今年の夏につかこうへいが亡くなって、たまに蒲田を通過すると聞こえてくるメロディを思い出して、深作欣二『蒲田行進曲』(1982年)を観る。パンフレットもその辺で50円で買っておいた。
松坂慶子は美しいなあ。それにしてもクサい映画だなあ。中村雅俊「恋人も濡れる街角」なんて聞こえてくると恥ずかしくなってくるぞ。
つかこうへいが自身の作品を小説化した角川文庫を読んだのは確か中学生のとき。「階段落ち」のヤスが調子にのって松坂慶子に豚汁を魔法瓶に入れて持ってこさせる場面があったような気がするが、映画にはなかった。最後の「階段落ち」も、そこでお終い、ヤスの生死はわからないままだったような・・・。まあ、つかこうへいがパンフに書いているように「久しぶりに、嘘にみちた映画らしい映画」かもしれないから、監督が職人の深作欣二であることも含めて、これでいいのだ。
昨晩(12/24)、NHKで放送されていたドキュメンタリー『つかこうへい 日本の芝居を変えた男』を録画しておいて、さっき観た。不幸にも演劇にまったく縁のなかった自分にとって、つかこうへいといえば『蒲田行進曲』だけである。それでも、役者の地を引きだしていく様には眼を奪われた。
本名・金峰雄(キムボンウン)の在日コリアン2世、遺書には、遺灰を日本と韓国の間、対馬あたりに撒いてくれと書いてあったという。たしかペンネームの由来は「いつか公平な世の中に」であったはずだが、そのことはドキュでは触れられていなかった。また在日としてのアイデンティティを問うた作品の韓国公演が失敗に終わった原因も、「目新しさがなかった」という理由で片づけられていた。そんなあたりが生煮えな印象であるが、今更ながら、つか演劇に興味が出てきている。遅いか。
蒲田には当面用事がない。とりあえず、近いうちに銀座の「ニューキャッスル」で、「蒲田」を食べなければならない。
「ニューキャッスル」の「蒲田」