百醜千拙草

何とかやっています

イスラエルを止めるのは

2023-12-26 | Weblog
イスラエル建国以来、イスラエルとアラブ社会の間で四度(以上)の大きなアラブ - イスラエル戦争(中東戦争)がありました。その恩讐を乗り越えて、30年前、PLOとイスラエルは和平に達することができました。それはこの二十年ですっかり崩壊し、現在の極右イスラエル政権によって、最悪の状況が生み出されました。この二ヶ月のネタニヤフの言動や行動を見ていると、この男は気が狂っているとしか思えません。PLOとの和平を実現させたラビン元イスラエル首相の暗殺の裏にいたのがこの男だという噂もあり、筋金入りの人種差別主義者でパレスティナ人の殲滅とパレスティナの土地の単独掌握がイスラエルの正義だと信じているようです。イスラエルの空爆によってガザで一晩で百人以上を殺したクリスマスの日、この男のスピーチには怒りと恐怖で鳥肌が立ちました。


当然、ネタニヤフに対する周辺のアラブ諸国の反感は強く、もとを辿れば、今回のハマスの攻撃にしてもこの男が引き起こしたものと言えなくもありません。自分でわざわざ災いの種を撒いておいて、相手に罪をなすりつけるような行いに私は全く共感の念を持ちませんが、旧約聖書を文字通りに受け取れば、彼の理屈にも筋が通ってはいるのかもしれません。しかし、私は少なくとも彼を同じ人間とは思えません。

現在、当然ながらガザの大虐殺に対する国際社会の非難は激しく、国連でイスラエル政府の味方はイスラエルについでユダヤ人人口の多いアメリカのみ。アラブは実力行使を取り始めています。イエメンのフーシは紅海からスエズ運河を通ってイスラエルに物資を運ぶ船舶の通行を阻止。そしてアラブ社会の外でも、近く中国がイスラエルの経済制裁を決定するとの噂。これは実現するとイスラエルには大きな打撃でしょう。

そこへ来て、イスラエルはシリアへの空爆によって、イラン革命軍参謀、Sayyed Razi Mousaviが殺害されたとのニュース。いよいよ、全面的な中東戦争へと向かうかの様相を示してきました。

ここで、やはり帰趨の鍵を握るのはアメリカとなりそうです。そして、そのアメリカに強く交渉できる国があるとしたら、中国でしょう。とことん実利的な中国人と米ユダヤであるからこそ、この戦争の得失のソロバンを弾いて、イスラエルの狂人を止めることに合意するかもしれません。

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サムソンの選択

2023-12-19 | Weblog
なぜハマスは今回、二年もかけて準備して、勝ち目がないとわかっている奇襲攻撃を仕掛けたのでしょうか?これは私も疑問に思っていました。神風だよりで真珠湾攻撃をしかけた時の日本政府ではあるまいし、彼らが強大なアメリカの軍事支援のもと核兵器でさえ保有しているイスラエルに攻撃を仕掛けて勝てると思っていたはずがありません。それで、私は、これはパレスティナ弾圧を世界に知らしめるために行った命懸けのデモンストレーションであったのだろうと想像していました。おそらく、それは当たらずとも遠からずだったのだろうと下のツイートとインタビューを見て感じた次第です。

このビデオは、イスラエルの前諜報部長官で海軍司令官であったAmi Ayalon氏のインタビューですが、かれは「今回の戦争は、分断によってパレスティナをコントロールしようとしたイスラエルのハマス支援の結果が招いた」と述べています。

ガザにおいてハマスが台頭する前はファタハがパレスティナ自治を担っていました。PLOのアラファト議長は1993年、イスラエルの融和派であったラビン首相と和平交渉をまとめ、イスラエル政府とPLOがお互いを独立した政府と承認し、イスラエルは占領した地域から撤退するとするオスロ合意に調印、共にノーベル賞を受けております。その後、ラビンはイスラエルの反和平派に暗殺され、アラファトも死亡、結局、イスラエルとパレスティナの共存平和路線は頓挫し、2006年のイスラエルのガザ侵攻を以て、この合意は実質崩壊しました。

