脳科学についてあまり詳しくないので番組等で脳の働きを知ると驚くことばかりです。
前に交通事故で視覚視野を失った人に笑い顔の人、怒った顔の人の写真を見せると見えないのに、快不快が解ることに驚かされました。
健康な人は、網膜から入った視覚情報は外側膝状体を経て視覚野に入ります。視覚情報は後部皮質から下部頭皮質に至るまでに順次統合され、最終的に物体として認知されたものが扁桃体(へんとうたい)へ入りここで情緒的な意味が付加されます。
上記の視覚視野の損傷者は全く写真が見えていないと言いますが、目の前に写真をだすとその情緒的な雰囲気を持った顔写真から情緒面だけの情報を抽出し認識できるという能力で人の笑顔がいかに相手の心を動かすかということで「笑顔の大切さ」を語るものでした。
その話で脳の深部にある扁桃体という場所の重要性を感じていたのですが、今朝は「うつ病」に関係する番組を観てその扁桃体が重要な働きをしていることを知りました。今朝はあまりにもすばらしい番組でしたので紹介したいと思います。
今朝もNHKスペシャルからで、この番組は興味が尽きない内容が目白押しです。今や国民病とも言われる「うつ病」(推定100万人)の最新の治療状況について内容です。
※2012年2月12日に放送されたものです。
番組名はNHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」で
「薬を飲んでもなかなか治らない。いったん職場復帰しても元のようには働けない。そんなイメージでとらえている方も多いのではないでしょうか」
というナレーションから始まりました。まず紹介されたのが最新のアメリカの治療法です。
<経頭蓋磁気刺激(けいとうがいじきしげき・TMS)>
ハーバード大学のアルパロ・パスカルレオーネ教授が行なっているもので、うつ病患者の脳を磁気刺激によって健康な脳にする研究を15年間に渡り研究してきたそうです。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
うつ病患者は健康な人に比べ前頭葉の血流が少なくなっています。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
そこでの血流が少なくなっている前頭葉を磁気刺激によってその血液量を増やせば治るのではないかと考えたわけです。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
研究の結果うつ病の改善につながる場所がわかりました。それが前頭葉の左側のDLPFCという場所でした。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
【パスカルレオーネ教授】
DLPFCが活性化すればするほどうつ病の症状が改善することが分かってきました。磁気刺激によって異常をきたしている脳を健康な状態に戻すからです。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
DLPFCとは、
日本語で背外側前頭前野(はいがいぜんとうぜんや)という前頭葉の左側面にある場所で、判断や意欲に関わる場所。うつ病の脳の場合はこのDLPFCの活動が弱り判断力や意欲が低下している、ということです。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
DLPFCを刺激するのはうつ病を治すカギを握る大事な場所に働きかけるためなのだそうです。その場所とは脳の奥にある扁桃体(へんとうたい)のことです。
扁桃体は不安・恐怖・悲しみなどの感情が生まれる場所、いわゆるネガティブな感情が生まれる場所です。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
この感情は人間が不安や恐怖で危険を回避するために重要な場所で、これがあることで命が守られてきたともいえるそうです。
これがうつ病では、この扁桃体が暴走している状態、過剰に活動し、不安や恐怖、悲しみがとまらない状態になっていると考えれれています。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
この扁桃体とDLPFCの関係ですが、この扁桃体の暴走にDLPFCをブレーキをかける役割があると考えれています。
健康な人はこの二つがよいバランスを保って働いていますが、うつ病の人はこのバランスが崩れていて、DLPFCが弱っていて扁桃体が暴走している状態ということです。
DLPFCの機能は、
(1)判断や意欲をつかさどる。
(2)扁桃体の暴走を抑える。
で、磁気刺激でDLPFCをよい状態にできれば意欲が湧くと同時に扁桃体が鎮まり不安や悲しみも和らぐことになります。
実際にこの治療法を取り入れているアラン・マネヴィッツ医師は、
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
この治療によって患者は少しずつ症状が改善するたびに回復を実感できます。その子でで治療に限らず運動や規則正しい食生活に取り組む意欲が高まります。つまり回復に向けたよい循環が生まれるのです。
と話していました。実際劇的な回復の記録として1人の男性の例が紹介され、1か月後には髪型も変わり笑顔も見られる様子が素人目のも分かりました。この男性は、
以前は真っ暗な穴に落ちたようで、どうしたら抜け出せるのか全く分かりませんでした。自分はもう人生を絶望の中で生きていくしかないのだとあきらめていました。でもそんな状況から抜け出すことができたんです。まさに奇跡ですよ。
と語っていました。
しかしこれで完全に治るかと言うとそうではなく効果が出ない人も一部いるということです。またこの状態を保つために月に一度くらいはこの治療を続ける必要があるようです。
<日本のうつ病治療の状況>
日本は遅れていて、この治療を導入するには時間がかかるのだそうです。
「日本独自に安全性と有効性を確認し承認されなければ治療に使えない」
という現状があるからです。
<アメリカの更なる驚きの最先端治療>
