止まらず一歩

何かをさがして
舞台を増やしたり変えたりしながら
それを残していこうと思います

筒井康隆が考える理想的な“老い”「死の恐怖や苦痛から逃れようとすれば、ボケなきゃ仕方がない」〈週刊朝日〉

2020-01-30 09:46:41 | Weblog

(AERA 2020年1月31日号より抜粋)

 85歳を迎え、新作『老人の美学』(新潮新書)を刊行した文学界の巨匠・筒井康隆さん。情報化社会の本質と大衆の愚かしさを鋭く穿ち、フィクションへと昇華させ続けてきました。作家の林真理子さんと行った対談では、パリッと着こなしたスーツ姿で、テンポ良く関西弁で語る筒井さんに、老いることとは、書き続けることとは……など、マリコさんも聞きたいことが山ほどあって──。

:先生の新作『老人の美学』(新潮新書)、話題になって、とても売れてるみたいですね。
筒井:売れてるといったって、あなたには及びません(笑)。
:とんでもないです。
筒井:調べてもらったら、『老人の美学』というタイトルの本、今までなかったんだって。「老人」と「美学」が結びつかないんだな。
:私なんかは「老人」と先生とが結びつかないですよ。多くの人もそうだと思います。
筒井:僕もう85歳ですよ。老人を主人公にした本を書き始めたのは、もう20年ぐらい前なんです。『敵』というタイトルの本で、老人って見てるといろいろおもしろいでしょう。老人を主人公にしたらおもしろいだろうなと思って、60歳をちょっと過ぎたぐらいに書いたんです。本当に老人になったら老人のことを書けないと思って。
:80代になってみると、そのときとだいぶ違ってましたか。
筒井:ぜんぜん違いますね。悪いところも出てくるしね。
:ご自分で老いを感じたりなさいます?
筒井:それはありますよ。睡眠薬の飲みすぎというか、睡眠薬依存……。
:えっ、そうなんですか? 睡眠導入剤ですよね。
筒井:睡眠導入剤もありますし、ほんとに深く眠れる睡眠薬もあって、両方飲み分けたりしてるんです。
:私の周り、50代60代で睡眠薬を飲んでる人、多いですよ。「夜眠れない」って。
筒井:昼間ウトウトするくせに、夜になったら眠れない。不思議だね。
:このごろ、70代のカッコいい男の人がおむつしたりしてるんで、悲しくなっちゃいます。怒りっぽくなったり

筒井:ああ、怒りっぽくはなりますね。僕もちょっと怒りっぽくなってるなということは自分でもわかる。それはカミさんからも言われる。阿川佐和子さんのお父さん(作家阿川弘之・故人)みたいに、しょっちゅう怒ってるってことはないけど。
:最近、新聞を広げると、「ボケたらこうなる」とか「老人ホームはこんなに悲惨だ」とかいう雑誌とか週刊誌の広告が載ってて、寝たきりになるかボケるかの選択肢を差し出されてるような気がするんです。ああいうのを読んだら、だんだん暗くなっちゃいますよね。
筒井:脅かしてるというかね。脅かしても仕方ないんですよ。ボケちゃったら何が書いてあるかわかんないもんね。だからあれは無意味だと思いますね。気楽に死ねる方法はいくらでもあるし。
:でも先生、死ぬのもけっこう難しいってこの本に書いてありましたよ。尊厳死についてもけっこう踏み込んで書いてらっしゃいますね。いま議論が盛んですけど。
筒井:真理子さんはどう思いますか、尊厳死っていうのを。
:うちの母が亡くなったのは101歳でしたけど、管をつながれて意識がなかったんです。そこまでになると、こんなふうに生かされるのもどうかと思いました。99歳ぐらいまでは非常にしっかりしてて本も読んでましたが、最後の2年間はダメでしたね。
筒井:99歳までは元気でも、100歳になってわけわからなくなったら、そこから先は命を投げ出したらどうですか。「どうにでもしてくれ」って。少なくとも死の恐怖とか苦痛からは逃れられるわけで。
:でも、安楽死も難しそうだし。
筒井:意識がはっきりしてるときに安楽死をしようと思っても、それはなかなかさせてもらえませんけどね。死の恐怖や苦痛から逃れようとすれば、ボケなきゃ仕方がない。だからボケるというのはいいんですよ。わけわかんないんだから、長生きすればするほど死ぬときはラクになる。老衰で死ねばいいんだから。あなたのお母さんみたいに。

:いや、うちの母は寝たきりで可哀想でしたけど、幸せだったのは父で、92歳で亡くなる2日前に「もう十分生きたから、何もするなよ」と言って、直前まで「文藝春秋」を読んでましたし、病院でテレビ見ながらスーッと死んじゃいました。あれはいい死に方だなと思って。
筒井:それはいいね。人間ができてるんだな。
:いや、違います。何かで夫婦ゲンカしたときに、母が「今までさんざん家族に迷惑かけたんだから、死ぬときぐらい人に迷惑かけずに死になさい!」って孫の手でポンとたたいたのを覚えてますよ。そのとおりになりましたけど。
筒井:やっぱりそれは立派だ。

>>【後編/筒井康隆林真理子が“作家として困ること”で共感 その中身は?】へ続く
(構成/本誌・松岡かすみ)


安倍「募集でなく“募っている”認識」Twitterで大喜利状態(まるこ姫の独り言)

2020-01-30 08:30:54 | Weblog

<「募集」と「募っている」とは違う>と思っている安倍首相。
まさかここまで日本語を知らなかったとは。。。
先日の共産党宮本の質疑に対する安倍首相の答弁が絶句するような酷さ。
国会始まってすぐに安倍の中身無さが露呈してしまった。
これだったら海外に行って国会を逃げ回っていた方が、ボロは出なかった。
これからの長い国会、安倍首相はまだ生き恥を晒すのか。。
もっとも、この人の場合、恥をかいたという認識はないのかもしれないけど。

