うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

二つの祖国

2018年11月29日 | 本と雑誌

二つの祖国(一)~(四) 山崎豊子 新潮文庫(Kindle版)

Amazonのログを見ていると、第1巻の注文は7月23日に、第2巻を8月半ばにしている。読み始めたのも夏の暑いときだった。父の入院のとき、夜中にすることがないのでこれを読んでいた。まもなく読書どころではなくなり中断、その後も長く再開できずにいた。

長い小説だが、そんな事情のせいで余計に長く感じる。冒頭の日系アメリカ人社会の描写から、第二次世界大戦と天羽兄弟の関わりのくだりと、戦後日本を舞台に繰り広げられる、極東軍事裁判の描写は、二つの独立した小説として分けてもよいように思える。

読みやすい文体だが、これが初めての山崎作品ということもあり、最初の頃は、文章のリズム感をつかむのに時間がかかった。読後時間がたっているせいで、どうしても後半の東京裁判の部分の印象が強い。東郷茂徳外相と東条英機首相の描写は印象に残る。ただ、東郷外相はちょっと筆が足りないというか、刺激的に盛り上がった展開のあとを受ける部分が軽すぎて、突き放されたような印象を受けた。このあたり、裁判の描写と、主人公たちの描写が交互に展開するので、単なるドキュメンタリーよりもずっと面白く読めた。

昔の大河ドラマ「山河燃ゆ」の原作に相当する。非常に熱心に見ていたわけではないが、松本幸四郎さんの演ずる天羽賢治は強く印象に残っている。

コメント
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