(10/16 『週刊現代』特別編集委員 現代ビジネス)
日本政界の混乱の合間に、米朝がにわかに一触即発にな
ってきた。北朝鮮の次なる一手は、太平洋上でのミサイル
水爆実験だという。朝鮮労働党幹部の生々しい声を、独占
でお伝えする。
「トランプは一線を超えた」
先月9月は、アメリカと北朝鮮の対立が最高潮に達した「悪
夢の月」だった。
3日に北朝鮮が、6度目の核実験(水爆実験)を強行。15日
には、北海道上空を通過する「火星12型」中距離弾道ミサ
イルを発射した。
こうした事態に、トランプ米大統領が19日の国連総会で、
金正恩委員長を「ロケットマン」と呼び、「完全破壊する」と
警告。2日後の21日には、今度は金正恩委員長が前例のな
い声明文を発表し、「超強硬的対抗措置」を予告した。さら
に、国連総会出席のためニューヨークを訪れた北朝鮮の
李容浩外相が、「太平洋で水爆実験を行う」ことに言及―。
そんな中、本誌は北京と平壌を往復する人物に託す形で、
朝鮮労働党幹部のホンネを聞いた。
以下は、その一問一答である。
Q.エスカレートする一方の米朝対立だが、金正恩政権の内部で
は、アメリカとの対立の激化を、どう捉えているのか?
<A> これまでわれわれは、アメリカがわが国に対して、国連
安保理を通じて、もしくは独自に経済制裁を科すたびに、怒り
にかられてきた。だがそれでも、最後の一線は保ってきた。
だからこそ、8月(14日)に元帥様(金正恩委員長)が(朝鮮人
民軍)戦略軍司令部を視察された際、『(アメリカの)行動をも
う少し見守ることにしよう』と仰ったのだ。 だが、トランプが国
連総会で行った、あの憎むべき演説で、すべてが変わった。
あの演説は、わが国に対する『宣戦布告』に等しい。 あの日
を機に平壌は、もはや米帝との戦争しか道はないという雰囲
気に一変した。 共和国(北朝鮮)の国民は、全員が準軍人と
言ってもよく、戦争の準備は常に整っている。たとえ中国に逃
亡する国民が少々いたとしても、その者たちは思想が固まっ
ていない連中なので、勝手に出て行けばよい。
Q.具体的には、トランプ大統領の国連演説のどの部分が、北朝鮮
をして「宣戦布告」と思わしめたのか?
<A> それは2点ある。第一に、元帥様の声明の通りだ。すなわ
ち、『わが国の完全破壊という、歴代のどのアメリカ大統領の
口からも聞いたことがない、前代未聞の無知蒙昧かつ狂人的
な言葉を吐き続けた』ことだ。
もう一つは、(23日に)李容浩外相が国連総会の演説で述べ
たように、『わが国家の最高尊厳(金正恩委員長)を、ロケット
になぞらえて冒涜した』ことだ。 このような最高尊厳に対する
冒涜も、これまで歴代のどのアメリカ大統領の口からも、聞い
たことがない。
トランプは、わが国家及び国家の最高尊厳を、国連総会とい
う世界最高の公の外交舞台で踏みにじったのだ。 これは、
それまでのようにトランプが、自分のオフィスで即興的に、周
囲に向かって吐き捨てていたものとは、根本的に意味合いが
異なる。まさにわが国に対する宣戦布告だ。
Q.それで北朝鮮としても、前代未聞の金正恩委員長の声明という
形を取ったのか?
<A> あのトランプ発言を聞いて、怒り心頭に発した元帥様の
ご心情は、察して余りある。 それで元帥様は、直ちに最高幹
部たちを招集して、トランプ演説に対抗する声明文の作成に取
りかかった。草稿が完成してからも、元帥様ご本人が入念に
推敲されたと聞いている。
Q.その声明文には、「われわれは史上最高の超強硬的対応措置
の断行を、慎重に考慮していく」と書かれている。
金正恩委員長が言う「超強硬的対応措置」とは、具体的には何
を意味するのか?
<A> それは李容浩外相が、(9月22日に)ニューヨークで発言
しているではないか。『過去最大の水爆実験を太平洋上で行
うことになる』と。李外相の発言の通りだ。
Q.水爆実験は、今年中に行うのか?