桜で首相「募集でなく募っている認識」 
1/28(火) 15:36配信 日テレNEWS24
・宮本議員「この文書は見たことはなかったけど、募集をしているということは、いつからご存じだったんですか」
◆安倍首相「私はですね、幅広く募っているという認識でございました。募集してるという認識ではなかったものです
・宮本議員「日本語を今まで48年間使ってまいりましたけども、募るというのは募集するっていうのと同じですよ。募集の募は募るっていう字なんですよ」
◆安倍首相「あの、それはですね、つまり事務所がですね、いわば今までのですね、経緯の中において、それにふさわしい方々に声をかけていると」

あまりの日本語と言うか、漢字の意味を知らなさすぎにビックリした。
知性も教養もないとは思ってきたが、これ義務教育レベルの漢字だ。
その意味も知らない?
もっとも、安倍首相の場合、今まで漢字が読めないと言われてきたレベルの漢字は何も難しい漢字ではなく、義務教育を受けている人ならだれもが知っているレベルの漢字だった。
今回も、その手の漢字だ。
ヒヤア~びっくりたまげた。。。。
「募集と募るは違う」のごり押し閣議決定も近そうだ(笑)
今まで、野党の質疑と安倍首相の答弁が全く噛み合わないと思ってきたが、漢字の意味を知らない所からも来ていたのではなかろうか。
今回、漢字の意味を共産党議員に教えてもらう安倍首相。
前代未聞の出来事だ。

現行憲法を守らなければいけない立場の人が公然と「見っともない憲法」と言ったり、「云々をでんでん」と言ったり、「背後をせご」と言ったり、変な人だ思っていたが、やっぱり日本語も良く知らない人のようだ。

麻生財務大臣とどっこいどっこい?・・・上かもしれない。
どちらにしても良い勝負であることだけは間違いない。
これでよく保守を自任できるものだ。


世界民主主義ランキング 167カ国中で日本24位

2020-01-25 08:24:49 | Weblog

(アジアプレス・インターナショナル1/25配信)

英国の経済専門週刊誌エコノミストが、毎年恒例の「世界民主主義指数」(Global democracy in retreat )の2019年度版を1月21日に発表した。
この調査は、エコノミスト誌傘下の競争力分析機関「エコノミスト・インテリジェンスユニット」が実施したもので、選挙過程と多元主義、市民的自由、政府機能、政治参加、政治文化の5部門で、世界167カ国を10点満点で評価した。

最下位は北朝鮮。2006年にこの調査が始まって以降、15年連続で民主主義度最悪の記録を更新した。スコアは1.08で、市民的自由は0点だった。金正恩政権発足後の2012年以降、スコアはまったく改善されていない。政権が自国民虐殺を続けるシリアはスコア1.43で164位だった。
ちなみに、ドイツのベルリンに本部を置く国際透明性機構が1月24日に発表した「2019年国家別腐敗認識指数」で、北朝鮮は調査対象180カ国中172位だった。

◆韓国はアジアトップの23位・米国は25位
韓国が8点でアジアトップの23位、日本は7.99点で24位だった。中国は2.26点で153位。昨年の130位から後退した。米国は7.96点で、韓国、日本より下の25位だった。

世界で最も民主主義指数が高いのはノルウェー、2位はアイスランド、次いでスウェーデンが3位だった。


<文春砲、炸裂!>河井夫妻「買収」原資は安倍マネー1億5千万円だった 秘書4人派遣「安倍丸抱え」で公選法違反 

2020-01-23 09:50:57 | Weblog

買収の原資か 河井前法相夫妻「選挙資金」15千万円の「入出金記録」を入手した(週刊文春 2020年1月30日号)

 公選法違反(運動員買収)の疑いで広島地検の捜査を受けている河井克行前法相(56)と妻の案里参院議員(46)の政党支部に、参院選の前に合計1億5000万円が、自民党本部から振り込まれていたことが「週刊文春」の取材でわかった。現在、捜査対象となっている運動員買収の資金は、これらの政党支部から支出されており、「違法買収」の原資となった可能性がある。自民党幹部によれば、一候補に1億円を超える選挙資金が提供されるケースは異例中の異例だという。
 河井陣営の金満ぶりは、当時から広島県内で話題になっていた。
「案里事務所はタウンメールというビラのポスティングを公示前から複数回やっていたが、1回あたり1500万~2000万円ほどかかるのに、なぜあんなに何回もできたのか。菅義偉官房長官が演説に来たときは駅から数百メートルにわたって看板が立てられるなど、とにかく物量が桁ちがいでした」(自民党広島県議)
 それを可能にしたのが党本部からの資金提供だったのだ。
「目下、広島地検は違法買収を可能にした克行・案里両事務所のカネの流れについて徹底的に調べています。押収資料の中には、党本部から大量のカネが次々と入金されていた記録もあります」(捜査関係者)

捜査当局はすでに通帳や経理担当者のメモなどを多数押収しているが、その中でも決定的な書類がある。事務所内で共有されていたとみられる“入出金記録”だ。小誌が捜査関係者に接触を繰り返し、ついに入手したその写しには、驚くべき数字が並んでいた。
第七