エモリー大学のヘレン・メイバーグ教授。あらゆる治療法でも治らない患者の治療研究を進めていて現在行っている治療法は、手術で患者の頭に埋め込み脳の働きを改善するという治療で脳深部刺激(DBS)と呼ばれていて、この方法はカナダやスペインでも研究が進められているそうです。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
治療法ですが、電線の付いた電極を脳深部のに埋め込み体に埋め込んだ電源から刺激を与え続け、電気の刺激で不安や悲しみの感情を抑え込むというものです。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
番組では20年間うつ病に苦しんできて4年前にこの治療を受けた女性患者が紹介されました。
胸元に埋め込まれたバッテリーは定期的に検査され、さっそく検査している様子が写しだされました。メイバーグ教授のもとでこの治療を受けた患者は40人ほどおり、その75%が症状を改善することに成功しているとのこでした。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
この治療でメイバーグ教授が電気で刺激していた場所は脳の深部で、扁桃体の暴走を強力に抑える部分で25野と呼ばれる場所です。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
この25野はDLPFCとも回路が繋がりこの25野に電気刺激を与えると両方の活動が調整できることをメイバーグ教授は突きとめ、治療法に用いているわけです。
【メイバーグ教授】
25野はうつ病のカギを握る神経回路の「要」いわば「ハブ」です。そのため25野を刺激すれば扁桃体やDLPFCにも作用し脳を正常な状態に戻せると考えています。
思考や意欲に関わるDLPFC、不安や悲しみが生まれる扁桃体、25野はこの二つの場所に作用し不安や恐怖、意欲低下を改善する効果がある、と考えられているということです。
<日本でも変わりつつあるうつ病治療>
これまでうつ病の診断は問診で行なわれていていて、頼りは医師の経験、そのため医師によって診断がバラバラのことが多く、患者を苦しめてきました。
番組ではうつ病か否かを検査する装置のある山口大学医学部附属病院で診察を受ける女性が紹介されていました。
光ポトグラフィー検査と呼ばれる方法で、頭に近赤外線を当てDLPFCやその周辺の脳の働きを血液量の変化から調べる装置で検査するものです。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
これで何が解るかと言うと、これまでうつ病、統合失調症、躁うつ病(双極性障害)の診断に誤りがり適切な治療が行われていなかったということです。
躁うつ病の患者に抗うつ剤を投与させるなどの誤診があったということです。
この検査ですが患者は医師側からの質問に対し思い浮かぶ言葉を答えます。言葉を考えている時の血液量の変化を読み取ると「うつ病」なのか「統合失調症」「躁うつ病」なのかを見分けることができるということです。
健康な人の場合、言葉を考えると脳がすぐに活発になり血液量が増えます。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
うつ病患者の場合、DLPFCの働きが低いため言葉を考えている間も血液量はほとんど増えません。
こうした変化のパターンを診ることでうつ病と似た症状を示す他の病気が区別できることが分かってきたということです。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
不規則に血液量が変化するのが統合失調症。ゆっくり上昇するのは双極性障害。
(NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から)
医師たちは正確な治療につながると期待しているということでした。
番組では経頭蓋磁気刺激(TMS)を試験的に行っている日本の現場も紹介されていました。
この番組現代病で深刻な問題になっている「うつ病」治療に光をさす番組でしたが、日本の医療の遅れをすごく感じました。
「ここまで来た!うつ病治療」(2)へ続く
受信料はしっかり払っています。年を取ると学びの機会がなく、NHKが頼りです。
時々びっくりする内容もあり、いろいろな参考書を紐解くのですが、次から次へと疑問が湧いてきます。
弱ったものです。
納得出来るし、うつの治療が薬漬けから解放される日が来ると思う。
こういう話を聞くと一発で精神が落ち着く・・・そんな話はないものかと思っているのですが。
人それぞれに個性がある様に、違うんですよね。
自分との戦いだと思いますが、私にはガンバレという言葉しかあげられません。
治療のために色々な研究がなされている現況を見ると、私のような素人にはその真偽はわかりません。そもそも真偽とは何かの問い。薬物療法か、それとも物理療法か、それとも言葉による療法か・・・さまざまな良かれがあるわけで、大変難しいところです。
そこには物理的な法則性があるので、その法則に合致するように作用を加えた場合にのみ効果が表れる。メカニズムを分からずにデタラメに加えたのでは効果は期待できないのです。しかし、それがまだ明らかにされていないので真偽をめぐる論争が終結せず、磁気療法はニセ科学というレッテルを貼られている。
経頭蓋磁気刺激は、原理的にみれば、数十万円という高額で市販されている交流磁気治療器とあまり違いはない。交流磁気では効果があまり期待できないので絶対に購入しないようにしましょう。
磁気療法は、うつ病だけではなく、日常経験する病気のほとんどが適応し、即効的に治癒させることが可能です。病院に行かなくても自分で簡単に治療ができる。みなさんが薬物療法から磁気慮法に転換すれば、国民医療費の半減もあり得るでしょう。医者は失業するかもしれぬが、それは仕方のないことである。
コメントありがとうございます。
実存的空虚感にならない可能性があるかといえば、よほど人のかかわりの中で相互扶助、共生の感覚で他者の嫌味を意識することなくあればそれは可能でしょう。
しかしそうではないのが世の中、そうならないためにも日ごろから学びの機縁を持ちたいものです。