医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

原発事故で福島県はGale教授の進言を受け入れなかった

2021年03月30日 | 
上の図は2011年9月2日の科学雑誌「ネイチャー」に掲載された、福島とチェルノブイリを同一の縮尺で比較した放射線量の図です。しかも、チェルノブイリの方は事故から10年後の1996年のデータ、福島の方は事故から数ヶ月後のデータです。福島の事故はチェルノブイリと比べて非常に小さいことが分かります。それにチェルノブイリで小児ガンが増えたほとんどの原因は、しばらく政府が事故を隠し、被曝した草を食べたウシの牛乳から内部被曝したものです。福島の場合、水素爆発を私たちはリアルタイムで目の当たりにしましたし、住民はすぐに避難しました。避難の時に爆発を知らずに公園で1日遊んでいた子供などいません。

2012年末、日本小児血液・ガン学会が開かれ、基調講演で、1986年に起こったチェルノブイリ原発事故直後から現地に赴き被ばく者の治療に従事し、福島原発事故の際はデータを収集しアドバイスを行うことで日本政府に協力してきたイギリス、インペリアル・カレッジの実験医学部門血液学科 Gale教授の講演がありました。

後述するように福島の事故の規模はチェルノブイリの10分の1ぐらいで、しかもチェルノブイリでは対応の遅れで子供たちが放射性ヨウ素に汚染されたミルクを急性期に大量に摂取して甲状腺ガンになりました。以前、「チェルノブイリ原発事故後のガンの発症」でお伝えしたように、あのチェルノブイリでガンの発症が増えてくるのは事故後約3年目からです。なぜ「日本チェルノブイリ連帯基金」はこのように早い時期に甲状腺の検査をしたのか、仮に機能障害の発見だけを目的にしていたとしても、予後良好の機能障害をそれほど早期に発見する必要性は何だったのかがわかりません。

さて、私は以前から以下のように、客観的データに基づいて多くのエビデンスをご紹介してきました。

航空会社の乗務員は合計25 mSv以上余分に被ばくしても死亡率も発ガン率も上昇しない

被ばくした親から産まれる子供のガン発症率は上昇しない

慢性被ばくでガンの発症が減る(その1)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その2)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その3)

子供の被ばくは年間1mSv以下でなければならない あいまいな根拠

被ばく1mSv/年以下でなければならない あいまいな根拠(その2)

被曝で他のガンは増えない、白血病は100ミリシーベルトで約1.2倍

子どもの甲状腺「福島、他県と同様」 環境省が検査結果

さて、前述のGale教授は2012年、現時点までのデータを客観的に分析し、非常に科学的な講演をされ私も100%同感だとお伝えしました。

その講演の要旨(1)~(8)をお伝えします。

(1)大気中に放出された放射性ヨードは、チェルノブイリで1,800ペタベクレル、福島で150ペタベクレルと、福島はチェルノブイリの12分の1であった。

(2)大気中に放出されたセシウムは、チェルノブイリで80ペタベクレル、福島で13ペタベクレルと、福島はチェルノブイリの6分の1であった。

(3)しかも、福島の場合、それらの多くが北西の沖に流され、海洋で薄められた。

(4)チェルノブイリでは福島と違って、事故後の対策の遅れから放射性ヨウ素に汚染されたミルクを大量に摂取した子供が多かった。これがチェルノブイリでの小児における甲状腺ガンの原因である。

(5)内陸に位置するチェルノブイリは、ヨード欠乏地域であり放射性ヨウ素による被害が大きいのに対して、日本は海洋に囲まれた高ヨード摂取地域である。

(6)暫定基準値とされているセシウム500Bq/kgを含む米を毎日0.5kg,、1年間食べ続けても、米国コロラド州デンバーに4ヶ月滞在したときの被ばく量と変わらない。福島原発事故による健康被害はあってもごくわずかである。

(7)不十分な理解によるリスクの過大解釈により、社会的・経済的な影響が大きくなることを防ぐために、小児の血液内科医や腫瘍内科医は、国民に被ばくリスクの正しいデータを伝える必要がある。

(8)私見として、小児に対する甲状腺ガンのスクリーニングは不要と考える。理由は、上述のようにチェルノブイリに比較してリスクが非常に低いこと、一般的に予後良好で進行がきわめて緩徐な甲状腺ガンを早期に検出することが予後を改善するというデータはなく、精神的なダメージやむしろ無用な医療被ばくの影響の懸念があるためである。