4月15日 15,000,000

5月20日 30,000,000

6月10日 30,000,000
第三

6月10日 45,000,000

6月27日 30,000,000
 第七とは自民党広島県参議員第七選挙区支部のことで、代表者は案里氏。一方の第三は、克行氏が代表を務める自民党広島県第三選挙区支部。つまり夫妻の政党支部に、参院選前のわずか3カ月間で計1億5000万円が振り込まれていた。
「党本部のお金は幹事長マターだが、河井陣営に1億5000万円も投下したのは安倍首相の強い意向があってこそ。克行氏は安倍首相に近く、長く首相補佐官を務めていました。広島選挙区で安倍首相と距離のあった自民党候補・溝手顕正氏に比べて、明らかに案里候補に肩入れしていました」(自民党関係者)「週刊文春」の取材によれば、溝手氏に党本部から提供された選挙資金は、案里氏の10分の1だったという。

 河井夫妻それぞれの事務所に聞くと、「法令に従い適正に処理し、その収支を報告書に記載し報告する予定です」とそろって文書で回答した。
 1月23日(木)発売の「週刊文春」では、河井克行氏が案里氏の選対の実質的トップだったことを示す証拠LINEや、これまでまったく報じられていない新たな運動員買収疑惑、4名の秘書軍団を広島入りさせるなど安倍首相がいかにして案里氏を当選させたのか、などについて、5ページにわたって詳報している。(了)

 

【自民党に対する政党助成金の打ち切りを提言】

党からの選挙資金には、かなりの割合で政党助成金が含まれている。<政党助成金=税金>

「桜を見る会」に群がった安倍支持者に費やされたのも、河合夫婦の選挙資金に費やされたのも<税金>だとするなら、かなり高い割合の国民の意志に反するものであったと言いたい。公選法や政治資金規正法に違反があった議員の政党に対する政党助成金の完全停止を実現したいと思う。

見てみよ・・・国・地方で金に纏わる不正のほとんどは自民党議員の周辺で起きている。(一歩)


立川談四楼 師匠が面白いものを見つけてくださった

2020-01-20 12:33:04 | Weblog

2020.01.19 まるこ姫の独り言

お気に入りに入れている立川談四楼 師匠のツィートが傑作だった。
「今国会の「決算行政監視委員」の名簿は大笑いできる。甘利明、小渕優子、河井克行、菅原一秀、船橋利実、秋元司、下地幹郎、丸山穂高と、怪しい議員が名を連ねているのだ。彼らが「決算行政を監視する」ということだから。これ、泥棒が警察の動きを探るということと同義だよね。(2020.01.18)」

ええ?ホントかいな?
絵に描いたような面白い話じゃないか。。。
間違って揶揄したらいけないと思って、早速衆議院のサイトに飛んだら、まさに立川師匠のツィート通りだった。

衆議院トップページ決算行政監視委員会・委員名簿=令和 2年 1月17日現在)

甘利も小渕も河井も菅原も秋元もいた。
おまけに下地、丸山も
説明責任も果たさず逃げまくって来た議員が、行政を監視?
この議員たちは決算行政を監視する役目らしいが、師匠がツィートしておられるように泥棒(犯罪者)に権限を与えるも同然の委員会だ。

監視されるのは、政治家でありながら、国民を舐めて説明責任も果たさず逃げまくって来た、甘利や河井や菅原や丸山・下地で、甘利なんて睡眠障害にかかったらしいが、知らない間に何の説明もせず復帰している。 そんな議員が行政を監視する委員になるなんて、どれだけブラックジョークなんだか。。
「監視されなければいけない議員」の間違いじゃないのか。
盗人猛々しい。。。
しかし自民党から委員を選ぶと、必ずこういう笑えない結果になる。
どのメンツも、訳アリと言うか脛に傷持つ議員ばかりでどうしようもない。
決算行政監視委員会 委員名簿を見てビックリしたのは、未だに「君」付で呼んでいる事。 何時代の発想なのか。

安倍首相は、○○改革と呼ぶのが好きだが、本当に変えなければいけないのは国会改革じゃないか。
それにしても税金で歳費を賄われているという重みを感じられる議員が少ないのは何なのか。
税金におんぶにだっこでやりたい放題。

自民党の議員を見ていると議員としての活動もせずに、私利私欲に明け暮れている。 総理自ら血税を食い物にしているから、下が真似をしても何も言えない情けない国の姿。
今年こそは、安倍政権に鉄槌を!


私が会った忘れ得ぬ人・竹内直一さん

2020-01-18 10:19:32 | Weblog

横田 喬 (作家)

<日本の高級官僚の大半は公僕意識がない>

 安倍首相ら一統による「桜を見る会」がスキャンダル化しているが、論及は次回に回す。「もり」「かけ」問題が先ごろ安倍政権を強く揺るがした時、私はキャリア官僚出身で無類の正義漢である竹内直一さんの面影を懐かしく思い起こした。

 森友学園問題では、決裁文書の改竄をめぐって国有地の値引きを担当した近畿財務局から自殺者まで出した。だが、証人喚問を受けた佐川宣寿国税庁長官は「刑事訴追を受ける恐れがあるから」と五十五回も証言を拒否。大阪地検特捜部は「証拠不十分」として、なんと不起訴処分に。一方、加計学園問題では、前川喜平前文科省事務次官が退官後に「加計ありきで行政が歪められた」「民主主義の危機」と痛烈な安倍政権批判を展開している。

 もし竹内さんが健在なら、佐川氏や大阪地検の情けない体たらくを痛罵し、前川氏の毅然たる言動に喝采を送るに違いない。今から四半世紀余り前の1993(H5)年、『朝日新聞』記者だった私は彼を単独インタビューし、以下のような記事(要旨)を記している。
 ――京都で生まれ、東大法学部を出て農林省へ。昭和42年、出向先の経企庁で国民生活局参事官として在任中、牛乳の一斉値上げに抵抗し、撤回させる。このため、乳業各社とそれに同調する農林省に排斥され、翌年退職に追い込まれる。

