千葉県館山市長選が行われ、現職市長が再選された。結果は次のとおり。
千葉・館山市長に金丸氏再選
千葉県館山市長選は14日投開票の結果、自民推薦の金丸謙一氏(61)=無現=が、元東京都中野区副区長石神正義氏(62)=無新、元市職員五十嵐正氏(65)=無新=を破り再選。投票率は60・22%。
▽館山市長選開票結果
当 13570金丸 謙一 無現
10336石神 正義 無新
1105五十嵐 正 無新
(選管最終)
この選挙に立候補したのが、石神正義(前・東京都中野区・副区長)候補。選挙結果は次点だった。この人は館山市出身、地元の高校を卒業して、東京都の職員になり、以後40年以上中野区に在職し、副区長(=助役)まで登り詰めた「区役所のボス」だ。
こういう経歴の人は、対照的な2種類のタイプに分かれる。徒党を組み、派閥を作って、そのボスとなり、人事で役所を支配する。もうひとつは、私心を持たず、本人の能力が突出して秀でていて、だれもがその才能を認めるような人。もちろん、後者のタイプは希有で、石神候補が前者に属することは言うまでもない。
どこの区役所にもいる「区役所ボス」の素性を暴いてもつまらない話だ。区役所内の夫婦共働きで、夫は管理職、妻は職員組合(労働組合)に勤務していたなどという、それこそ民間では考えられない”労使協調”の間抜けた話をしても仕方がない。
ただ、この石神正義候補、「中野区幹部不正打刻偽装事件」に関与した張本人で、この事件は裁判沙汰になり、中野区側が敗訴している。(下記参照) これは、癌になり入院中の区の管理職を石神他1名が庇い、当該職員の出勤簿を打刻し続け、あたかも勤務しているかのように見せかけ、その給与、ボーナスの全額を長期間に渡って支給させていたという事件だ。
親しい幹部職員の「お友達」は、違法行為をしてまで助けるが、対立する派閥の幹部職員は人事異動で図書館の別室のような個室に囲い込み、退職を強要する。そういうことが、この区では平然と行われていたという。法令の遵守と公正な執行という公務員の義務を自ら放棄するような行為が行われていたのだ。
こういう男が、館山市という故郷に”市長”として凱旋したら、館山市はいったいどうなってしまうのか、心配していた関係者も多いと聞く。
民主党政権は、地方分権をさらに進めて「地方主権」などと言い出した。だが、末端の地方自治、地方政治の実態は、上述のエピソードで分かるように、行政の私物化、自己の利益のため、平気で違法行為を働くような人が”主流”の世界なのだ。二宮尊徳を尊敬するのなら、自ら見習うべきだろうが、そうではない…。民主党の「地方主権」が行き着く先は、美しい言葉とは裏腹な、前近代のコネ社会が噴出したような、おぞましい「地方」になることは間違いない。
地方の首長選なんてそんなものとも言えるが、東京の23区でもやっているのだからと、明かな違法行為が堂々と伝播してはたまったものではない。その意味で、この選挙結果は、文句なく良かった。
◆石神 正義(いしがみ まさよし)氏(62) 無新
◇企業再建の実績強調
館山市出身で、金丸氏とは中学、高校で同級生。一九六七年に東京都職員となり、中野区に配属。区では都市計画などを手がけ、助役、副区長、中野サンプラザ社長まで上り詰めた。
「長い間に培った行政手腕もあるし、区の財政立て直しや企業再建に尽力してきた」と実績を強調する。
「館山は財政や雇用、地域医療などで危機的状況が続き、このままでは未来の子どもたちに禍根を残す」と出馬を決意した。趣味はクラリネット演奏と家庭菜園づくり。報徳思想を掲げた二宮金次郎(尊徳)の言葉が好きだという。 (東京新聞)
中野区幹部不正打刻偽装事件
区参事の無断欠勤に対し、石神正義総務部長(当時)と田辺裕子総務課長(当時)が、本人の職員カードを使用して出勤簿に打刻、出勤を装って給与の支給・昇給させた事件。
監査委員会より違法な処理として、中野区長に対し損害額(支払済給与)の補填と、関係者の処分・再発防止が勧告したが、田中大輔区長は、不服として東京地方裁判所(東京地裁)に提訴したが平成18年11月2日東京地方裁判所において区が敗訴した。しかし、その日のうちに臨時の部長会議が招聘され、「主張が入れられず認めがたい」と東京高等裁判所(東京高裁)に控訴、平成20年6月26日敗訴した。さらに、最高裁判所(最高裁)に上告したが平成21年7月10日不受理決定それにより原告住民側全面勝訴となった。
尚、石神正義総務部長は現在、副区長に就任。また田辺裕子総務課長は現在、教育長に就任と二人とも特別職となり、田中区長と共に中野区行政の中心を担っている。