思考の部屋

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鼻濁音が日本から消える日(2)

2009年09月12日 | つれづれ記

 「鼻濁音」についてRSSリーダーで検索してみますとこの言葉について書かれている方がいることが分かりました。

 この鼻濁音ですが、「やまと言葉」と違って使用している言葉の意味には全く関係のなく、歴史的古さの世界でないことに気づきました。

 いってみれば地方的な発音の癖のようです。塩原慎次郎元NHKアナウンサーの「日本語のアクセントの習得 近代文藝社」を読みますとアナウンサーにとっては習得すべき必修事項のようです。

「反逆・肉牛・稚魚」の<ギャ・ギュ・ギョ(本来の表記は濁点「゛」が「ピ」の「。」に代えて表記されます)>等の「鼻濁音」を、きちんと発音出来ない人が多くなってきたのは、なんとも嘆かわしい限りです。九州・広島・名古屋その他、元来鼻濁音感覚の乏しい地域の方はいたし方ありませんが、日本の歴史の中枢にあった京阪地方で鼻濁音が崩れてきてしまったり、共通語の本場である東京では、もう数十年も前から壊滅状態(濁音ばかりが横行)というのは、いやはやなんとも困った話です。
 美しい日本語を保存する----その先兵としての俳優・アナウンサー・歌手であれば、当然「鼻濁音を正確に発音出来ないと、恥ずかしい」・「綺麗な鼻濁音ができないと、プロとは言えない」----これが、音声を専門とするギョーカイでの現代の常識です。そして、日本語の中でも鼻濁音は特に「優雅な音声」であるから、我々が率先して保存継承すべきだと言う認識をもって、新人の時代から厳しい訓練を課せられるのです。

と厳しい指摘をされています。

 ここで鼻濁音の一般的な解説に戻りますが、ネットの時代、不完全な場合もありますが
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に書かれている内容について紹介します。そこでは次のように書かれています。

鼻濁音(びだくおん)とは、日本語にあって、濁音の子音(有声破裂音)を発音するとき鼻に音を抜くものを言う。表記の上では濁音同様濁点を以って示されるのが普通であるが、専門分野では鼻濁音であることを強調するため、「か゜」、「き゜」、「く゜」、「け゜」、「こ゜」のように半濁点で書く場合もある。音声上はま行の /m/ やな行の /n/ と同じ鼻音の一種軟口蓋鼻音である。

標準の日本語(仮にNHKアナウンサーが訓練を受ける発音をそれとする)では、が行(か行の濁音)、すなわち、が、ぎ、ぐ、げ、ごに見られる(そのためが行鼻音とも呼ばれる)。基本的には、助詞の「が」すべてと、が行音が文節の頭以外に来たときに鼻濁音化する。このとき子音は [?] である。例外として、数字の5は文節の頭以外でも濁音になる。また、複合語の後半の単語の頭が「が行」である場合、その複合の度合いが強い語では鼻濁音となるが、その度合いが弱い語(例えば「日本銀行」など)では濁音となる。

 と説明され「鼻濁音の分布」については、

専門学校などは別として、一般的な日本の国語教育において鼻濁音に関しては学習内容に含まれておらず、使うようにとも使わないようにとも特に指導はされない。そのため日本語を母国語としている者であっても、鼻濁音を用いるか用いないか、また用いるべきと思っているか用いる必要はないと思っているかは人により違う。

大別すれば、日常的に鼻濁音を使うのは近畿、東海から以北の地域の言葉(群馬弁、埼玉弁、新潟弁を除く)に見られる事で、四国や中国地方の言葉では殆ど使われない。ただし、もちろん両親など身近な保護者の出身地の違いや周囲の環境など様々な原因による個人差は存在する。

昨今では芸能人やアナウンサー(代表的な例、木村拓哉、Gackt、安住紳一郎等)でも、また若い世代の多くが鼻濁音を使わなく(あるいは使えなく)なってきている。この場合、実際の音価は摩擦音 [?] である。 聞き手においては鼻濁音かどうかで語を区別する事は稀であるが、方言によっては区別される

と簡記されています。
 前回「鼻濁音が日本から消える日」で書きましたが、塩原慎次郎先生には残念ですが、衰退の一途を辿りいつかは消える運命にあるようです。

 鼻濁音が全くできない人もおり、鼻濁音が文化としての歴史ではなく、一種の発声の癖であるからだと思います。

 遥かむかしブログに書いた記憶がありますが、戦後皇室家の鼻濁音が問題になったことがあります。英国からの帰国に際し「お土産」の「オミヤゲ」の「ゲ」を鼻濁音で発音されなかった。このお言葉を聞かれていた方がビックリされて問題になったのです。

 原因が追求されたのですが、側近にこの鼻濁音が分からない人が多く指摘されていること事態の意味が分からなかったのです。原因は外国人教師に問題があるのではないかということに落ち着きましたが、実際は取り巻きに明治維新の末裔のひとが多かっただけのことです。これは上記の塩原慎次郎先生の指摘のとおり方言ではありません、地方性がある発声(癖)だからなのです。
 
