Sightsong

自縄自縛日記

山岡淳一郎『インフラの呪縛』

2014-04-27 08:45:04 | 環境・自然

山岡淳一郎『インフラの呪縛 ―公共事業はなぜ迷走するのか』(ちくま新書、2014年)を読む。

土建国家、公共事業の暴走。それが、これまでの日本を表現するためにしばしば使われてきた言葉である。

本書には、それを裏付けるように、さまざまな事例が紹介されている。佐久間ダム九頭竜ダム八ッ場ダムといった巨大ダムによる電力供給、治水・利水、環境破壊、地域破壊、不正。満州時代からの野望ともいえる高速道路の建設。本州四国連絡橋の誘致合戦。国鉄の肥大化。

インフラ整備の過程は、需要との整合性がはっきりせず、事業性や効率よりもはるかに政治的合意のほうが重視され、それだからこそ、非民主的で、不透明であった(である)。

しかし、その一方で、本書は、公共事業への極端な批判を行き過ぎだとする。そして、必要なことは、中長期的なインフラの姿というヴィジョンを掲げて国土整備し、産業や経済もそれによって活性化させることである、と。わたしも、そのことには賛成である。

それでは、どのようにインフラ整備の過程に関わる問題を解消するのか。それなしに「新たなヴィジョン」を示すだけでは、従来の問題構造が解消されるわけはない。(そうではないのだが、)本書のメッセージは、現実を必要悪として是認するように読まれてしまうのではないか。

●参照
熊井啓『黒部の太陽』
姫野雅義『第十堰日誌』 吉野川可動堰阻止の記録
『八ッ場 長すぎる翻弄』
八ッ場ダムのオカネ(2) 『SPA!』の特集
八ッ場ダムのオカネ
ダムの映像(2) 黒部ダム
ダムの映像(1) 佐久間ダム、宮ヶ瀬ダム
天野礼子『ダムと日本』とダム萌え写真集

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。