『静かなる決闘』で黒澤明を再評価! (でも『七人の侍』と『生きる』が苦手なのはナイショ) その2

2018年10月10日 | 映画
 前回(→こちら)の続き。

 『七人の侍』『生きる』がおもしろくなく、

 「黒澤明は合わない」

 と思いこんでいたが、地味な人間ドラマ『静かなる決闘』で、その想いが払拭された私。

 やっぱり、黒澤はおもしろいんやなあ。そう心入れ替えた私は、そこから、「黒澤リベンジマッチ」を企画し、とりあえず未見のものを中心に、黒澤映画をガンガン見ることにした。

 で、その開口一番が『用心棒』だったんだけど、これが大当たり。

 もう開始10分で叫びましたもんね。

 「うわああああ!!!! 三船敏郎カッコエエエエエエエ!!!!

 刀かついだ三船が出るだけで、もうシビれた。これだけで名画決定。とんでもない存在感。

 続けて、仲代達矢が登場したところで、二度目の大歓声。

 仲代達矢といえば、『不毛地帯』や『日本海大海戦』、あと『包丁人味平』のコック役とか(それはちょっと違う)で観て、昭和の俳優らしいその存在感は知っていたけど、この映画の仲代さんは、ちょっと次元の違うカッコよさだった。

 だって、ゴリゴリの時代劇なのに、首に涼しげなスカーフまいてんの。

 おまけに、手には刀ではなく拳銃。スミス&ウェッソンなんだよ。このミスマッチが、下手な役者や演出家がやると「ねらいすぎ」になってあざといんだろうけど、それを見事に着こなしてるの。

 こんなもん見せられたら、もう目はハートよ。そのセンスがすばらしすぎる。仲代さん、抱いて!

 でもって、舞台がもう、モロに西部劇。私は西部劇ファンではないけど、それを時代劇で換骨奪胎すると、こんなにもシブくなるのか!

 最後の決闘で、三船と仲代一派が風に吹かれながら登場するところなど、マカロニ! もうマカロニ! 笑ってしまうくらいにセルジオ・レオーネ風!

 ……って、いうまでもなく、黒澤がマカロニ風なんじゃなくて、『荒野の用心棒』が『用心棒』を勝手に丸パクリしたことは、映画ファンならだれでもご存じだけど、こんなどストレートにいただいてるとは(笑)。

 つまり、


 ジョン・フォードとかハワード・ホークス的西部劇
          ↓
 一回黒澤はさんでからの
          ↓
 もっかい今度はイタリアで西部劇



 という仕組みだ。芸術というのは、パクリパクられで発展する見本ともいえる玉突きだなあ。

 まあ、『用心棒』みたら、パクりたくなる気持ちもわかりますが。それくらいにカッケーのよ。セルジオ無罪。オレだってマネしたいよ。

 おまけに、懸案だったテンポも、直球娯楽作ということかサクサク進み、観ていて全然ダレない。めちゃくちゃにおもしろかった。

 先頭打者ホームランで勢いのついた私は、その後も『椿三十郎』『天国と地獄』『隠し砦の三悪人』『赤ひげ』『わが青春に悔いなし』といった作品を次々と鑑賞したのだが、これがまたホームラン続きで感動。

 特に『椿三十郎』は、『用心棒』の続編という位置づけだが、今度はコメディータッチであり、黒澤こっちでもすんごくお上手。

 もう、あの母娘の天然ボケに苦い顔をする三船が激萌え! 奥さんを塀から外に出すところか、椿の色をあれこれ検討するのに「どっちでもええねん!」ってキレるところとか。

 よく映画史の本で、

 「この役は三船敏郎がやる予定だった」

 「監督は三船に出演を熱望してたが果たせず」

 なんて書いてあることがあって(『スターウォーズ』とか『ベスト・キッド』とか)、

 「外人さんは、三船が好きやなあ」

 なんてボンヤリ思ったもんだけど、黒澤映画観まくってわかりましたよ。そら、あんなイカした役者なら、使いたくもなりますわ。

 そんなわけで、今ではすっかり「やっぱ黒澤は天才や!」と、転びバテレンのごとく語りまくっている私だが、ひとつおもしろいのは、今回見直しても、やっぱり『七人の侍』と『生きる』は退屈だったこと。

 他のはすっかり堪能したのに、どうしてもこの2作だけはダメだった。念のために、春日太一さんの話とかも聞いてみたけど、やっぱりおもしろさが響かない。

 よりにもよって「合わない」のが、代表作2本とは運が悪かった。こういうこともあるんやなあ。

 でも間に合ってよかった。次は『野良犬』観ようっと。


コメント
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