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『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦/ザ・スパイダースの大進撃』

2015-06-23 23:13:03 | goo映画レビュー

原題:『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦』
監督:斎藤武市
脚本:倉本聰/才賀明
撮影:山崎善弘
出演:井上順/堺正章/田辺昭知/井上孝之/大野克夫/かまやつ・ひろし/加藤充/松原智恵子
1967年/日本

原題:『ザ・スパイダースの大進撃』
監督:中平康
脚本:倉本聰/伊奈洸
撮影:北泉成
出演:井上順/堺正章/田辺昭知/井上孝之/大野克夫/かまやつ・ひろし/加藤充/真理アンヌ
1968年/日本

「アイドル映画」の「前衛性」について

 ザ・スパイダースの全盛期に撮られた2作品である。確実にヒットが見込める「アイドル映画」は普段ではできないような「実験作」にもなり得る。例えば、『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦』においては「あらゆる障害を越えて自分の所へ直進してくる人」が好きだとテレビで宣言したチノの言葉をまともに受け止めたザ・スパイダースのメンバー7人が横浜から東京まで文字通り一直線に行進を始めてしまう。結果的にそれは社会に対する若者の反抗という物語として時代にフィットするのである。
 『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦』が物語の設定において前衛性を見せるのだとするならば、『ザ・スパイダースの大進撃』においては物語よりも撮影テクニックに重点が置かれているように思う。中平康監督らしくそれはフランスのヌーヴェルヴァーグのような作風で(最もオープニングのタイトルバックはメンバーのシルエットを使った『ゴーゴー・向う見ず作戦』の方にセンスを感じるのだが)、楽屋における衣装替えのコマ落としや、意図的に出演者がバスの中で動きを止めたり、アイリスを用いて大島つむぎを着ながら鹿児島弁でコンサートを開く想像シーンや、あるいは自動車同士の衝突による火災の後に山の噴火をアニメーションで表現したり、国会議事堂の頂上で歌うなど、要するに男女の絡みのシーンを入れれば後は好きなように撮影できた「日活ロマンポルノ」のようにザ・スパイダースやヴィレッジ・シンガーズの曲を流しておけば「アイドル映画」は好きなように撮れたのだと思う。
 2作品において「前衛性」が上手く機能しているかどうかは微妙ではある。個人的にはクレージーキャッツの作品の方が上手くいっているように思うが、面白くないのは監督よりも2作品で脚本を務めた倉本聰だったのではないだろうか。だから演出家よりも脚本家の方が重視されるテレビに移ることで倉本が才能を開花させた理由が分かるのである。


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