スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

大巨人&第一原因

2014-02-27 19:25:51 | NOAH
 ギミックのエントリーで一例として出したアンドレ・ザ・ジャイアントは,その巨体から大巨人の愛称で知られた名レスラーです。プロレス界には稀有なレスラーというのが何人かいて,馬場もそのひとりだと僕は思っていますが,その中でも最も稀有,空前はもちろん絶後であるかもしれないレスラーは,アンドレだったと思います。
 全盛期はアメリカではWWFで戦い,当時の提携関係から,日本では新日本プロレスに参戦。僕のプロレスキャリアより前には国際プロレスでも仕事をしたことがあったようですが,僕はその時代のアンドレのことは何も分かりません。アメリカではベビーフェイスでしたが,新日本では猪木のライバルという関係から,ヒール役でした。不沈艦も新日本では猪木のライバルで,その場合にはヒールでしたが,ハンセンとアンドレの試合ではハンセンへの声援が多く,役割としては徹底的なヒールであったといえます。凶器を使うようなことはありませんでしたが,規格外の体格が反則そのものだったという一面があり,それがこの立場に影響を及ぼしていたように思います。
 1990年4月,WWFが日本で全日本プロレス,新日本プロレスと合同興行。これは当時,WWFのフロントにいた佐藤昭雄の尽力によるもの。このときにアンドレは馬場とタッグを組んで試合をしました。すでに全盛期のアンドレではありませんでしたが,馬場はアンドレと一緒に仕事をしたいという気持ちをかねてより抱いていたらしく,その夢が実現した形。そしてこれを機に,アンドレは全日本で仕事をするようになり,馬場との大巨人タッグで,世界最強タッグ決定リーグ戦にも出場しています。馬場が左大腿骨亀裂骨折の重傷を負った試合も,パートナーはアンドレでした。
 全日本のアンドレは全盛時代のアンドレではなく,激しく動くこともままならないような状態でした。それでも試合自体が不自然にならなかったのは,プロモーターとしての馬場の才覚のひとつでもあったでしょうし,リング上のパートナーだったレスラーとしての馬場の才覚でもあったと思います。
 この時代になってアンドレは日本のファンからの声援も集めるようになりました。本人はヒール役を全うしたいと願っていたかもしれません。でも僕はアンドレにとって幸せなことであったと思っています。

 スピノザが第一原因について積極的な仕方で呈示しているのは第一部定理一六系三。そこでは神が単に第一原因であるというばかりでなく,絶対に第一の原因であるといわれています。この絶対に第一の原因というのもスコラ哲学の用語。畠中尚志の注釈では,一切の先行原因を有さない原因が絶対に第一の原因であり,個々の因果系列において最初の原因であるという場合には,自己の類において第一の原因といわれるとのこと。でも今はこのことには深い注意を向けずとも構いません。
 消極的意味というのは,ある結果から原因,その原因,さらにその原因と辿っていったとしても,この関係は無限に連鎖していくだけであり,第一原因に到達することはないという意味を含みます。一方,個物res singularisは無限様態の媒介によって,ゲルーのいい方に倣えば道具として生じ,その無限様態が神の絶対的本性によって起成するから,res singularisは第一原因としての神がなくてはあることも考えることもできないという論理過程のうちには,res singularisという結果から原因,そしてその原因としての第一原因たる神があるということが含まれています。
 第一部定理二八にしろ,第二部定理九にしろ,それらはres singularisの結果から原因への無限連鎖に言及しています。そしてそこには無限様態は登場しません。ですから上記のふたつの例は,折合いをつけることが可能であると考えることができないわけではありません。しかしres singularisの第一原因が神であるということの説明の仕方として,整合性が取れていないと僕は判断します。
 このことは,スピノザが演繹法を重視して,帰納法は方法論として斥けるということからも不整合であると判断するべきだと思えます。res singularisが無限様態の媒介によって生じ,無限様態は神の絶対的本性に依拠して生起することを理由に,res singularisの第一原因が神であるとみなすことは,帰納的思考にほかなりません。そしてres singularisの第一原因が神であるということを,スピノザは真理として認めるでしょう。だとしたらいかに方法論とはいえ,帰納的思考を絶対に排斥すべき理由は失われてしまうように思うのです。
コメント
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