 その翌年、日本消費者連盟を旗揚げし、運動の第一線に。欠陥商品を社名入りで追及し、詐欺的商法を告発。幅広い分野で「消費者主権」確立を目指し。着実に成果を上げてきた。
 ●「農林次官をやったのが大手乳業メーカーの副社長に天下りしていて、竹内が主婦を扇動して我々に数十億の損害を与えた、けしからん、やめさせろとねじ込んだんです。日本の高級官僚の大半は公僕という意識なんて全くなく、業界の下請けを平気でやり、自己の栄達を図ることに汲々としている」

 ●「人事院にも出向したからわかったが、日本の官僚組織は欧米とは大分違う。政治家になるための予備校的感覚で役人になったり、公益法人と称して必要もない外郭団体を作って役員に天下りしたり。天下りは補助金という持参金付きだから、税金の莫大な無駄遣いです」
 ●「規制緩和が問題になってますが、役人が許認可権にこだわるのは、手放せば自分たちのクビ切りにつながるから。日本のように社会が成熟すれば、小さな政府でいい。民間がリストラに努めているんだから、役所だって当然リストラに励むべきです」
 明快で痛烈な指摘は小気味よかった。硬骨漢の見本のような75歳。――

 帰りしな、竹内さんは立ち話で、こうも言い添えた。
 ――官僚は公僕なのに勘違いをし、「オレたちが国を支えている」と本気で思い込み、議会を「お荷物」視し、主権者の国民を「衆愚」視して、何も知らせようとしない。大事なのは、国民が「東大出などのキャリア官僚は優秀」という思い込みから先ず抜け出すことです。

 竹内直一(敬称略)は1918年、京都御所のすぐそばで生まれた。父は商人で、両親とも「進学も就職も好きなように」と本人任せにする人柄だった。府立一中~旧制三高当時は柔道や陸上競技に打ち込み、体づくりには食べ物が何より大事と気づく。
東大法学部へ進み、本郷の古本屋で『農村青年報告』という本に接し、農村の実態や農民の苦しみを知る。1941 (S16)年に高文試験に通り、農林省へ入る。同年暮れ、太平洋戦争が勃発。繰り上げ卒業~海軍主計中尉として南方戦線へ送られ、辛酸をなめる。

敗戦後の1945年暮れに帰国~復員し、農林省へ。飼料課長として働く61年、自民党党人派の「暴れん坊」河野一郎が農林大臣に就く。飼料会社オーナーでもある彼は、飼料払い下げを恣に行おうと企て、生産者団体側に立とうとする竹内との間で強い摩擦が生じる。 上司の畜産局長は実力者の河野に尻尾を振る男で、同僚の課長連中もその威勢になびく者が大半。孤立した竹内は局内で深夜まで吊し上げを食ったりした。彼はこう振り返る。
 ――目端が利く者は皆忠勤を励み、河野邸が東京・目黒に新築されると営林局長が立派な庭石や庭木をせっせと運び込む。みんな管下の国有林から剽窃してきたものだった。

 権力者に盾突く役人は徹底的に干される定めだ。竹内に愛知用水公団東京事務所長への出向命令が下る。職員はほんの数名で、仕事の内容は理事長のカバン持ちと上級官庁への連絡折衝の下請け業務。政界人や高級官僚らのご機嫌を取り結ぶ役回りに二年余り耐える。
 が、どうにか農林省に戻り、大臣官房経理課長などを経て65年に経企庁へ出向。新設された国民生活局の参事官(局次長相当)に任ずる。 竹内は商品の不当表示問題や独禁法違反のヤミ再販問題などを取り上げ、国会の商工委員会などで野党委員に追及してもらい、消費者側に有利に運ぶよう取り計らう。翌々年春、農林省は牛乳の小売価格(67年当時で180mlが20円70銭)を一本2円値上げしたい、と内閣に申し入れる。同省はそれまでも行政指導の形で「1円上げろ」「2円上げろ」と各県に通達。実質的な公定価格で全国一律一斉の値上げが罷り通っていた。竹内は消費者の側に立ち、このような慣行はもはや許されぬと判断。野党側に働きかけ、国会で倉石忠雄農相が厳しく追及され、値上げ案は撤回へ追い込まれる。

 乳業メーカー各社は値上げ幅も値上げ時期もばらばらに陥り、大慌ての体に。このため元農林次官で森永乳業副社長に天下りしていた男が「農林省出身の竹内という男が消費者を扇動し、業界に数十億もの大損害を与えた。即刻、首を切れ」と農林省へ怒鳴り込む。
 ほぼ一年後、竹内は農林省に戻され、「大臣官房付き」というヒラの身分に。事務次官から「辞めて民間に行け」と宣告され、退職金や年金の計算でワリを食うヒラ扱いでの退職に追い込まれる。彼はこう述懐する。「官僚機構の秩序を乱す者はこんな目に遭うぞ、という見せしめのお仕置き。日本の官僚の大多数が業界の顔色を窺って仕事をし、国民の幸せを考えようとしない何よりの証拠です。」

 農林省を退官後まもなく、竹内は身一つで日本消費者連盟を旗揚げし、活動に乗り出す。
70年、経企庁在籍当時に集めた資料を基に「不良商品一覧表」を公表し、各社の欠陥商品を社名入りで厳しく追及する。さらに、強引な訪問販売や街頭でのキャッチ・セールで英会話教材などを売りつける米国系のブリタニカ商法を東京地検に告発。勝利を収め、男性参加の「告発型」と言われる消費者運動を新たに切り開く。

