2019年1月20日 発信地:ヤクーツク/ロシア
【1月20日 AFP】地球温暖化の影響で、広範にわたる永久凍土の溶解が懸念されている。永久凍土は数十億トンに上る温室効果ガスを内包しているが、溶解によりそれらが大気中に放出されるだけではなく、長年氷に閉じ込められてきた病原菌なども解き放たれる恐れがあるとして、科学者らは警告している。
【北半球の陸地の4分の1】 永久凍土とは、凍結した状態の土壌を指すが、その名とは異なり必ずしも「永久」に凍結しているわけではない。大部分は北半球に存在し、その陸地の約4分の1を覆っている。 通常は何千年も前から凍ったままで、深さは数メートルから100メートルまでさまざまだ。 永久凍土は、米アラスカ、カナダ、欧州北部、ロシアをまたぐ北極圏と北方林地帯に広がっている。北半球ほどの規模ではないが、南半球でも南米アンデス山脈と南極大陸に存在する。
【大気中のほぼ2倍の炭素】 永久凍土には、凍った大昔の植物や動物の死骸という有機物の形で、推定1兆7000億トンもの炭素が閉じ込められている。 永久凍土が解けると、有機物が温められ、分解され、最終的に温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)とメタンとして放出される。永久凍土は大気のほぼ2倍の炭素を保持しており、その大部分をメタンとCO2が占めている。
【温暖化の悪循環】 永久凍土の溶解による温室効果ガスの放出は、2015年に結ばれた地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で決定された、世界の気温上昇幅を産業革命以前と比べて1.5度に抑えるという努力目標を危うくするものだ。 CO2は地球温暖化の最大要因とされているが、メタンの温室効果はCO2の25倍もある。永久凍土の温室効果ガスが大気中に放出されると、地球温暖化が悪化し、氷が解け、さらに永久凍土の溶解が進み、地球温暖化の悪循環に陥ってしまう恐れがある。
米マサチューセッツ州ウッズホール研究センターのスーザン・ナタリ研究員は2015年、たとえ地球温暖化が2度前後の上昇に落ち着いたとしても、2100年までには永久凍土の30%が失われると指摘している。ナタリ氏は研究で、温室効果ガスの排出が現在のペースで続けば、永久凍土の最大70%が失われる恐れがあると指摘し、「永久凍土からの(温室効果ガスの)排出により、地球温暖化がコントロールできない状況に陥ってしまう可能性がある」と警告した
■凍結された病原菌やウイルス
永久凍土の溶解は、長い間氷に閉じ込められていた病原菌やウイルスの放出につながる恐れもある。 これは既に現実のものとなっている。ロシア・シベリアで2016年、子どもが炭疽(たんそ)症により死亡した。70年前に炭疽で死亡したトナカイの死骸を埋葬した場所の永久凍土が解けたことが原因だと、科学者らは指摘している。放牧されていた家畜の群れが、解けたトナカイの死骸から放出された炭疽に感染したとみられている。 科学者らは、地球温暖化により昔の天然痘患者の墓など、凍土に埋葬され、氷の中で眠っている他の病原菌も活動を再開する可能性があると警告している。
■インフラの危機
永久凍土の融解は石油産業や鉱業にとっては朗報だ。これまで近づくことが困難だった埋蔵地へのアクセスが可能となるからだ。 だが、土砂崩れの発生や建物、道路、石油パイプラインの破損など、インフラへ深刻な影響を与えることも懸念されている。
環境保護団体グリーンピースが2009年に発表した報告書によると、ロシアの永久凍土の融解が、建物や橋、パイプラインの変形や崩壊を引き起こしており、シベリア西部では修理費は、年間13億ユーロ(約1620億円)に達しているという。(c)AFP
温暖化で解けるロシアの永久凍土 地盤緩みエネインフラに脅威
2020.2.3 08:50
国土の6割を永久凍土が占めるロシアで、温暖化が深刻化している。大量の温室効果ガスを含み「地球の時限爆弾」と呼ばれる凍土の融解が進んでいるためだ。世界の永久凍土の70%が失われるとの予測もあり、地球規模で温暖化被害が一層加速する懸念が高まる。地盤が緩めば同国を支えるエネルギー産業のインフラ構築にも打撃を与えかねない。
「ロシアは世界の2.5倍のペースで温暖化している。特に冬から春先が顕著だ」。北極圏に近いロシア極東サハ共和国のヤクーツク。永久凍土研究所のスカチコフ上級研究員は指摘する。ヤクーツクでは3月の平均気温が1960~90年は氷点下21.5度だったが、2017年は同10.8度まで上昇した。
永久凍土の中では、植物や動物の死骸が保存されているか、メタンや二酸化炭素(CO2)に分解されてとどまっている。ロシア通信によると、推定で大気中の2~3倍に当たる1兆6000億トンの炭素を貯蔵。解けた永久凍土から放出されたガスがさらなる気温上昇を引き起こす「悪循環」に歯止めがかからない。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は昨年9月の報告書で、エネルギー産業のインフラ構築を脅かす可能性も示す。「ロシア北極圏の石油、天然ガスの生産地の45%は最も危険な地域に位置している」と警告。米ブルームバーグ通信はロシアが液化天然ガス(LNG)事業を進める北極圏のヤマル半島を例に挙げ「大きなリスクがある」と指摘した。
永久凍土に立つヤクーツクや北極圏の都市では実際に建造物への影響も出ている。ほとんどの建物が地中深くに打ち込んだ支柱の上に建設されているが、近年は壁にひびが入ったり建物が傾いたりする被害が多発。ロシアのメディアによると、北部ノリリスクでは約60%の建物が変形した
北極圏シベリアで38度の異常高温、観測史上最も暑い6月に
2020.06.23(火) JAPPAN Fordes
ロシアのシベリア北部の小さな町で、華氏100度(摂氏約38度)を上回る異常な高温が観測された。ベルホヤンスクの6月の平均気温は華氏68度(摂氏約20度)で、今回の記録はそれを30度も上回ったことになる。参考までに現地の1月の平均気温は、華氏マイナス44度(摂氏マイナス42)とされている。 シベリアでは今年5月にも、過去最高の平均気温が確認されていた。 シベリアなどの高緯度の地域では、地球全体の平均に比べ2倍以上のペースで気温上昇が進行している。地球の平均気温は過去40年で華氏1.44度程度上昇したが、北極圏では3.5度以上の上昇となっていた。