青山南『アメリカ短編小説興亡史』の影響で、本日はおススメのアメリカ文学を

2018年10月24日 | 

 青山南『アメリカ短編小説興亡史』を読む。

 前回(→こちら)は、サクサク読めて、アメリカ文学史も学べる本書を激プッシュしたが、今回は私自身が読んで、おもしろかったアメリカの小説や、その他の本を紹介したい。



 ★スティーブン・ミルハウザー『ナイフ投げ師』



 幻想的な作風が特徴である、ピューリッツァー賞作家の短編集。

 流しのナイフ投げ芸人、自動人形や、安い移動遊園地。

 などなど、見世物小屋的モチーフが散見されるところから、レイブラッドベリを連想させるが、文体はリリカルなレイより、やや硬質な印象。

 妖しげで夜っぽく、それでいてどこか官能的。

 ポーやデュ・モーリアなど、ゴシックロマンとか好きな人は、絶対気に入ると思う。

 「辺境作家」高野秀行さんも、おススメの一品。
 
 お気に入りは「夜の姉妹団」。

 真夜中に、少女たちがこっそり家を抜け出して、秘密の会合を行っている、という噂が町に流れる。

 そこではみだらな行為が蔓延している、と大人たちは想像していたのだが、調べてみると実は……。

 背徳っぽく、ちょっと百合的な期待もありながら、最後はある種、痛快でもあるという一遍。

 


 スチュアート・ダイベック『シカゴ育ち』



 タイトルの通り、シカゴを舞台にした短編集。

 敬愛する柴田元幸さんが、自分の訳書の中で一番のお気に入りだったというのだから、手に取らざるを得ない。

 ニール・サイモンBB三部作』や、マキャモンのような「少年時代」を感じさせ、『右翼手の死』という作品が好きだが、この本の個人的に魅力な点は、個々の物語とともに間奏のように流れる、短編未満のような断章

 ここで私が下手な紹介をするより、手に取って最初の『ファーウェル』を読んでみてほしい。

 5ページほどの短いものだが、そのあまりのイメージの美しさに、惹きこまれること間違いなし。

 「キエフのパン屋」という散文的な単語が、これほどまでに抒情的に響くとは。

 私が作者なら、もうここだけで「勝ったも同然」という気分になることだろう。
 



 ☆マイク・ロイコ『男のコラム』

 アメリカ文芸といえば、短編ともう一つはずせないのがコラムの魅力。

 重厚な文学もいいが、のんびりしたい休日や、ちょっとした待ち時間をつぶしたいときなどには、軽くてシャレたコラムが合う。

 日本では、中島らも東海林さだお大槻ケンヂ玉村豊男米原万理といった面々の雑文を愛読しているが、アメリカ代表といえば、やはりロイコおじさんに尽きる。

 シカゴの名物コラムニストだったマイクは、とぼけたユーモアをまぶした、切れ味鋭い舌鋒が売り物の「戦う」コラム。

 自分は多額のギャラをもらいながら、スタッフには「のために働くな」とアジるジェーン・フォンダを皮肉り、杓子定規な公務員にものもうす。

 「行き過ぎた」レディーファースト嫌煙に対抗し、飲みとシカゴカブスと、ジョンウェインの古風な西部劇を愛する。

 ケラケラと笑わせながらも、世にはびこる権威の横行や理不尽を、アイロニカルにやっつけてしまう、その腕前の見事さ。

 アメリカのコラムといえば、ボブグリーンがまず上がることが多いけど、スタイリッシュなだけで、あんまし中身がないよね、ボブって。

 私はマイク・ロイコを一押しします。


 (続く→こちら


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