<A> すべては元帥様のお心次第だが、早期に実施するよう
準備を進めている。これは、宣戦布告されたわが国のトランプ
への報復であり、自衛の権利なのだ。 水爆は、ロケットに搭
載して太平洋上に飛ばす。わが国が、核を搭載したロケットを
長距離飛ばせることを、米帝と世界に示す。
この最大規模の水爆実験は、正々堂々と行う。わが国の然る
べき場所にロケットの発射台を設けて、発射の準備を進める。
(ロンドンにある)国際海事機関にも、ロケットを発射する期間
と区域を、きちんと申告する。
Q.「太平洋上」とは、どこになるのか?8月9日、朝鮮中央通信は、
「日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過して、グアムま
で到達する中距離弾道ミサイル4発を、グアムに向けて発射す
る計画を立てる」と発表している。狙いはグアムなのか?
<A> われわれのロケット発射計画は、常に緻密な計算のもと
に行われている。ロケットがグアムまで届くことは、すでに証明
しているので、もう十分だろう。 われわれの目標は、アメリカ
本土まで到達する核ロケットを、実戦配備することだ。だから
これから行う水爆実験は、ハワイとアメリカ西海岸を見定めた
北太平洋に向けて発射する。
Q.ハワイやアメリカ本土を攻撃するつもりなのか?
<A> 攻撃ではない。あくまでも、攻撃できる能力を示すための
発射実験だ。 われわれは、米帝を攻撃したいのではなく、先
軍政治(軍事最優先の政治)によって強盛大国(軍事大国)に
なったことを証明し、対等の立場で米帝と交渉したいのだ。
一連の実験は、米帝によるわが国の体制転覆や、米帝が言う
ところの『斬首作戦』(金正恩委員長の暗殺)を抑止するため
の手段だ。
Q.そうは言っても、北朝鮮がハワイや西海岸近くに水爆を搭載し
たICBM(大陸間弾道ミサイル)を撃ち込めば、アメリカは黙って
いないだろう。そもそも発射前に、北朝鮮国内に設置された発
射台を空爆する可能性がある。
<A> もしわが国のロケット発射台が米帝に空爆されたなら、即
刻、米帝との全面戦争に打って出るまでだ。
まずは、ソウルを火の海にしてやる。無数の砲門がソウルを向
いて国境付近に配備されていることを忘れてはならない。
続いて、南(韓国)や日本にある米軍基地を、一斉に攻撃する。
もちろん、米西海岸の大都市に向けても、ロケットを放つ。たと
え一発であっても、米大陸に届かせてやろうというのが、元帥
様の一貫したお考えだ。
Q.日本に対しては、どこに狙いを定めているのか?
<A> 第一に首都圏の横須賀基地、第二にわが国への攻撃に
利用される在日米軍基地、そして第三に、日本海側に広がる
原発だ。
日本が、全面的に米帝と一心同体だと言って加担するなら、
われわれは日本を米帝の一部とみなし、日本にもミサイルの
雨を降らせるだろう。
Q.北朝鮮が開戦したら、アメリカ軍が北朝鮮全土を一斉砲撃し、
たちまち金正恩政権が消滅するのは確実だが。
<A> 最終的な結末が、どうなるかは知らない。だがそうなる前
に、全面的な反撃を行い、わが国の尊厳を世界に顕示する。
ともかく、トランプの国連演説によって、わが国の最高尊厳の
メンツが汚されたのだ。 お返しに、われわれが誇り高くロケッ
トの発射台を設置して、果たしてトランプが引き続き強気のホ
ラを吹き続けられるかどうかを、見定めてやろうではないか。
Q.このまま米朝の対立がエスカレートしていけば、北朝鮮と深い
関係にある2大国、すなわち中国とロシアが、仲介に乗り出すの
ではないか?
