百醜千拙草

何とかやっています

研究の説明、暴言のウラ

2011-07-12 | Weblog
今、今月末が締め切りの研究申請書を書いております。マウスの手配、研究に向けての共同研究の申し込み、予備データの準備、研究施設の状況報告など、研究内容以外の事柄を整備するのが以外に大変で消耗します。今回は珍しくTranslationalな研究をプロポーズするので、研究の意義を示すという点でラクです。研究費を出す機関にもよりますけど、基礎医学の研究は、最終的には人々の健康の増進、疾病の予防と治療を目指すために行うという建前があるので、研究内容とその究極の目的がどのように繋がっているのかを一般の人にもわかるように説明するのは研究申請者の義務ですが、それはしばしば困難な場合も多いです。それで、研究者本人もちょっと大風呂敷を広げたりせざるを得なくなったりします。

さて、今回、謎だったうなぎの生態にせまる大発見がなされて、ニュースになっていました。おそらくこの研究でも、税金を使って行う以上、納税者たる一般国民に対してその研究の意義をわかりやすく説明する義務があったのだろうと思います。その「説明義務」ゆえでしょうか、天然うなぎの卵を発見した、東京大学大気海洋研究所・塚本勝巳教授の言葉 -

「末永くかば焼きが食べられるように、我々は努力しないといけない」


私、この言葉遣いも好きです。「末永く」、「かばやきを食べる」という「究極」の目的を目指して、真摯に研究に取り組んでいる様子が目に浮かびます。是非ともこの研究費申請書を読んでみたいです。

ところで、前回とりあげた復興大臣の辞任と宮城県知事の話、その背景とその政治的なウラについて、多少知る所がありました。この知事、複数のブログで既に指摘されているように、防衛大学出で松下政経塾出身というちょっと危ない過去を持っていて、宮城復興計画では中央の利権集団と取引して利益誘導をめざす右翼系で政治手法は旧態然とした自民党体質の人のようです。宮城県復興計画は、つきつめれば、野村総研と三菱総研が手を組んで作っており、被災した地元市町村からは、誰一人、震災復興会議の審議委員には選ばれなかったという話もあります。つまり、この大阪出身のどうも旧自民党体質の宮城知事、本当に地域の人のための復興を考えていたように思えない、熱血、暴言大臣、その辺のことが気に入らなかったのではないかと推測されます。
 もうひとつ、田中良紹さんの「国会探検」(http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/07/post_267.html)では、この大臣の辞任の時に、自らを「粗にして野だが卑ではない」と言ったことをとりあげ、わざわざ自分は「卑」でないと言ったのは、「卑」の大権現、空きカンに対する批判であるという説が述べられています。以下、抜き書き。

そもそも松本氏は「菅総理は6月中に辞任すべき」と明言していた。閣僚の中でそう発言したのは松本氏ただ一人である。ところが菅総理は辞任せず、復興担当大臣の重責が松本氏に回ってきた。他に引き受け手がいなかったからである。望まれて任命されたのではない事を本人が一番良く知っている。固辞しても断りきれないと見るや「ならば私流でやりますよ」となった。

松本氏の辞任は菅総理にとって「寝耳に水」だった。「あの程度の暴言なら許容せざるを得ない」とおそらくは思っていた。辞めさせれば自分の延命に関わる。そして今や人事をやろうとしても誰も言う事を聞いてくれない。最高権力者と言っても既に権力はないに等しい。松本氏の後任を選ぶにも副大臣の昇格という選択肢しかなかった。権力者の威令が示された人事ではない。

このように菅総理の延命策はことごとく自らを追い詰めていく。国会の会期延長問題では野党はおろか与党執行部とも溝が出来た。「浜岡原発」の停止要請では地方自治体に不信感を抱かせ、「玄海原発」の再開問題で誰かから入れ知恵された「ストレステスト」がさらに不信感を増幅させた。そして海江田経済産業大臣との閣内不一致も露呈させた。

1年足らずではあるが菅総理の政治手法を見ていると、「ポピュリズム」以外に政治を知らない事が良く分かった。小さな政党に所属してきた生い立ちがそうさせるのかもしれない。この人は大組織を動かす術を全くと言って良いほど知らないのである。

政治家の仕事は政策を国民に訴える事ではない。政策を実現する事である。政策を訴えるのは学者でも評論家でも出来る。しかし政策を実現するのは政治家にしか出来ない。実現するためには反対勢力も含めて現存する組織を動かす必要がある。しかし小政党にいると大組織を動かすノウハウを習得する機会がない。メディアを使って国民に訴える以外に政治の方法を知らない。


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