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自縄自縛日記

陸田三郎『紅旗 271奇跡』

2017-05-05 11:20:13 | 写真

昨日、写真家の海原修平さんから、陸田三郎『紅旗 271奇跡』(健真國際、2016年)という本を頂戴した。海原さんご自身もブログで紹介している

もちろんこの中国製カメラの存在は知っている。同じ著者の『中国のクラシックカメラ事情』(2006年)においても紹介され、興味深く読んでもいた。しかし、実際に見たことも触ったこともない。本書のタイトルにあるように、271台しか製造されなかった希少なカメラである。

外観はライカM4とキヤノン7に割と似ている。本書によれば、横幅はライカM4の138mmに対し143mmと少し長く、重さもライカM4の560gに対し620gと少し重かったようだ。だがそんなことよりも、性能自体は大したものだった。わたしは見くびっていた。いま残るものはいまだ動作品が多く、ファインダーフレームはピント位置にあわせて自動的に動き(レンジファインダーは一眼レフと違い見えたものはそのまま写らない)、しかもライカMマウント。用意された35mmF1.4、50mmF1.4、90mmF2.0のレンズの描写は、ライカの同時期同スペックのもの(それぞれズミルックス、ズミルックス、ズミクロン)と変わらないほどのものだった。

さすがに、国を挙げて作られたカメラである。江青が1949年の中国建国から20周年を記念して開発、「ライカに負けないカメラを作れ」と指示したのだという。「紅旗」のロゴは毛沢東の筆。なお、日本がライカに追いつけ追い越せでコピーを作っていたのは、M型より前のバルナック型の時代である。しかし紅旗が開発されたころには、既に1954年のM3ショックを経て、一眼レフの時代に入っていた(このあたりは、神尾健三『ミノルタかく戦えり』にも詳しい)。その意味でも、極めて面白い歴史である。

●参照
朝日ソノラマのカメラ本
神尾健三『ミノルタかく戦えり』
『安原製作所 回顧録』、中国の「華夏」


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