<A> 中ロの仲介は、さほど期待していない。 なぜなら、まず
わが国と中国の習近平政権との関係は、将軍様(金正日総書
記)と胡錦濤政権の蜜月時代とは隔世の感がある。 中国の
国有銀行は最近、中国各地にあるわが国の大口預金を、何
の予告もなく一斉に凍結してしまった。もしわが国が米帝と開
戦したら、(中朝)軍事同盟を口実に、鴨緑江を渡って侵略し
てくるかもしれない。 そんな信用ならない国に、わが国の浮
沈がかかった重要事を託せるはずもない。
また、ロシアのプーチン政権とは、このところ大変良好な関係
を築いていて、プーチン大統領の年内の訪朝を、重ねて要請
している。 だが問題は、ロシアと米帝との関係が悪いことだ。
いまのロ米関係を考えると、やはりプーチン政権に調停役を
求めるのは、荷が重いだろう。
その他、南(韓国)の文在寅政権は、話にならない。
日本の安倍晋三政権も同様だ。日本はかつて、米帝に追い
詰められて米帝と戦争した過去があるというのに、いまや米
帝の手先となって、わが国を圧殺しようとしている。日本はま
ったく歴史を教訓としていない。
ともかく、いま起こっている問題は、わが国と米帝とが、2国間
で向かい合って解決していくしか方法はないのだ。
Q.1994年の第一次北朝鮮核危機の時は、最終盤でカーター元大
統領が、クリントン大統領特使として訪朝し、間一髪で米朝開戦
を回避した。 今回も、トランプ大統領が特使を派遣することは
考えられるか? 派遣するとしたら誰になるのか?
<A> 平壌に特使が来るとしたら、おそらくティラーソン国務長
官になるだろう。いまのトランプの周辺で、わが国が受け入れ
可能な高官は、ティラーソンしか見当たらないからだ。
その際には、わが国はリ・スヨン外交委員長が中心になって、
応対することになるだろう。 だが、これは米帝に強調しておき
たいが、ティラーソンが平壌へ来るとしても、チャンスはたった
一回だけだ。
Q.ティラーソン国務長官が訪朝した際には、北朝鮮はアメリカに
何を求めるのか?
<A> 求めることは、主に2点だ。
第一に、わが国を核保有国と認定すること。米帝やロシア、中
国、フランス、イギリスのいわゆる5大国、それにインドやパキ
スタンまで核保有国と認められているのに、わが国だけダメと
いうのは、どうしても納得できない。
わが国は自衛の手段として、どうあっても核保有国として生き
ていく。そのことを認めてもらわねばならない。
もう一点は、わが国と米帝とで、朝鮮戦争の休戦協定に代わ
る平和協定を締結することだ。平和協定の締結に向けて当事
者同士が行動を起こすことこそが、朝鮮半島の平和への早道
なのだ。
近藤大介: アジア取材をライフワークとする。
新著『大国の暴走』(渡部恒雄氏、小泉悠氏との共著)他
24冊の著書がある。
日本政界の混乱の合間に、米朝がにわかに一触即発にな
ってきた。北朝鮮の次なる一手は、太平洋上でのミサイル
水爆実験だという。朝鮮労働党幹部の生々しい声を、独占
でお伝えする。
「トランプは一線を超えた」
先月9月は、アメリカと北朝鮮の対立が最高潮に達した「悪
夢の月」だった。
3日に北朝鮮が、6度目の核実験(水爆実験)を強行。15日
には、北海道上空を通過する「火星12型」中距離弾道ミサ
イルを発射した。
こうした事態に、トランプ米大統領が19日の国連総会で、
金正恩委員長を「ロケットマン」と呼び、「完全破壊する」と
警告。2日後の21日には、今度は金正恩委員長が前例のな
い声明文を発表し、「超強硬的対抗措置」を予告した。さら
に、国連総会出席のためニューヨークを訪れた北朝鮮の
李容浩外相が、「太平洋で水爆実験を行う」ことに言及―。
そんな中、本誌は北京と平壌を往復する人物に託す形で、
朝鮮労働党幹部のホンネを聞いた。
以下は、その一問一答である。
Q.エスカレートする一方の米朝対立だが、金正恩政権の内部で
は、アメリカとの対立の激化を、どう捉えているのか?
<A> これまでわれわれは、アメリカがわが国に対して、国連
安保理を通じて、もしくは独自に経済制裁を科すたびに、怒り
にかられてきた。だがそれでも、最後の一線は保ってきた。
だからこそ、8月(14日)に元帥様(金正恩委員長)が(朝鮮人
民軍)戦略軍司令部を視察された際、『(アメリカの)行動をも
う少し見守ることにしよう』と仰ったのだ。 だが、トランプが国
連総会で行った、あの憎むべき演説で、すべてが変わった。
あの演説は、わが国に対する『宣戦布告』に等しい。 あの日
を機に平壌は、もはや米帝との戦争しか道はないという雰囲
気に一変した。 共和国(北朝鮮)の国民は、全員が準軍人と
言ってもよく、戦争の準備は常に整っている。たとえ中国に逃
亡する国民が少々いたとしても、その者たちは思想が固まっ
ていない連中なので、勝手に出て行けばよい。
Q.具体的には、トランプ大統領の国連演説のどの部分が、北朝鮮
をして「宣戦布告」と思わしめたのか?
