中止が2年以内に起こりうるとしている。また、イスラエル・イランの紛争の拡大に緊急の行動が必要であり、またアフガニスタンからは撤退の必要があるとする。また、現在の核をめぐる諸問題は個別の問題ではなく、戦後の核不拡散政策が失敗したことを意味し、それに変わるスキームを作るべきだと述べる。また、世界を、危機により資産がどの程度毀損しているかで4分類し、それぞれの地域での紛争の発生予測をしている。半年以内に、北米・メキシコ・中東・英国等で重大な暴力的な紛争の発生を予測している。以上は無料版の一部である。
また、ここからは有料版から少々述べるが、ひじょうに注目すべき見解としては、現在のドルの価格低下(ドルによる資源国通貨買い)について、一般には「リスク選好」で説明されるが、この説明が完全に誤りだとする。つまり、現時点において、ドルこそがリスクであり、ドルを売るのが当然だとする。また、現在のドル下降は、ドルからの逃避の意味合いが強いとし、今後もその傾向は強まるとしている。
また、警告として、米国債の売れ行き不振から、2010年初頭には、米国の利上げが行われ、その結果、株式市場から債券市場への資金の逃避が起こり、株式市場は新たな下落にみまわれるとする。また、大きな混乱の時期には、前とおなじようなドルへの逃避は起きず、むしろユーロが「安全通貨」として買われる傾向になるとする。その他、円・元・ブラジルレアル、そして金を買うべきとする。
以上のように、今回のレポートでは、現在のドルの価値低下を、リスク選好の結果ではなく、資本逃避(キャピタルフライト)の一部ととらえ、その傾向がさらに強まると述べている点が私には、もっとも強烈な印象を与えた。すでに書いたように、グリーンスパンも、現在の状況についてドルからの逃避の初期段階という評価を述べていたが、それをさらに一歩進めたものだ。株式の崩壊のトリガーが、米国の利上げになり、また、その際にドル高にはならず、ユーロ高になる、など重要な仮説が含まれているわけで、この当否については、今後慎重に考察していく必要がある。いずれにせよ、今後の相場を考える上で重要な示唆を与えるものであろう。
今回から、ダウンロードしたPDFファイル(有料版)に、会員の個人情報が埋め込まれ、また転載禁止等の表記が明確になったので、あまり詳しくは述べない。本体にはその他有用な情報が多いので、ぜひ、会員になって入手していただくことをお勧めしたい。1年200ユーロであるが、継続すると150ユーロに割り引きになる。
2chで無料版の翻訳が出ていた。ありがたいことである。ここにあるので、参照されたい。
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債券が買われるということはドルインデックスが上がるということではないのでしょうか。それともドル以外で債券で買われるということでたとえば円高ドル安とかユーロ高ドル安とかになるとかんがえればいいのでしょうか
たしかにここはやや文意不鮮明ですが、前ほどのドル高はないという意味だと解釈しています。おっしゃるように、債券が買われれば、ある程度のドルインデクスの上昇はあると見るべきでしょうね。たぶん、その後、ユーロも買われていくというようなことでしょう。