アラファトはファタハの初代議長であり、ファタハは当初、シリアの支援のためイスラエルへの武装闘争活動をしていましたが、その後、PLOに参加、80年代からやがて穏健路線へと変わっていきます。そのファタハがパレスティナの統治を担ってきたわけですが、2006年のパレスチナ評議会選挙でハマスに敗れ、以後、パレスティナ自治政府はハマスがガザを、ウエストバンクをファタハが支配するという分裂状態になっています。そして、このパレスティナ政府の内部分裂こそが、イスラエルの戦略であったようで、相手を内輪揉めさせている間に火事場泥棒を働こうという計画であったようです。事実、この間もイスラエルはパレスティナ人居住者の土地を力づくで奪い、強引に入植者を入れ、その領土拡大は驚くような速さで進んできました。

ということで、このインタビューとツイート主のArnaud Bertrand氏のツイートの一部を示しておきます。

以下ツイートより。
「なぜ10月7日なのか?」について、この動画は私が聞いた中で最高の説明かもしれない。驚くべきことに、それはイスラエルの諜報機関シン・ベットの元トップであり、海軍司令長官でもあるアミ・アヤロンによるものだ。

(10月7日の攻撃の)最も主要な原因は「政治的パラダイム」であり、イスラエルによるパレスティナの「分割統治」であった。つまりイスラエルは、パレスチナ人が統一された指導部を持たないようにしたかったのであり、パレスティナ人が「話すべき相手もなく、話すこともできない」という状態におきたかったのだ、と彼は言う。そして、イスラエルは、ハマスがガザを、そしてパレスチナ当局がウエストバンクを支配するようにさせ、お互いがいがみ合うように扇動したのである。その目的のために、イスラエルは、ハマスを強化し、援助し、資金を提供したのだ。

その結果、ハマスはパレスチナ人の支持を得たのだが、それは、ハマスが、イスラエルの占領に反対し、パレスチナ人の自由のために戦う唯一の政権であったからである。一方、ファタハとパレスチナ当局はパレスティナ人からは、「イスラエルの協力者」と認識されるようになった。パレスチナ人の70%から80%はハマスを支持しているが、それはハマスを(自分たちの)自由のために戦ってくれる組織だと認識しているからにほかならない。

イスラエルが10月7日以前の状況を完全に誤解していたのは、イスラエルが "ハード "を測っていたのに対し、ハマスが "ソフト "を測っていたからだ。つまり、イスラエルとパレスチナ人の戦いの後、イスラエルにとっての成功は "人命、軍事施設、軍事インフラの損失 "で測られるのに対し、ハマスが測っているのは "人々の支持 "であった。例として、2021年5月、2週間にわたって戦闘が行われ、約300人のパレスチナ人が殺された(イスラエル側は17人)が、その戦闘について、イスラエルはハマスが「大きな損失と軍事的大敗北を喫した」と考えたが、ハマスの立場からすれば、それはハマスに対するパレスティナ人の支持を高めた「大きな勝利」であった。

もうひとつの重要な点は、バイデンが提示した新しい中東(案)だ。パレスチナ人は自分たちを、独立した民族、独立した国家と考えているのに対して、この案で提示された認識を知って、彼らは世界から孤立し見捨てられた存在だと感じたのだ。その結果、パレスチナ人が「サムソン・オプションを選んだ」のは、失うものは何もないと感じたからであり、「パレスチナ人を無視するのであれば、この地域に安定をもたらすことはできないと世界に示すには、この方法しかないと考えたからだと思われる。
 [筆者注:サムソン オプション(サムソンの選択)とは、侵略された場合に、自らの犠牲を承知で世界を道連れに核兵器を使う イスラエルの戦略のことで、旧約聖書(士師記)にあるペリシテ人に捕らえられて奴隷となっていたイスラエルの英雄、サムソンが、自らの命を犠牲にして数多くのペリシテ人を倒したエピソードに基づいています]

現在のイスラエル指導部の多くの人々が、「ガザに人災を起こすことを政治目標」に掲げているという。これはまさに、最も過激で根本的なイスラム組織の理論であり、ISISやアルカイダの神学であり戦略なのだ。

「ハマスはISISである」というネタニヤフ政権の主張を覚えているだろうか?しかし、イスラエルの目指していることは、まさにISISやアルカイダと同じである。イスラエルのシン・ベットの元トップが、現イスラエル政府はISISだと言っているのである。

ここでの解決策は何なのだろうか?
われわれのアイデンティティを失うことなく、より安全になる唯一の方法は、10月7日の出来事が「世界的な問題」となり、世界のすべてのプレーヤーが2国家というコンセプトに合意することだ。これは、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国、アラブ和平の発起人、彼ら全員が理解している。
、、、、