Gale先生、非常に冷静で素晴らしいです。

あれから10年、当時のGale教授の進言が全く正しかったのが証明されました。

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「日本チェルノブイリ連帯基金」の見解が誤っていた理由

2021年03月11日 | 
福島原発事故から10年経過しました。
現在、福島県では当時小中学生の全員に行った甲状腺エコー検査のために、ガン細胞ではあるけれど寿命に全く影響しない「潜在ガン」を見つけてしまい、手術になって多くの小中学生が苦悩を抱えています。従来、甲状腺ガンのほとんどは進行が極めて遅く、大きくなってから見つかり、そこで手術するかどうか決めても問題はないのです。

全員検査の問題点にいち早く気づき、全員検査を中止することを主張した福島県立医大のある医者は、全員検査の中止を委員会に訴えたのですが受け入れられず退職しました。その医者は自ら何万人という子供の甲状腺エコー検査を行い、その中で全員検査したことを大変後悔しているそうです。

全員検査の甲状腺エコー検査で、自分の子供にガン細胞が見つかってしまった母親は、現在大きな苦悩のもとに晒されています。

私は事故が起きた当時、こんな記事を書きました。
「日本チェルノブイリ連帯基金」のコメントの誤り
この記事で、「日本チェルノブイリ連帯基金」は、130人のうち数人の子供の甲状腺ホルモンが基準値から外れ、「色々な意見はあるが、被ばくの可能性は捨てきれないと思う」とコメントしましたが、そもそも「基準値」の定義は「正常な人の95%(100%ではなく)がそこに入る範囲」ですから、数人基準値から外れるのはむしろ正常なこと、とお伝えしました。

正常でも基準値から外れる人は必ず5%います。それが「基準値」の定義だからです。これが「健診で肝臓の数値がひっかかったけれど精密検査しても正常だった」原因の1つです。

あの時、「日本チェルノブイリ連帯基金」の人々は、感情的に「ほらみたことか!」と言いたかったのでしょう。科学・統計学のことなど眼中になかったのかもしれませんね。それが原因の1つで、自分の子供にガン細胞が見つかってしまった母親たちは、今も大きな苦悩のもとに晒されてしまっているのです。

具体的なことは以下の論文に書いてあります。0歳~18歳の子供約36万人を全員検査して、一次期間で116人、二次期間で71人の甲状腺ガンが見つかりました。

通常の場合、小児の甲状腺ガンが見つかるのは100万人に2人です。

Lessons from Fukushima: Latest Findings of Thyroid Cancer After the Fukushima Nuclear Power Plant Accident
Tyroid 2018;28:11-22.


論文の中では、「全員調査の功罪は他の地域と比べなければわからない、今後の検討を要する」とお茶を濁していますが、全員調査が良くないことがわかってきた現在、被災地域以外で子供の全員調査をしてくれる地域など、あるはずがありません。そういえば以前、福島の子供の甲状腺がんがやはり多いと騒いでいた岡山大学の教授がいたので、岡山県で全員調査をやってもらいましょうか。

岡山県、ちょうどいいと思います。岡山県の0歳~18歳の子供全員に甲状腺エコー検査を2年に1回やって下さい。お願いします。

福島原発事故から10年経過したシリーズ、これからも続きます。

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福島の甲状腺の過剰エコー検査で子供たちに苦悩

2021年03月10日 | 雑感
上の図は2011年9月2日の科学雑誌「ネイチャー」に掲載された、福島とチェルノブイリを同一の縮尺で比較した放射線量の図です。しかも、チェルノブイリの方は事故から10年後の1996年のデータ、福島の方は事故から数ヶ月後のデータです。福島の事故はチェルノブイリと比べて非常に小さいことが分かります。それにチェルノブイリで小児ガンが増えたほとんどの原因は、しばらく政府が事故を隠し、被曝した草を食べたウシの牛乳から内部被曝したものです。福島の場合、水素爆発を私たちはリアルタイムで目の当たりにしましたし、住民はすぐに避難しました。避難の時に爆発を知らずに公園で1日遊んでいた子供などいません。

福島原発事故から10年経過しました。
現在、福島県では当時小中学生の全員に行った甲状腺エコー検査のために、ガン細胞ではあるけれど寿命に全く影響しない潜在ガンを見つけてしまい、手術になって多くの小中学生が苦悩を抱えています。

全員検査を中止することを主張した正義感あふれる福島県立医大の医者は、それが委員会に受け入れられず退職しました。その医者は今も全員検査したことを後悔しているそうです。

