Oceangreenの思索

主に、古神道、チベット仏教、心理学等に基づく日本精神文化の分析…だったはずなんだけど!

メタ認知

2010-07-07 | こころ
認知心理学の枠組みの中で
“メタ認知”という言葉が用いられるようになったのは、
1970年代以降のことだという。

フラベルやブラウンの研究により、
通常の認知の上に、もう一段高いレベルの認知…すなわち
認知に対する認知を想定する必要が論じられた。

しかし、メタ認知の発想自体は、
別に目新しいものではない。

例えば紀元前五世紀のソクラテスが、既に、“無知の知”すなわち、
理解するためには、
理解していないことを理解する高次の認知が必要である事を、説いている。

心理学の分野では、十九世紀の内観、1920~30年代の他者調整、
30年代以降の自己調整、1970年代の中央実行性などが、
この概念の先駆けと言えるそうだ。

カウンセリングなどでは、
繰り返し失敗や困難をもたらしている認知や思考のクセに
クライアントが自ら気付けるよう、援助を行うが、
そうしてもたらされたメタ認知が人に進歩をもたらすのは、一般的なことだ。

例えば、決まった場面でいつも同じ傾向の否定的な思考
(わたしはダメだ、どうせ失敗する、など)が湧き起こっていることに、自分で気付き、
それが起こった時に、今度はより現実で合理的な思考へと変えていけるよう
カウンセラーの援助は行われるのである。

メタ認知には、モニタリングとコントロールの二つの働きがあるという。
モニタリングとは、メタ認知が認知から情報を得ること、
コントロールとは、メタ認知によって認知を修正すること。

これは、自己制御の必要条件である。

(三宮真智子“思考におけるメタ認知と注意”
『認知心理学4・市川伸一編』東京大学出版会)

***

この、心理学の概念における“認知”は、仏教における“意識”、
“思考”は“心所”という用語に置き換えられると思うのだが、
実のところ仏教では、メタ認知を認める学派と認めない学派があるようだ。

チベット仏教で“ラン・リク”と呼ばれる、心の再帰的意識としての“自証分”が、
このメタ認知にあたる概念だと思うのだが、

大乗では、経量部、唯識説、瑜伽行自立論証派により支持され、
ヴァイバーシカ学派、経量自立論証派と帰謬論証派からは異論が出ているという。

(ダライ・ラマ“ダライ・ラマ ゾクチェン入門”春秋社 原註より)

しかし、実際には、“意識”をモニタリング、コントロールする機能なくして、
自分の心を訓練することは難しいのではないだろうか?

上座部のヴィパッサナー瞑想(止観の“観”)には、
心の中で、自分の“実況中継”を行う技法がある。

“歩いています、歩いています”と思いながら歩いたり、
“膨れています、へこんでいます”と、
呼吸による下腹部の様子を他人事のように実況しながら
座禅したりするのである。

これは、要するに
メタ認知のモニタリング機能の訓練だと思うのだ。

また、自分の死を観想したり、五蘊のそれぞれの無常を観想したりするが、
これもまた、肉体に伴う認知の不確かさを実感し、
メタ認知を強めるための手法とは言えまいか?

おそらく問題は、“メタ認知”を“メタ認知”として概念化することで、
“メタ認知”が、実在する不変の自分として固定化されることではないだろうか?

メタ認知もまた実際には、
無常であり、空でしかないのである。

つまり、メタ認知は認知に依存して存在し、
そのコントロール機能もまたそのモニタリング機能に依存する。

モニタリング機能は
“気付き、なんとなく分かる感覚、予想、点検、評価”などの部分からなり、
相互に依存するし、
コントロール機能は“目標設定、計画、修正”といった部分からなる。

そしてまた、これらは移り変わる無常のものである、という意味で。

***

ハロエリス、すなわち熊野の速玉大神や飯縄権現、大山津見さまは、
おそらくメタ認知の働きをあらわす神だと思われる。
(正確には、飯縄権現には御膳都神が習合し、
大山津見さまにはゲブ系が習合している、あるいはしていたと思うけれど)

ゲブや、ギリシャのティターン神族(オケアノス系は例外として)が、
肉体に伴う認知を“自分”とする我執の神とすれば、
ヌトやイシス、オリュンポスの神々は、
メタ認知を“自分”とする我執の神だと思う。

どちらも我執の神、天部にかわりはないが、
メタ認知の天部は、自分たちが優れていると考えているようである。

ハヤブサであらわされ、天空から世界を護るハロエリスは、
メタ認知を象徴する霊質系の神で、正神だが、
天智天皇は、この系統の直霊と考えられる。

天武は、大友を滅ぼしただけでなく、天智も裏切ったことになる。
そのため、メタ認知の神の功徳に預かれないのかもしれない。

深見は、メタ認知を“離人症”とのたまった事がある。

もっとも、メタ認知障害というものもあるらしい。
統合失調症でも、メタ認知を司る前頭葉の活動低下が見られるようだ。

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