思うに、イスラエル以外のほとんどの国は、オスロ合意に戻るしか解決策はないと考えていると思います。どうロジカルに考えても他にない。イスラエルのシオニスト政権が「この地はユダヤ人に与えた約束の地であり、そこに住む異教徒を殲滅しなければならない」という聖書の神の言葉を礎に、頑なにパレスティナ人の殲滅と完全な土地の掌握を主張し、1万人近い子供を含む一般人を虐殺し続けています。キチガイ沙汰ですが、手に負えないのは、シオニストの彼ら自身は自らの正当性を半ば本気で信じていることでしょう。イスラエルのシオニスト政権とそれに洗脳されたイスラエル人は、ナチスとそれを支持した民衆と相似だと思うと、暗い気分になります。

想像ですが、この戦争の落としどころとしては、イスラエル国内の良識派とアメリカの支援中止によるネタニヤフ政権の終焉しかなさそうです。実利を重んじるユダヤ人が狂気のネタニヤフとシオニスト政権と心中するはずがないと思います。すでにアメリカのグローバル ユダヤ企業、スターバックス、マクドナルド、フェイスブック、グーグルなどでボイコットやプロテストが起こり始めており、経済損失を出し始めています。アメリカユダヤ商人が損得勘定でネタニヤフを見限ったら、アメリカはイスラエル支援を止めて、シオニスト政権は孤立し自壊するでしょう。

ノーカット版
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バカの壁

2023-12-12 | Weblog
この2か月あまり、イスラエルのパレスティナに対するジェノサイドのニュースで、他の話題に心を向ける余裕がなくなってしまいました。人間はどうしてこんなにバカなのだろう、と中東から遠く離れた場所から眺めればわれわれは思うわけですが、思うに、当事者はひどい視野狭窄に陥っていて、一歩離れたらすぐにわかることでさえもまともに判断できない状態になっているのでしょう。

ナチスドイツを支持したドイツ人、太平洋戦争で特攻隊に日の丸を振っていた日本人、自分たちはパレスティナのテロ組織の被害者だとでも思っているイスラエル人、第三者の立場からみれば、彼らは正気を失っているとしか思えないのですが、当の本人たちは彼らの狭い環境の中で自らの思考や行為の正当性を信じているのだと思います。イスラエルは徴兵制を持ち、兵役従事者はその兵役の間に徹底的にパレスティナ人は敵であって国を守るためには「心を鬼にして」彼らを殲滅することが必要なのだ、という理屈を教え込まれるそうです。「鬼畜米英」とか「中国が攻めてくる」プロパガンダに日本人も容易に洗脳されたこと思うと、軍組織という非民主主義組織で強制的に数年を過ごす間にそこで教え込まれることに染まらない方が難しいように思います。ちょうど、破産して家族を困窮させるまで献金する統一教会の信者、公明党に投票する創価学会員、そして、自民党に投票するする国民のように。

これを乗り越えるのは本当に難しいことです。「バカの壁」という本が昔、流行りましたが、まさにこれです。つまり、「人は知りたくないことに耳を貸さず、都合の悪い情報を遮断する」のです。気分が悪くなるような真実に直面したくないという感情の問題なのです。最初から聞きたくないという感情が先にたっているのだから「話せばわかる」わけがありません。感情は理性で制御しないと暴走します。感情に支配されるのは容易ですが、理性で感情を制御するのは、難しく、トレーニングが必要です。しかるに、理性で感情をコントロールできる能力、それが人間と動物を分けるものであり、それができるようになることが人としての成熟であります。それはともかく、自らの感情や信条を離れ、第三者の立場に立って状況を眺めて判断する能力というのは日々、そういう訓練をしていかないと容易に失われるものです。これは頭がいいとか悪いとかというレベルとは別で、一例としては陰謀論に与する人がそうです。自分の信じていることに対して都合の悪い事実がある場合に、それをいまだ明らかになっていない「何らかの原因」を根拠なく想定することで説明しようとする一種の妄想ですが、本人はそれが妄想であることに無自覚です。事実を客観的に見て何らかの結論を導くのではなく、自分の結論に都合の良いデータを寄せ集め、都合の悪いものは無視するのが陰謀論者であり、謂わば「バカの壁」に囲まれている人と言えるのではないでしょうか。少なからぬイスラエル人が彼らを「テロリストの被害者」だと言い張るのも、ガザのテロリストを殲滅しないと自分たちの国を失うと信じているのも、「バカの壁」でしょう。中東利権とは無縁の世界の大多数、国連参加国の絶対的多数の国が、イスラエルがこれまでパレスティナに行ってきたことは国際法の違反であり、イスラエルが侵略者であり、パレスティナ難民は被害者である、と考えていて、アメリカはイスラエルを利用して中東での立場を強めて金儲けしたいと思っているようですから、イスラエル人以外の国の人々の大多数はイスラエル人の「被害者意識」を共有しているとは思えません。私は、このイスラエル人の「バカの壁」を、イスラエルの科学研究者や高等教育機関のツイートから実感しました。彼らは知性の劣った人々ではなく、むしろ知性においてははるかに優れた人々で、普段の彼らの研究や言動は共感、感心することの方が多いのですが、「イスラエルは一方的に攻撃された被害者であり、その敵であるハマスは殲滅しないとならず、その根を断つためには子供まで殺しておく必要がある」というような立場を頑なに取っています。彼らが、建国以来のこの80年弱のパレスティナ問題の歴史を知らないわけがないと思うのですが、あたかも彼らにとって、そもそもなぜパレスティナ問題を起こしたのは誰か、という根本的な問題は存在しないかのようです。彼らは、1200人のイスラエルの被害者のことは強調しても、イスラエルがこの二か月でその20倍近い数のガザのパレスティナ人を殺し、その多くが子供であるという事実は都合よくスルーします。

