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今日の筆洗

2022年01月28日 | Weblog

古(いにしえ)の中国では、官吏登用試験「科挙」が行われた。数日がかりだったという▼受験生はそれぞれ独房のような部屋に食料や布団を持ち込んで問題と格闘したが、「おばけ」を見た話も多く残るという。東洋史家の宮崎市定氏が著書に書いている▼試験会場の門をくぐった受験生たちは、書物や字が書かれた紙片など禁止の持ち物がないか検査を受け、それぞれの部屋に散る。門が閉じられると、試験終了まで開かない。薄気味悪いほど、俗世間から完全に遮断された場所だからこそ幽霊も出ると信じられた▼現代の試験会場も外部との遮断は不可欠だが、禁を破る受験生が現れたようだ。大学入学共通テストの世界史Bの試験中、問題用紙を撮影してネットを通じて外部の大学生に送り、解答を得た疑いがある。昨日、十九歳女性が警察に出頭し、関与について調べが始まった▼試験中のスマートフォンなどの使用はご法度で、電源を切ってかばんにしまうことになっている。監視にも限界があるのだろうか。十一年前にも京大の入試問題を質問サイトに投稿した受験生が逮捕されている▼宮崎氏の著書には、過去に懸想した女性を不幸にした科挙の受験生が試験中、その女性の霊で苦しむ話が出てくる。悪事を働いたせいとあまり同情されなかったらしい。因果応報。試験でのよからぬ企てもいずれは露見すると肝に銘じた方がいい。