松村美香『利権鉱脈 小説ODA』(角川書店、2012年)を読む。
モンゴルでのODA調査をネタとした小説である。産業小説ゆえ、たとえば黒木亮『排出権商人』(>> リンク)と同様に、解説的・説明的であり、さまざまな要素を詰め込もうとしすぎたきらいはある。
しかし、相当に面白い。もちろん、わたし自身が身を置く業界と近い世界だからでもある。ハノイに居る間に一気に読んでしまった。
著者は、かつて国際開発コンサルタントであった経歴を持つようだ。おそらくJICAの業務経験もあるのだろう(小説では、JIDOという微妙な名前になっている)。それゆえ、内情の描写には厚みがある。それぞれの省庁のキャラだとか、ODAが辿って来た紆余曲折だとか、モンゴルでの鉱山開発や省庁再編だとか。これらを、モンゴルでのウラン開発や放射性廃棄物の最終処分問題と結び付ける展開は、なかなかの手腕である。
もっとも、コンサルタントを兵隊、省庁を大本営のように言われたり、産業の海外展開を戦争であるかのように言われたりすると、それは古い時代への回帰願望ではないかと思ってしまうのではあるが。ちょっと、「プロジェクトX」的。
それは置いておいても、模索しながら奮闘する人たちへのエールとして、広く読まれていい本だと思う。大企業がどうのグローバル企業がどうのという悪口だけ言い放つよりは遥かに人間的である。