 ネットはすばらしさですが「ことばの散歩道」というサイトが『「鼻濁音」にこだわる
必要がどこにあるのか?』と詳細に語られ鼻濁音へのこだわりの是正を問うています。

 実にそのとおりで「折り合い」の中で妥協します。そこで日本語の発声の歴史の中に「鼻濁音があった。」という事実だけは残すべきだと思いますので、こだわりではありませんが、今朝もこの「鼻濁音」を話題にします。

 鼻濁音の典型的な例は、助詞の「ガ」です。「~が、」などという場合に使用する言葉ですが、この場合標準的な発音は、鼻濁音です。「私がやります」という場合、普通に結う場合も怒って言う場合も鼻濁音です。この助詞の「ガ」について探求すると地方性と歴史的背景の中に「癖である」ことが分かります。これを語ると少々時間がかかるので後日アップすることとし、今朝は「日めくり万葉集」にみる「鼻濁音」を付け足したいと思います。

 NHK教育で放送されている「日めくり万葉集」ナレーションは壇ふみさんです。大学の同級生に知り合いがいたのでお会いしたことはありませんが若いときから存じています。
 
 お父さんが文豪ですから言葉の環境に育った方なのでとても丁寧な、またやさしい語り口で番組にふさわしい方だと思います。

 今週の5日間録画を再生しながら鼻濁音を中心に番組を確認してみました。その中から9月8日(火)と同月11日(金)の2首を取り上げたいと思います。

 9月8日(火)選者作曲家千住明(せんじゅ・あきら)さん
 嘆(なげ)きせば
 人知りぬべみ
 山川(やまがは)の
 激(げき)つ心を
 塞(せ)かへてあるかも
 (巻7-1383)作者未詳

 ここで鼻濁音に関係しそうな言葉は、「嘆き」の「ゲ」、「山川」の「ガ」、「激つ」の「ゲ」ですが、最後の「激つ」の「ゲ」は鼻濁音は先頭(語頭位置)では使われませんからこれは鼻濁音ではありません。

 したがって、嘆き、山川は鼻濁音が使われます。壇さんと選者の千住さんも鼻濁音で語られていました。なお千住さんは、東京都生まれということです。次はレベルが少し高くなります。

 9月11日(金)選者哲学者小林泰夫さん
 時の花
 いやめづらしも
 かくしこそ
 見しあきらめめ
 秋立つごとに

 (巻20-4485)大伴家持

 ここに鼻濁音があるかと思われるかもしれませんが、「秋立つごとに」の「ゴ」が実は鼻濁音です。「度に」という意味に「ごとに」は使われて古語辞典ですと

 -ごと【毎】《接尾》〔体言や動詞の連体形などに付いて〕~のたびに。~どれもが。

と説明されるのが一般的です。この言葉は、語頭位置にはこない言葉ですの鼻濁音で発生されるのが標準的です。

 ならが壇さんはどのように読まれたか、壇さんはきちんとナレーションの言葉を勉強された方だと思いました。この「日めくり万葉集」は番組の最初に2回読まれます。歌がすばらしい景色の背景の中に写され一語一語追って読まれます。

 壇さんは1回目は「鼻濁音」で流れるように詠まれましたが、2回目は語調を強くし普通の濁音で詠まれました。

 推測ですが、一回目を詠まれた時に鼻濁音か否かを考えずに普通に詠まれたが、2回目は読まれる原稿に注意すべき「ガ行」の「ご」に気づきそこで意識して普通の濁音で詠まれたのだと思います。なぜそう思うかといいますと、普段の生活の中に鼻濁音があると、濁音だと意識してしまうと語調を強くしないと発音できないからです。

 そこに壇さんの気持ちが出ていました。アナウンサーを志す人や発音に興味のある方はぜひ塩原先生の本を見てください。なお上記の接尾語としての鼻濁音の発生については塩原先生は言及していません。私の独自の見解です。

 長くなりますが、私のブログは哲学の森の「仏教」にアップを主にしていますので最後に仏教の用語の鼻濁音について追加します。

 諸行無常の「行(ぎょう)」の「ギ」、勤行の「ゴ」、以前に書いたと思いますが「般若心経」の「ギョウ」の「ギ」、「愛語」の「ゴ」これらは、私の場合には鼻濁音になります。

 最後に断っておきますが、これはあくまでも個人のもつ言葉の発声時の癖なので「折り合い」でお願いします。


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2 コメント

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Unknown (hou-are-you?)
2009-09-17 14:41:50
私の拙いブログにコメントありがとうございました。
信濃大門さんのブログを読ませていただき、私の書いている内容の拙さに恥じ入るばかりです。
「美しい鼻濁音」が消えないことを祈るばかりです。
ありがとう (管理人)
2009-09-17 20:46:01
 立ち寄っていただきありがとうございます。テレビなどから流れる言葉に集中し鼻濁音に聞き入ると集中力と聴き取り力が少しつくような気がします。
 NHKのアナウンサーはさすがと思いました。全国的な調査というものも行なわれていますが、今現在は乱れ混在が多く地域性は語れないような状況になりつつあるようです。仲間内を調査しても鼻濁音をつかめない人も多くいました。
 今後もよろしく願います。

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