そして、当時は街中の豆腐屋さんが防腐剤として常用していた食品添加物AF2の毒性に注目。マスコミなどとも共闘して追放運動に乗り出す。74年にAF2の発癌性が実証され、使用禁止へ持ち込む。その戦闘的な運動スタイルから「日本のネーダー」(注:ラルフ・ネーダーは環境問題や消費者の権利保護問題などに長年取り組んだアメリカの社会運動家・弁護士)と呼ばれるに至る。

 同年、「すこやかないのちを子や孫の世代へつなぐ」ことを理想に掲げ、各地の草の根運動の結集に乗り出す。有害食品・不当表示・詐欺的商法・原子力発電・農薬など幅広い分野で「消費者主権」の確立を目指す運動を展開。80年代以降は国際交流にも力を入れ、89年には「アジア太平洋消費者会議」を東京で開催する。マレーシアの熱帯雨林地域サラワク出身の女性から「日本への木材輸出で、私たちの森はあと十年で裸になる。日本の山は青々と茂り、人々は割り箸を平然と使い捨てにしている」となじられ、忸怩としたと言う。
 竹内さんは2001年、大動脈瘤破裂のため83歳で亡くなった。


安倍首相を告発「桜を見る会」疑惑 捜査開始で官邸窮地か

2020-01-16 08:33:52 | Weblog

2020/01/15 日刊ゲンダイ
 

 安倍政権への“包囲網”が狭まっている。神戸学院大教授の上脇博之氏(憲法学)らが14日、「桜を見る会」をめぐり国に財産上の損害を与えたとして、背任容疑で安倍首相に対する告発状を東京地検に提出したのだ。いよいよ捜査が動きだし、政府が「廃棄した」と言い張っている招待者名簿が表に出てくるかもしれない。
 上脇教授らはきのう都内で会見し、桜疑惑について「見過ごすわけにはいかない」と強調。安倍首相が2015~19年の桜を見る会に地元後援会や与党議員、妻・昭恵夫人らの利益を図る目的で招待者枠1万人を超える人数を招待し、約1700万円の予算を2000万~3700万円超過して国に財産上の損害を与えたと訴えた。
 告発代理人の阪口徳雄弁護士も会見で「政府は招待者名簿はないと言っているが、参加した人数は明らかにしている」「実は、名簿は存在するのではないか」などと指摘。「告発を受け、捜査することになると、検察は政府の担当者にヒアリングすることになる。名簿をオープンにすることができる可能性があると考えています」とも説明した。
 政府は桜を見る会の招待者名簿について「廃棄した」の一点張りだが、捜査が始まれば名簿があるかないかハッキリする。

 菅官房長官はきのう午前の会見で名簿が残されている可能性を問われ「できるだけ精査して対応している」と発言。「調査しない」との態度を一転させたのかと思いきや、午後の会見で「再調査しない」と言い出した。動揺しているのがアリアリだった。
 菅氏の支離滅裂ぶりはそれだけじゃない。午前の会見で、内閣府が13~17年度分の招待者名簿について公文書管理法で定められた「行政文書ファイル管理簿」に記載していなかった違法行為を追及されると、「(民主党政権時代の)11年と12年は開催直前に桜を見る会が中止になり、管理簿に掲載すべきだった招待者名簿を掲載せずに廃棄した。その取り扱いが前例として13年以降も漫然と後任に引き継がれた」などと言い訳。
 当時の民主党政権も管理簿に記載していない、民主党のやり方を踏襲した、と自分たちの違法行為の責任をなすり付けた。しかし、11年も12年も「桜を見る会」は開催されていない。税金で有権者に供応した安倍政権とは事情がまったく違う。「悪夢」だった民主党政権の前例を踏襲している矛盾にもダンマリだった。
 検察の捜査が官邸を追い込むか。

 

【記事に対するコメント紹介】

告発されて当たり前の行為が政府で行われた
政治の私物化、国の基と成る公文書への不正。こんな政権は、見たことが無いと与党の自民党党員が嘆く程の悪態が続く現状。
前代未聞の狂気の沙汰を繰り返させてはいけない。安倍政権は悪態菌を撒き散らし日本を蝕んで行く。


カジノ汚職の捜査拡大 特捜部が国会議員50人を事情聴取か

2020-01-11 13:20:12 | Weblog

2020/01/10 日刊ゲンダイ

 東京地検特捜部は、収賄容疑で逮捕された衆院議員の秋元司容疑者を勾留期限の14日にも再逮捕する方針。また、すでに自民党の白須賀貴樹衆院議員や勝沼栄明元衆院議員を任意で事情聴取していたことが分かった。贈収賄の全容は、かなり大がかりなものだとみられる。

「週刊朝日」のオンライン限定記事によれば、秋元は逮捕前に以下のような爆弾証言をしていたという。
●「約2000万円もらっている議員がいる。ケタが1つ、違うだろうっていう議員だっている」
●「(自民党内の)IRの三羽烏って呼ばれる議員なんか、そりゃすごいんじゃないか。12月になって、俺の疑惑が報じられはじめたら、3人は俺の電話にすら、出なくなった。ひどいやつらだ」
●「なんらかの形でカネもらったり、便宜を受けたリストに載っている議員は30人はいるんじゃないか」