私は事故が起きた直後、こんな記事を書きました。

誤っている「日本チェルノブイリ連帯基金」の見解

それに対して、
「私は素人ですが、ちょっと言いたい!
放射能の影響です、と言い切ったわけではありませんし、事故から4~5ヶ月の緊急検査で被曝のない地方の子どもたちと比較してから言えというのは、ただ批判したいだけとしか思えません。口先だけ言ってる人と動いている人とどちらがすばらしいか一目瞭然ですね。お金が有り余ってると思ってる政府とは違う。あなたの人間性を疑う。」


アホですね。今となってはこの人の学力が疑われます。

とか

「放射能の影響ではないとも言い切れませんよね?Unknown さんのいうとおり 口だけ動かすだけの人と 現場で動く人 必要とされているのはどちらでしょう?
やらない善意より、やる偽善だと私は思いますよ。ではあなたは ここで批判して それからどうしますか?」

というコメントがありました。

「やらない善意より、やる偽善だと私は思いますよ。」というのは、もうアホとしか言いようがない支離滅裂なコメントです。
このようにアホなコメントを他人のブログにすると一生残りますから、アホなコメントは止めた方がいいです。


この誤った「日本チェルノブイリ連帯基金」の見解が、全員検査の引き金の1つになったことは事実です。

私は、毎回記事を書く際に数時間以上リサーチして慎重に書いています。こんな感情的に誤ったコメントしてくる素人を、これからも教育しなければならないのだと、強く思った次第です。

福島原発事故から10年経過したシリーズ、しばらく続けさせていただきます。


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スマホで子供たちの脳が破壊されている

2021年03月01日 | 神経
2021年2月26日発売の月刊Hanadaの100ページに「スマホで子供たちの脳が破壊されている」という記事がありました。

その中で、東北大学加齢医学研究所の川島隆太医師が、以下のような研究内容を掲載していました。

2018年、仙台市在住の5~18歳の224名を対象に3年間、脳の発達をMRIで計測する調査を行いました。
ネット習慣が多い子はそうでない子に比べて前頭葉や頭頂葉、側頭葉、小脳などかなり広範な領域で大脳皮質(知覚、思考、推理、記憶などの脳の高次機能を司る部分)の体積があまり増加していませんでした。また、ネット習慣が多い子はそうでない子に比べて情報を送る神経線維もあまり増加していませんでした。これは最初、ネット習慣で睡眠不足や運動不足が原因であると思われていましたが、その後の調査で、十分睡眠をとっていようが家庭学習をしっかりやっていようが、ネット習慣が増えれば増えるほど成績が下がっていました。スマホ習慣が多い子は学校で学んだことが頭から消えてしまったこともわかりました。これは、なにもせずボーッと過ごすよりも、スマホを使っているほうが、脳に悪影響があるということです。
スマホを禁止することで成績が上がることもわかりました。2014年から3年間追跡した調査によると、スマホ使用をやめた、あるいは1日1時間未満にした子供は成績が向上しており、逆に成績がよかった子供がその後スマホを再開すると、やはり成績が下がることもわかりました。
教科ごとにみていくと、1時間LINEを使用するごとに国語2.5点、数学4.8点、理科4.1点、社会3.8点下がることもわかりました。原因はマルチタスキングであることも判明しました。LINEはひっきりなしに通知音が鳴り勉強の集中力や注意力を低下させていました。
スマホを1日1時間以内で抑えることができている子供に共通点もわかりました。自分はスマホが好きでついつい使いすぎてしまうことを「自覚」していたのです。その子たちは勉強するときや寝るときは物理的にスマホを遠くに置くなど、スマホから意図的に遠ざかっていたのです。

この研究結果を発表した東北大学加齢医学研究所の医者は、研究結果を一流誌に発表し、記者会見も開いたのですが、こういう結果はマスゴミにとって不都合になるため、まったく取り上げられなかったそうです。

コロナ対策で「その対策にエビデンスはあるのか!」と盛んに批判しているマスゴミが、スマホは子供の発達に悪いとエビデンスが揃っている件に関して、全くスルーしているのは、腐りきっている社会の縮図を見ている気がします。

私もPubMedでその他の研究を検索してみました。

Brain connectivity in children is increased by the time they spend reading books and decreased by the length of exposure to screen-based media
Acta Paediatr 2018;107:685-693.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)


8~12歳の19人で、読書の時間、スマホやネットを使う時間と頭部ファンクショナルMRIでみる所見が調べられました。結果は、読書の時間が短いほど、スマホやネットを使う時間が長いほど、視覚野と、言語や認知を司る脳の部位との神経線維のつながりが少なくなりました。

LINEやツイッターの使用で、子供たちは単文ばかり使用して、複文が使えなくなってきています。提供される情報を思考せず、そのまま受けとるLINEやツイッターは確実に子供たちの学力を低下させています。



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