福井県「えちぜん鉄道」の場合
京福電気鉄道福井鉄道部の鉄道事業(越前線)は、昭和40年以降、人口の都市部への集中、モータリゼーションの進展等により輸送人員の減少が続き、平成4年2月に越前線の一部について廃止を表明した。
その後、平成9年に福井県及び沿線市町村で構成する「京福越前線活性化協議会」が設置され、越前線存続のための協議がなされた結果、欠損補助等の行政支援を受ける形で存続された。
しかし、平成12年12月、平成13年6月と二度に渡る列車衝突事故の結果、電車の運行停止を余儀なくされ、同社は単独による運転再開は困難と判断し平成13年10月に越前線全線の廃止届出を国土交通大臣に提出した。
これに対し、県及び沿線市町村では、京福越前線が通勤・通学等の沿線住民の重要な交通手段であることや、高齢化社会への福祉対策に必要であることなどの理由から、平成14年9月、福井市等9市町村(現5市町)が出資する第三セクター「えちぜん鉄道」を設立し、路線の存続及び活性化を図ることとした。
その際、上下分離方式により福井県が国の鉄道軌道近代化設備費補助を活用して安全のための設備投資と鉄道資産の取得を行い、沿線市町村が第三セクターへの資本参加により経営と利用促進に責任を持つこととなった。
福井県の負担は事業用資産取得35億円、運行再開に必要な設備投資7.6億円、10年間の設備投資39億円。
沿線9市町村は約70%の資本参加を行い3.75億円、赤字補填として10年間で27.4億円を負担する。
この存続決定の過程では、旧越前線存続のために活動した区長会を中心とした地元のサポート団体が複数存在していたことや、平成13年6月の運行停止によるバス代行の利用者数が半分以下となり、その結果マイカー送迎による道路渋滞が発生し地域社会が混乱した教訓があり、廃止後の地域交通のありかたについて代替バスへの転換等も含めた論議を行う中で地域における鉄道という資産の重要性が再確認された。
こうしてスタートした「えちぜん鉄道」は、次の様な新たなサービスを実現し、平成15年度138万3千人であった利用者が平成19年度307万1千人となっている。
新たなサービス内容は、平均15%の運賃値下げ、往復乗車券と沿線の温泉入浴券をセットにして割り引きした「湯たりきっぷセット券」、先に報告した福井鉄道と共同開発した全線乗り放題の「福井鉄道・えちぜん鉄道共通1日フリーきっぷ」といった各種企画乗車券の導入、JR・福井鉄道・バス等との結節を強化したダイヤ改正、新駅2駅の開業、期間限定のサイクルトレインの導入、車内サービスや沿線案内を行うアテンダントの導入(実際私が乗車して見たときのアテンダントの方の笑顔は素敵でした。)等々です。
また、地域の取り組みでは、観光協会や自治会等が「えちぜん鉄道サポート会」を設置し、イベントや催し物の支援を行っており、平成19年度には243団体19,926名の利用実績をあげている。
さらに、ボランティアが駅周辺の清掃・美化活動を行ったり(平成19年度30団体1,041名が参加)、年会費1,000円で「えちぜん鉄道」の乗車券を一割引で利用できるといった特典のある「サポーターズクラブ」が設立されている。(平成19年度会員数3,403名)
【国土交通省事例集と「えちぜん鉄道」ホームページより、まとめました。】
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