 実際、この年末年始に特捜部が複数の国会議員から任意での事情聴取を行ったとの情報が流れ、政界はこの話題で持ちきりだ。
「事情聴取というより、事件に関する協力要請のような段階でしょうが、IR議連の役員を中心に、話を聴かれた議員の数は与野党で30人とも50人ともいわれている。その噂を裏付けるように、あるメディアは今週になって、IR議連に名を連ねる国会議員に『500ドットコム社の社員や顧問らと会ったことがあるか』『IR関係の企業から金銭や物品提供の申し出を受けたことはあるか』などの質問項目を添付した取材依頼を送っています」(永田町関係者)
 発売中の「週刊文春」もIR議連会長の細田博之元官房長官や、副会長の河村建夫元官房長官に「事情聴取を受けたのか」と直撃取材。2人とも「ありません」と否定したが、捜査は政権中枢に及ぶ可能性もある。IR議連は、200人以上の議員が参加していて、役員だけで40人近くに上る。安倍首相も2014年まで最高顧問を務めていた。
 贈賄側の「500ドットコム」が「100万円を渡した」と供述した5人の衆院議員もIR議連のメンバーだった。そのうち、下地幹郎衆院議員がカネの受領を認めて日本維新の会を除名になったが、自民党の4人は受領を否定している。

 特捜部が狙っているのは誰なのか。自分の名前も捜査線上にあるのか――。国会議員の間では疑心暗鬼が広がっている。新たな逮捕者が出るとすれば、通常国会が召集される20日までが、ひとつのヤマ場。多くの議員が眠れない夜を過ごしているはずだ


安倍首相の中東訪問中止に批判噴出「逃げるなら自衛隊派遣も見直せ」 米イラン衝突で混迷する日本外交

2020-01-09 10:13:27 | Weblog

AERA dot. 1/8(水) 17:44配信

 政府は8日、イランがイラク国内の米軍駐留基地をミサイル攻撃したことを受け、今月中旬に予定していた安倍晋三首相の中東歴訪を見送る方針を固めた。安倍首相は11日に出発し、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、オマーンの3カ国を歴訪するとされていた。日程は7日の自民党役員会で安倍首相自ら発表したが、わずか1日で決定が覆ったことになる。

 中東歴訪の中止は、米国とイランの間で緊張が高まっていることが影響したのは間違いない。一方、安倍政権は昨年12月27日、中東海域に自衛隊を派遣することを閣議決定している。1月中に河野太郎防衛相が派遣命令を出し、1月中にP3C哨戒機、2月から海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」を派遣する予定だ。
 自衛隊の最高指揮官である安倍首相が中東行きを中止したとなると、自衛隊の中東派遣計画も白紙になるかと思いきや、そのつもりはないようだ。菅義偉官房長官は8日の記者会見で「現時点では変更はなく、現地の状況を見極めつつ準備に万全を期していく」との見解を示している。
 これに対して、ネット上で批判が噴出している。ツイッターでは、
●「いざ危険になると、自分だけは真っ先に逃げるとは…」
●「逃げるのだけは相変わらず早いな」
●「自分が逃げるなら自衛隊派遣もまず見直せ」
●「安全圏にいる権力者たちが若者を死地に送る戦争の本質があらわれている」
 など、安倍政権を批判するコメントが相次いでいる。

 イランと友好関係にある日本は、歴代政権は中東問題に対して中立的な立場を維持してきた。だが、イランのザリフ外相は8日にツイッターを更新し、「私たちは事態のエスカレートや戦争を求めてはいないが、いかなる侵略に対しても自分たちを守るつもりだ」と投稿。イラク革命防衛隊も、米軍駐留基地への攻撃後に「アメリカのテロ軍に基地を提供したすべてのアメリカの同盟国に警告する」と表明している。
 ジャーナリストの高野孟氏は言う。
「そもそも中東海域への自衛隊派遣は、米国が呼びかけた有志連合への参加を日本が断ることはできないので、『調査・研究』という立場で“やっているフリ”をするものでした。最初から問題があるのに、米国とイランの衝突でリスクが高まったのだから中止するのが当然です。自衛隊員には『ケガをせずに帰ってきてね』というつもりなのでしょうが、不真面目極まりない」

 自衛隊が派遣されるエリアは、今回訪問する予定だった3カ国に近いオマーン湾、アラビア海北部、アデン湾だ。日本関係の船舶が襲撃された場合などには、武器使用が可能になる「海上警備行動」の発令が想定されている。
 ただ、イランを刺激する可能性があるため、同国に近いホルムズ海峡は事前に派遣先から外されている。にもかかわらず、安倍首相は中東歴訪をとりやめた。そのため「政府もイラン以外の地域も危険だと考えているのでは」との疑念が高まっている。前出の高野氏は言う。
「先月20日に来日したイランのロウハニ大統領に対し、安倍首相は自衛隊派遣について説明し、理解を得たつもりでいます。ロウハニ大統領にしてみれば『日本は米国に何も言えないよね』ということはわかっている。本来であれば中立的な立場を使って、米国とイランの両国に“話ができる国”として日本が事態の収拾に努力すべきですが、トランプ米大統領寄りの安倍首相に、中東の国々も期待していない。外交的成果が期待できないから歴訪も取りやめたのでしょう」
 安倍首相は2019年を振り返って「日本が世界の真ん中で輝いた年になったのではないか」と語っている。年が明けて7日の自民党の仕事始めのあいさつでも、「今年は戦後外交の総決算に挑戦し、新たな外交の地平を切り開いていきたい」と、不安定化する国際政治に積極的に関与していく意欲を示した。今こそ、「外交の安倍」の実力を世界に見せる時ではないか。(AERA dot.取材班

 

 