<A> それは2点ある。第一に、元帥様の声明の通りだ。すなわ
ち、『わが国の完全破壊という、歴代のどのアメリカ大統領の
口からも聞いたことがない、前代未聞の無知蒙昧かつ狂人的
な言葉を吐き続けた』ことだ。
もう一つは、(23日に)李容浩外相が国連総会の演説で述べ
たように、『わが国家の最高尊厳(金正恩委員長)を、ロケット
になぞらえて冒涜した』ことだ。 このような最高尊厳に対する
冒涜も、これまで歴代のどのアメリカ大統領の口からも、聞い
たことがない。
トランプは、わが国家及び国家の最高尊厳を、国連総会とい
う世界最高の公の外交舞台で踏みにじったのだ。 これは、
それまでのようにトランプが、自分のオフィスで即興的に、周
囲に向かって吐き捨てていたものとは、根本的に意味合いが
異なる。まさにわが国に対する宣戦布告だ。
Q.それで北朝鮮としても、前代未聞の金正恩委員長の声明という
形を取ったのか?
<A> あのトランプ発言を聞いて、怒り心頭に発した元帥様の
ご心情は、察して余りある。 それで元帥様は、直ちに最高幹
部たちを招集して、トランプ演説に対抗する声明文の作成に取
りかかった。草稿が完成してからも、元帥様ご本人が入念に
推敲されたと聞いている。
Q.その声明文には、「われわれは史上最高の超強硬的対応措置
の断行を、慎重に考慮していく」と書かれている。
金正恩委員長が言う「超強硬的対応措置」とは、具体的には何
を意味するのか?
<A> それは李容浩外相が、(9月22日に)ニューヨークで発言
しているではないか。『過去最大の水爆実験を太平洋上で行
うことになる』と。李外相の発言の通りだ。
Q.水爆実験は、今年中に行うのか?
<A> すべては元帥様のお心次第だが、早期に実施するよう
準備を進めている。これは、宣戦布告されたわが国のトランプ
への報復であり、自衛の権利なのだ。 水爆は、ロケットに搭
載して太平洋上に飛ばす。わが国が、核を搭載したロケットを
長距離飛ばせることを、米帝と世界に示す。
この最大規模の水爆実験は、正々堂々と行う。わが国の然る
べき場所にロケットの発射台を設けて、発射の準備を進める。
(ロンドンにある)国際海事機関にも、ロケットを発射する期間
と区域を、きちんと申告する。
Q.「太平洋上」とは、どこになるのか?8月9日、朝鮮中央通信は、
「日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過して、グアムま
で到達する中距離弾道ミサイル4発を、グアムに向けて発射す
る計画を立てる」と発表している。狙いはグアムなのか?
<A> われわれのロケット発射計画は、常に緻密な計算のもと
に行われている。ロケットがグアムまで届くことは、すでに証明
しているので、もう十分だろう。 われわれの目標は、アメリカ
本土まで到達する核ロケットを、実戦配備することだ。だから
これから行う水爆実験は、ハワイとアメリカ西海岸を見定めた
北太平洋に向けて発射する。
Q.ハワイやアメリカ本土を攻撃するつもりなのか?
<A> 攻撃ではない。あくまでも、攻撃できる能力を示すための
発射実験だ。 われわれは、米帝を攻撃したいのではなく、先
軍政治(軍事最優先の政治)によって強盛大国(軍事大国)に
なったことを証明し、対等の立場で米帝と交渉したいのだ。
一連の実験は、米帝によるわが国の体制転覆や、米帝が言う
ところの『斬首作戦』(金正恩委員長の暗殺)を抑止するため
の手段だ。
Q.そうは言っても、北朝鮮がハワイや西海岸近くに水爆を搭載し
たICBM(大陸間弾道ミサイル)を撃ち込めば、アメリカは黙って
いないだろう。そもそも発射前に、北朝鮮国内に設置された発
射台を空爆する可能性がある。
<A> もしわが国のロケット発射台が米帝に空爆されたなら、即
刻、米帝との全面戦争に打って出るまでだ。
まずは、ソウルを火の海にしてやる。無数の砲門がソウルを向
いて国境付近に配備されていることを忘れてはならない。
続いて、南(韓国)や日本にある米軍基地を、一斉に攻撃する。
もちろん、米西海岸の大都市に向けても、ロケットを放つ。たと
え一発であっても、米大陸に届かせてやろうというのが、元帥
様の一貫したお考えだ。
Q.日本に対しては、どこに狙いを定めているのか?
