『Number』(文藝春秋)が、「日本シリーズ完全詳報 ホークス最強の証明。」と題した特集を組んでいる。はじめてこの雑誌を読んだのが1989年ジャイアンツ優勝時の特集号で、やはり表紙はシリーズMVPの駒田だった(まだ大事に持っている)。
タイトルの「ホークス」にはオーナー企業名を付していない。自分はこれを良しと思ってきたが(Jリーグ方式)、そうすると本当に地域密着型のプロスポーツとして商業ベースに乗るのかどうか。単に読売だけの問題かもしれない。
今回はほとんどテレビ観戦していないが、それでも面白く、夜中まであっという間に読んでしまった。やはり江夏豊をはじめ、プロがプロを語る方法が興味深い。語るべきことを持つ「解説者」(そもそも、精神論しか語れない解説者が多い)が仮に野球中継で何かを発言したとしても、そのほとんどは消えてしまうからだ。
平田、野本、堂上兄弟など、大器と目されているドラゴンズの若手がなぜレギュラーとして定着しきれないか。江夏豊は、「落合監督になってから、中日がドラフトで指名した選手は、誰一人として、一度も規定打席に達したことがない」と指摘して、その理由として、「落合監督が調子を見極めて、目の前の試合を勝つためにうまく選手をとっかえひっかえ起用してきた」こと、「勝つことにこだわって、育てることは二の次になってしまった」ことを挙げている。一方、福留孝介は、荒木・井端と小池・平田の「狙い球と違ったときの見送り方」の違いをもとに、「むしろ若い選手の方に育とうとする自覚がまだ足りてない」と指摘している。
桑田真澄による吉見論も面白い。ピンチでのセットポジション時に、吉見は早く投げたがるピッチャー心理を抑制し、ボールを長く持つことができているのだという。
こういったディテールを精神論でなく技術論として語る技術があってこそのプロ解説である。
ところで、優勝翌日にスマホの調子が悪くソフトバンクのショップに足を運んだところ、ビラを貰った。「日本一」のあとに丸で囲んだ「ダ」とあるのは何だろう。ダイエーのこと?
●参照
○『Number』の「決選秘話。」特集
○『Number』の清原特集、G+の清原特集番組、『番長日記』
○『Number』の野茂特集
○平出隆『ベースボールの詩学』、愛甲猛『球界の野良犬』
○パット・アダチ『Asahi: A Legend in Baseball』、テッド・Y・フルモト『バンクーバー朝日軍』
○2010年6月12日、イースタンのジャイアンツ
○WBCの不在に気付く来年の春
○山際淳司『ルーキー』 宇部商の選手たちはいま
○北京にあわせて『和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか』
○野茂英雄の2冊の手記