これは、自民党支持の知り合いとの雑談でも感じたことでした。私が国会で問題になったとある自民党議員の行いについて述べたところ、その議員が彼の推しだったようで、その問題について、それは他の派閥の誰かが失脚を狙って嵌められたという理論を繰り出し、その議員は被害者なのだ、と言い出したことがありました。その嵌めた奴は誰かと聞いても、それはわからない、と答えるのです。トランプが都合の悪い事実を「フェイクニュース」だと叫びまくり、ウソを垂れ流す病理を私は理解しかねていましたが、どうも多くの人にとって「自分の信じていることは客観的事実に優先する」ということを知ってから、私もあまり親しくない人としゃべるときは、自分の信じていることは大っぴらに言わないようにしています。

バカの壁というのは「自分が正しい」と無自覚に信じることからきており、その危険を知ったからこそ「方法的懐疑」という科学の基礎となった思考法が生み出されたのだと思います。
ガザとイスラエルを隔ている壁は、実のところ、この「バカの壁」だと思います。明らかなのは、この壁は非常に強固であり、問題は、この壁を打ち砕くにはイスラエルが自らそれを打ち砕く努力をする必要があるのに、その兆候が見られないということではないでしょうか。こう考えると、村上春樹氏の「卵と壁」の比喩で"システム"と解説された「壁」とは、実は思考システムとしての「バカの壁」のことでもあったのではないかと感じた次第です。
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長官の死

2023-12-05 | Weblog
先日のニュース。ニクソン、フォード時代に国務長官だったキッシンジャーが100歳で死去とのこと。私が小学生ぐらいの時は、日本の子供がアメリカの歴代大統領の名前を覚える遊びがあったほど、日本はアメリカの植民地色が残っておりました。ケネディー、ジョンソン、ニクソン、フォード、、、子供ですから、ニクソンがなぜ任期中に辞任したのかなど知りません。ただ、彼らは「宗主国の偉い人々」でテレビでよく聞く名前だから子供が覚えただけです。ニクソン、フォード政権のころは、テレビのニュースでは「キッシンジャー長官」は、しょっちゅう出てきて、あの陰気臭い顔を何度も目にしたのを覚えております。日本の子供が名前と顔を覚えてしまうほどアメリカの国務長官がテレビのニュースに頻繁にでてくるという異常な事態は、当時は誰も疑問に思っている人はいないようでした。多分、戦争であまりにコテンパンに負けたので、戦争が終わって30年以上たっていても、日本人は戦争に負けたからアメリカの偉いさんがアレコレ言うのをおとなしく拝聴するのは仕方がないとでも思っていたのでしょう。

