2010年8月から翌年2011年10月までNHK連続テレビ小説“おひさま”の印象的な「道祖神と水車小屋がある風景」場所のロケ地が3月17日をもって撤去される話が伝わってきました。
男女の双体道祖神と水車、あずみの国立公園の近くにあるロケ地で、1年前に書いたブログでは間もなく撤去という話があると書いていましたが、その後BSで再放送され存続となり、遂に維持管理の問題もあり撤去となるようです。
道祖神と水車小屋のある安曇野の風景[2012年04月07日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/339e6af150f36621e8428956887f2238
今では風景に溶け込んでしまっている道祖神、昔からその場所にあったように見えます。
道祖神は村の入口の道路脇、また子供たちが遊ぶ小さな広場が隣接し「祈り」の習慣が自然に身につくようにあるものでした。ある意味「自己と宇宙の本来的同一性の経験」の場所でもあったわけです。
作家で劇作家でもある東京工業大学文明センター長のロジャー・パルバースさんが『賢治から、あなたへ』(森本奈理訳・集英社IN・2013.2.28発行)を書かれました。宮沢賢治好きで、またパルバースさん好きでもありさっそく買いました。宮沢賢治の作品を読み慣れていないと速読はできないような思いますが、非常に心打つものがありました。
道祖神に関連してこの本の冒頭の「まえがき」の最後に書かれている「どんなことがあっても、生き続けよ」という言葉を紹介したいと思います。言葉というよりも文章なのですが一塊の心の表現として全体を言葉として感じたいのです。
<どんなことがあっても、生き続けよ>
いま、日本は大きな「分かれ道」にさしかかっています。それでも、わたしたちの「ふるさと」は、ここ「日本」しかありません。
人々の孤独には、もっと根の深い問題がつきまとっているようです。その問題というのは、わたしたちが自然や地球や宇宙との「つながり」を失いつつあるというものです。「いじめ」や「引きこもり」、自殺者の増加といった恐ろしい問題は、理由もなしに起こつているのではありません。
多くの日本人、いや世界中の多くの人々は、自分の存在価値に自信や希望が持てなくなってしまいました。そして、こうした状況に対して打つべき手がないようにぼくは感じているのです。これが日本や世界のさまざまな社会問題の主な原因になっていると思います。
世界がこのような状況になってしまったからこそ、いままさに、賢治が必要になってくるにちがいありません。彼のメッセージはこういうものです。
どんな状況でも、わたしたち(自分)がいま存在していることには意味と役割があるのだと理解できるようになれば、いまはどんなに苦しくても、生き続ける意味がある。そして、希望も湧いてくるはずだ。もちろん、その意味と役割とは、人がおたがい同士と地球を大切にする。そして、自分の幸せのためには、他の人、いや、動物であれ植物であれ、山や川や森、水や空気や光であれ、宇宙のあらゆる存在を大切にしなければならない、ということです。
賢治は、『よだかの星』という、動物が星になる物語を書いています。しかし、賢治自身が、わたしたちの宇宙の星、他界した1933年に爆発した超新星なのです。
いま、この瞬間にこそ、「宮沢賢治」という名の星のまばゆい光が地球にたどり着こうとしているのかもしれません。<以上>
『よだかの星』については、
「よだかの鳥」と一切衆生喜見菩薩[2009年08月23日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/fadaeac532962a607387c0cf5cd8b1f6
というブログを書いていました。矛盾的自己同一の歴史の自分を想います。
「動物であれ植物であれ、山や川や森、水や空気や光であれ、宇宙のあらゆる存在を大切にしなければならない。」
森羅万象、山川草木・・・「自然・じねん」に感じるところは継続という「生」があるという単純極まりない事実です。しかしそんなこだわりなどは壮大な催しの現実の中では、小さなことです。だからと言って「ざわめく」情意の心は捨てがたい価値があります。
「道祖神と水車小屋がある風景」場所のロケ地が3月17日をもって撤去
止むを得ない話です。この世の主人公はあくまでも唯一の私です。心にとどめるのは私であるということです。忘れないでしょうね。
今思い出しましたが、最近震災遺産ということについて書いているのですが「震災遺構」という表現もされているようです。「遺す」(のこす)という言葉は「残す」とはまた違うイメージがあることに気がつきました。一般なのか特殊なのか。語れば長くなりそうです。
※ 参考
ロジャー・パルバースの「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」 翻訳者の心[2011年09月05日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/c5bbbaa8f429ca6b836b1b69deb7989d
宮沢賢治に魅かれて[2013年02月05日]
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/722b6e89ff1840e41598c0084d562641