再掲=安倍イラン訪問をどう見る 2019-06-14 15:51:03

(2019.06.14リテラ)
 「アメリカとイランの橋渡しができるのは世界で安倍首相だけ」という掛け声は、一体なんだったのか──。関係が悪化しているトランプ大統領とイランを仲立ちすべく、昨日、イランの最高指導者・ハメネイ師と会談をおこなった安倍首相だが、またしても「外交の安倍」なる看板が羊頭狗肉にすぎないことを世界中に知らしめてしまった。
●何しろ、何の成果も示せなかったばかりか、会談とタイミングを合わせたかのように、日本の海運会社が運航するタンカーがホルムズ海峡で砲撃を受けるという事件が起こったのだ。この事件についてアメリカのポンペオ国務長官は、「米政府はイランが攻撃の背後にいたと判断している」として、「日本に対する侮辱だ」と語った。
●一方、イランのザリフ外相は〈米国が一切の物的証拠も状況証拠もなく即座にイランを非難したことは、安倍晋三首相によるものも含め、Bチームが妨害外交というプランBに動き、イランに対する経済テロを隠蔽しようとしていることを明確に示している〉とTwitterに投稿。「Bチーム」とは、ジョン・ボルトン米大統領補佐官やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、アブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド皇太子を指すもので、5月にもザリフ外相は「『Bチーム』が米国に戦争をさせようとしている。自殺行為だ」として非難していた。今回の安倍首相の「伝書鳩」外交を、ザリフ外相は「Bチーム」の妨害外交のひとつと見なしているようなのだ。
 現段階ではタンカー攻撃に本当にイランが関与していたかどうかは断定できないし、ポンペオのコメントはイラン攻撃の口実に利用しただけかもしれないが、少なくとも、安倍首相のイラン訪問がアメリカとイランの関係修復に何の役にも立たなかったことは間違いない。それは安倍首相との会談後、ハメネイ師がTwitterにこんな投稿を連投したことからも明らかだ。
 ●我々は、安倍晋三の善意と真剣さは疑いません。しかし、あなたが米大統領から伝えられたことについていえば、私はトランプをメッセージのやり取りをするにふさわしい相手とは思っていない。トランプへの返答はありませんし、彼に答えるつもりもありません
 ●安倍晋三氏よ、アメリカ大統領は数日前にあなたと会って、イランについても話した。しかし、日本から帰国した後、彼はすぐにイランの石油化学産業に制裁を科しました。これが誠実なメッセージですか? これで彼が嘘偽りのない交渉をする気があるということが示されると?
 ●安倍晋三氏よ、あなたは、トランプは米国との交渉がイランの進歩につながるだろうと話していたと、そう言いましたね。我々の進歩は、交渉や制裁解除がなくとも、神の恵みによってなされゆくのです。

 トランプ大統領の「伝書鳩」として赴いたのに、ゼロ回答どころか、ハメネイ師の怒りを可視化してしまった安倍首相。しかも、笑うに笑えないのは、この「伝書鳩」役はトランプに押し付けられたわけではなく、安倍首相から手を挙げて立候補したものであるということだ。なんと、2016年にトランプが大統領に就任する前にはじめて会談した際、安倍首相は「自分ならハメネイ師に会うことができる」と持ちかけ、トランプも「そうなのか、ハメネイ師に会えるのか」と返答したのだという(朝日新聞デジタル11日付)。つまり、原油の輸入国として長く友好を築いてきた日本とイランとの関係を、安倍首相はトランプに取り入るためのカードとして最初から用意していたのである。
 ところが、その結果はご覧の通り、ものの見事に玉砕。いや、それどころか、安倍首相がトランプの代弁者として振る舞った結果、築き上げた日本とイランの友好関係にもヒビが入った可能性さえあるだろう。
 さらに悲惨なのは、安倍首相とハメネイ師の会談直前に、米財務省がイラン関連企業などへの追加制裁を発表したこと。ようするに、安倍首相は当のトランプ大統領から梯子を外されてしまった、というわけだ。


「桜を見る会」は「憲法違反」 木村草太氏指摘 

2020-01-08 08:31:47 | Weblog

毎日新聞(桜を見る会・考)2020年1月5日

 安倍晋三首相の「桜を見る会」には「公的行事の私物化」「公選法違反ではないか」など、多岐にわたる批判が相次いでいる。憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は「法の下の平等や、国民の知る権利を阻害しており、憲法違反の疑いがあります」と訴える。その真意を尋ねた。【江畑佳明/統合デジタル取材センター】

.憲法の観点からは何が問題でしょうか?
 ◆まず、桜を見る会に誰をどう招待したか、について考えたいと思います。憲法14条1項はこう定めています。
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない」
 桜を見る会に招待されるのは「功績、功労があった人」だというのが政府のこれまでの説明です。しかし、実際にはこの説明にそぐわないような、安倍事務所の後援会の人たちを数多く招待したとみられています。もし、それが事実なら、政府が国民を「功績と関係なく招待された人」と「招待されない人」に二分したことになります。これは、政府が合理的な理由がないままに、国民を不平等に扱い、差別した事案です。平等権侵害の典型例でしょう。仮に、招待されなかった人が「平等権の侵害だ」と訴訟を提起したら、政府は、どのような根拠で「平等だった」と反論すればよいのか。訴訟の担当者は、困ってしまうでしょう。

Q.政府が訴えられたら、勝訴できますか?
 ◆政府が負けてしまうと、(差別を受けた)被害者数も被害額も膨大になるので、裁判所は、なんとか政府が勝訴するような知恵をひねり出すでしょう。例えば、「招待されなかったからといって、賠償を求めることができるほどの損害は受けていない」などと言うのではないでしょうか。ただ、これは、政府の招待者の選抜が妥当だったという内容ではありません。そもそも、招待者の名簿や選抜の具体的基準や議事録がないわけで、裁判所としても「招待客の選抜に何ら問題はなかった」という判決は書きようがないでしょう。