<A> 第一に首都圏の横須賀基地、第二にわが国への攻撃に
利用される在日米軍基地、そして第三に、日本海側に広がる
原発だ。
日本が、全面的に米帝と一心同体だと言って加担するなら、
われわれは日本を米帝の一部とみなし、日本にもミサイルの
雨を降らせるだろう。
Q.北朝鮮が開戦したら、アメリカ軍が北朝鮮全土を一斉砲撃し、
たちまち金正恩政権が消滅するのは確実だが。
<A> 最終的な結末が、どうなるかは知らない。だがそうなる前
に、全面的な反撃を行い、わが国の尊厳を世界に顕示する。
ともかく、トランプの国連演説によって、わが国の最高尊厳の
メンツが汚されたのだ。 お返しに、われわれが誇り高くロケッ
トの発射台を設置して、果たしてトランプが引き続き強気のホ
ラを吹き続けられるかどうかを、見定めてやろうではないか。
Q.このまま米朝の対立がエスカレートしていけば、北朝鮮と深い
関係にある2大国、すなわち中国とロシアが、仲介に乗り出すの
ではないか?
<A> 中ロの仲介は、さほど期待していない。 なぜなら、まず
わが国と中国の習近平政権との関係は、将軍様(金正日総書
記)と胡錦濤政権の蜜月時代とは隔世の感がある。 中国の
国有銀行は最近、中国各地にあるわが国の大口預金を、何
の予告もなく一斉に凍結してしまった。もしわが国が米帝と開
戦したら、(中朝)軍事同盟を口実に、鴨緑江を渡って侵略し
てくるかもしれない。 そんな信用ならない国に、わが国の浮
沈がかかった重要事を託せるはずもない。
また、ロシアのプーチン政権とは、このところ大変良好な関係
を築いていて、プーチン大統領の年内の訪朝を、重ねて要請
している。 だが問題は、ロシアと米帝との関係が悪いことだ。
いまのロ米関係を考えると、やはりプーチン政権に調停役を
求めるのは、荷が重いだろう。
その他、南(韓国)の文在寅政権は、話にならない。
日本の安倍晋三政権も同様だ。日本はかつて、米帝に追い
詰められて米帝と戦争した過去があるというのに、いまや米
帝の手先となって、わが国を圧殺しようとしている。日本はま
ったく歴史を教訓としていない。
ともかく、いま起こっている問題は、わが国と米帝とが、2国間
で向かい合って解決していくしか方法はないのだ。
Q.1994年の第一次北朝鮮核危機の時は、最終盤でカーター元大
統領が、クリントン大統領特使として訪朝し、間一髪で米朝開戦
を回避した。 今回も、トランプ大統領が特使を派遣することは
考えられるか? 派遣するとしたら誰になるのか?
<A> 平壌に特使が来るとしたら、おそらくティラーソン国務長
官になるだろう。いまのトランプの周辺で、わが国が受け入れ
可能な高官は、ティラーソンしか見当たらないからだ。
その際には、わが国はリ・スヨン外交委員長が中心になって、
応対することになるだろう。 だが、これは米帝に強調しておき
たいが、ティラーソンが平壌へ来るとしても、チャンスはたった
一回だけだ。
Q.ティラーソン国務長官が訪朝した際には、北朝鮮はアメリカに
何を求めるのか?
<A> 求めることは、主に2点だ。
第一に、わが国を核保有国と認定すること。米帝やロシア、中
国、フランス、イギリスのいわゆる5大国、それにインドやパキ
スタンまで核保有国と認められているのに、わが国だけダメと
いうのは、どうしても納得できない。
わが国は自衛の手段として、どうあっても核保有国として生き
ていく。そのことを認めてもらわねばならない。
もう一点は、わが国と米帝とで、朝鮮戦争の休戦協定に代わ
る平和協定を締結することだ。平和協定の締結に向けて当事
者同士が行動を起こすことこそが、朝鮮半島の平和への早道
なのだ。
近藤大介: アジア取材をライフワークとする。
新著『大国の暴走』(渡部恒雄氏、小泉悠氏との共著)他
24冊の著書がある。