そのころ、アメリカは中国との国交正常化に向けて準備中で、キッシンジャーは1971年、秘密裡に周恩来と会談を持ちます。これは翌年のニクソン訪中のお膳立てが目的でありましたが、会談内容は秘匿され、機密期間が過ぎた2002年になって内容が明らかになりました。当時、中国は日本の経済発展を見て、日本が再び再軍備化をすすめアジアの脅威となるという懸念を示しました。現在、日本は世界8位の軍事大国であり、軍拡については50年前の中国の懸念の通りになりましたが、戦争をやるような体力はとてもなく、中国の軍事力は日本をはるかに凌駕するようになり、まともにやれば日本の勝ち目はありません。それはともかく、この周恩来の懸念に対して、キッシンジャーは、日本の軍拡に関しては「在日米軍が抑止力である」という話をします。つまり、在日米軍の真の目的は日本の防衛ではなく、日本をコントロールすることであると考えていたいうことで、これが日米安全保障条約の目的でした。今でも横田米軍基地を「横田幕府」と呼び、真の日本の支配者は在日米軍とその最高司令官のアメリカ大統領だと考える人々が少なくないです。実際、日本の多くの政策を決めているのは、日米地位協定に基づいて開かれてきた定例会議、日米合同委員会での在日米軍からの要求のようです。この委員会は、日本側は防衛省、財務省などを含むいくつかの省庁の役人、アメリカ側は在日米軍司令部の軍人と大使であり、アメリカの日本の政策への「命令」は在日米軍を通じて日本の官僚に下され、それに基づいて官僚が内閣を振り付けるという段取りになっているようです。この度のGDP2%の軍事費拡大も、バイデンが在日米軍を通じて日米合同委員会で出させた命令をキシダが実行したものと考えられます。

さて、米中国交に向けて、密かに段取りを進めてきたキッシンジャーですが、そのお膳立てで実現した1972年初頭のニクソンの訪中のあと、同年秋に田中角栄が首相着任早々、訪中し周恩来と電撃的に会談を行い、アメリカに先駆けて中華人民共和国との国交正常化を宣言するという事件がありました。アメリカが正式に国交正常化を宣言する前に、日本が宗主国の許可なく(本当は田中はアメリカに知らせたらしいですが)中国との国交正常化を宣言した田中の行動にキッシンジャーは「Jap」と呼んで激怒したと伝えられています。それが直接原因なのかどうかわかりませんが、キッシンジャーは田中を快く思わず、数年後のロッキード事件で田中角栄の失脚の絵を描いたという本人の証言もあります。その後、角栄の流れを汲む派閥(経世会系)の政治家は悉くスキャンダルで失脚したり死亡したりした一方、アベ派につながる清和会系の議員は守られてきたことを思うと、従順なる「アメリカの犬」たる清和会系に日本の政治権力を与えてきたのもキッシンジャーであろうと想像されます。

そういうわけで、キッシンジャーは、戦後、アメリカが戦争ビジネスで経済を回すための外交という名の他国の戦争の仕掛け人であり、無数の罪なき人々の死の責任者であると一部では評価されております。アメリカでは、アジアや世界でアメリカが介入した戦争の黒幕という扱いで、市民の反感は強く、政府ポストを去ったあとにコロンビア大学教官へ天下ろうとしたら、学生の抵抗が強くて断念したというエピソードがあります。

イスラエルを使ってアメリカの中東利権を確保するという路線にも寄与してきたと考えられます。現在のイスラエルによるガザのジェノサイドもこの人に責任があると言えないことはありません。Wikipediaによると、国務長官時代に多くのシオニストを政府機関に斡旋し、彼らの活動を支援したという記載があります。日本同様、キッシンジャーは、アメリカの利益のために、南米、アジアの諸国に政治的に介入しました。国際法も正義も人道もアメリカの金儲けに勝るものはないと考えていたでのでしょう。アメリカで権力を得たシオニストがイスラエルのシオニスト政権を支持し、ガザやウエストバンクの数多くの子供や病人や市民の生命や生活を破壊しつづけてきました。そこには彼らの損得計算があります。アメリカはイスラエルを使って中東での立場を強固にしたい、そのためにはガザを完全にイスラエルの領地にして、新たな運河を築きたい、その目的達成のために、イスラエル軍がこの二か月で殺した一万人の子供の命はコラテラルに過ぎないとでも考えているのでしょう。そうでなければ、ほとんど抵抗もできない相手を自国の人質を犠牲にしてまで、ここまで大量殺戮し、街を徹底的に破壊しようとする動機がわかりません。アメリカとイスラエルにとってはパレスティナ人とガザという土地は彼らの望む中東利権に邪魔なのです。ならば、 イスラエルはハマス殲滅を口実に核爆弾をガザに使うようなことを計画しているかも知れません。

もし、キッシンジャーがいなければ、中東の風景もウクライナの風景も、そして東南アジアや南米の風景も現在とは違ったものだったかもしれません。そんなことを思いました。
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