Q.政府は招待者の氏名について、「個人情報だから非公開」という説明をしていますが?
 ◆招待はされたけれども当日出席しなかった人まで氏名を公表するのは問題です。というのは、時々、叙勲を受章しない人がいるように、一般には名誉だと思われることでも、本人が不名誉に感じる場合があります。出席しなかった人は招待されたことを快く思っていないかもしれない。招待された事実を公にしたくない人の氏名は、公開すべきではありません。
 これに対し、当日出席した人は、政府に称賛されたことを受け入れた人ですよね。だから氏名はプライバシー権で保護される情報には当たらないと考えるのが一般です。当日出席した人たちの氏名は、公開しても違憲・違法ではないでしょう。そもそも、当日の様子は報道機関のカメラが入って、官邸のホームページでも様子を公開しています。もし政府の主張通り、出席者が誰かということが、プライバシー権で守らなければならない個人情報であるならば、カメラなど入れてはいけないわけです。例えば、DV被害者を守るためのシェルターに報道機関がカメラを使って取材をしようと思ったら、利用者が誰かわからないように顔が見えないようにするなどの配慮をしますよね。政府は桜を見る会の出席者の情報を、シェルターの利用者と同じように扱っていることになります。これは明らかにおかしい。桜を見る会の会場は、報道のカメラが入るなど半ば公の場となっているため、参加者の氏名は当然公開されていい情報です。参加者は会場に来た時点で氏名の公開に同意した、とみなしていいと思います

Q.「プライバシー権」と「個人情報」はよく似ているように思いますが、違いはあるのでしょうか?
 ◆はい。プライバシー権は、「個人情報コントロール権」であり、これには自らの個人情報をみだりに公表されない権利が含まれているとされます。ただし、①公共の利害に関する真実である場合と、②本人が同意した場合には、個人情報の公開も許されるとされます。
 政府が誰の功績・功労を認めたのかは、公共利害に関連する事実です。また、桜を見る会への出席は、出席の事実を公に知られてもよいという同意だと理解できるでしょう。ですから、桜を見る会の出席者名簿は、①②いずれにも当たります。

Q.内閣府は招待者名簿を「保存期間1年未満の文書」として廃棄したと説明しています。
 ◆これも大きな問題だと考えます。マルチ商法などで多くの被害が出た「ジャパンライフ」の元会長が招待されていたのではと報道されていますが、なにもこれは「ジャパンライフ」に限った話ではないはずです。他にも「ウチの社長は桜を見る会に招待されたんですよ」と宣伝する会社があってもおかしくありません。その会社と商談を進めたり契約を検討したりしている場合、この情報の正誤を確認する必要が出てきます。ですが政府が名簿を廃棄したとなると、事実確認のしようがない。政府の信用が詐欺に使われる可能性があり、名簿の廃棄はこの点でも大きな問題点をはらんでいます

Q.政府は2020年の「桜を見る会」の中止を決めましたが、名簿などが廃棄されてしまえば検証や改善のしようがないですね?
 ◆その通りです。この桜の見る会の最大の問題は、国民の政府を評価する権利と、その前提になる「知る権利」が侵害されている点です。当然公開されるべき事実を隠したことは、国民への裏切りです。今回、私たち国民は「主権者は国民であり、政府を評価するのは自分たちだ」という考えをもっと強く持つべきだと思うのです

Q.菅義偉官房長官は記者会見でよく「適切に処理しています」と言っています。
 ◆政府の行為が「適切かどうか」を判断するのは国民です。しかし、国民の評価を受ける立場の政府が、勝手に自己評価して「適切だ」と言っているわけです。これは、国民主権の原理の否定です。私たちの憲法の根幹にある価値を否定しているのです。国民をバカにしているといってもいい。
 例えば、試験の際に答案用紙を提出しなかったら、自動的に「0点」で不合格になりますよね。提出すれば、むちゃくちゃな内容でも、10点とか20点はつくかもしれない。答案を提出しないことは、むちゃくちゃな答案を出すよりもひどいことなのです。今の政府もこれと同じです。招待者の情報を出したくない事情があるのかもしれませんが、全く出さなければ国民は0点と評価すべきです。「実はこういう中身でした」と公開(答案を提出)すれば、国民の評価(試験の点数)は、不合格かもしれないけど、もしかしたらぎりぎりセーフの評価をしてもらえる可能性も残されています。とにかく、きちんと公開して、国民の審判を仰がねばなりません。だから政府は「データの復元などの手を尽くしました。内容や結果を判断するのは国民のみなさんです」というメッセージを出すべきです。

Q.ツイッターなどでは「もっとほかに議論すべきことがある」という批判もあります。
 ◆今、政府が出している情報だけでは、これが大問題なのか、取るに足らない問題なのかも判断できません。そういう批判をする人は、「名簿の中身がどんな内容でも安倍政権を支持する」という方々なのでしょう。それはそれで一つの政治的立場ですが、であるなら、「どんな内容でも支持する。だから公開すべきだ」と主張するのが筋ではないでしょうか。
 それから、招待者は「功績、功労のあった人」ということですが、じゃあどんな功績を判断するために何を基準にしているのか、さらにどういう選定手続きを踏んだのか、の公開も必要です。もし内閣府が「安倍後援会の希望者全員」という基準で選んだのなら、そういう基準でしたと、明らかにすべきだと思います。それをどう評価するか。判断するのは国民です。

きむら・そうた
 1980年生まれ。東京大法卒。同大助手、首都大東京准教授を経て、現職。専門は憲法。著書は「憲法の条件」(NHK出版新書)、「自衛隊と憲法」(晶文社)など多数。毎日小学生新聞にコラム「ほとんど憲法」を連載中。趣味は将棋観戦