医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

善玉コレステロールを上げる薬剤は心筋梗塞の予防に効果がない

2012年11月09日 | 循環器
           ↑ピンぼけで申し訳ありません。

学会で発表するためにロサンゼルスに来ています。

本日も、世界に先駆けて発表された結果をお伝えします。

最近、コレステロール・エステル・トランスファー・プロテイン抑制剤という、善玉コレステロールを上昇させる薬が注目されていました。善玉コレステロールを上昇させるので、心筋梗塞を予防するのに有用ではないかと考えられていたからです。しかし、その効果はありませんでした。

研究の詳細はここに載っていますが、

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23126252

Effects of Dalcetrapib in Patients with a Recent Acute Coronary Syndrome
New Engl J Med 2012 Nov 5
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

15、871人の患者(すでに97%に悪玉コレステロールを低下させる薬剤が投与されています)をコレステロール・エステル・トランスファー・プロテイン(CETP)抑制剤を内服する群と、内服しない群に分けて約3年間、心臓病による死亡・心筋梗塞・脳梗塞・不安定狭心症による入院の発症率が比較されました。

内服により、悪玉コレステロール値には両群で変化はなかったのですが、CETP抑制剤内服群で善玉コレステロールが約30%上昇しました。

上の図で赤線が内服群、黒線が非内服群です。CETP抑制剤を内服してもしなくても、これらの発症率は8~9%で両群に差はありませんでした。

発表者であるシュワルツ医師は、「心筋梗塞を減らす他の薬剤を内服している患者には、もはやCETP抑制剤は有用ではない。CETP抑制剤内服群で血圧が0.6 mmHg上昇していることで、血圧上昇による疾患の発症の上昇があったことが、両群で差がつかなかった理由の1つである」と述べていました。

なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心臓の2本の血管に狭窄がある糖尿病患者にはステント治療よりバイパス手術の方が有効

2012年11月07日 | 循環器
学会で発表するためにロサンゼルスに来ています。

昨年のレイト・ブレイキングでは、以下のような内容をご紹介しましたが、
http://blog.goo.ne.jp/secondopinion/e/85c1e5a6a67e3fdd936c9ae122c0743a

今年は、昨日世界に先駆けて発表されたFREEDOM Trialという医学研究の結果をお伝えします。私も会場にいて実際に聴いていました。

詳細は昨日発表されたばかりのNew England Journal of Medicineに載っています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23121323

Strategies for Multivessel Revascularization in Patients with Diabetes.
New Engl J Med 2012 Nov 4
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

2005年から2010年までの間に、3本の心臓の血管のうち2本の血管に70%以上の狭窄がある糖尿病患者1900人が、ステント治療する群とバイパス手術をする群に割り当てられて、平均約4年間(2年~7年)死亡・心筋梗塞・脳卒中の発症が調べられました。

上の図で赤線はステント治療群で、黄線はバイパス手術群です。バイパス手術群で死亡・心筋梗塞・脳卒中の発症が5年間で約18.7%であるのに対して、ステント治療群は約26.6%の死亡・心筋梗塞・脳卒中の発症があり、有意に高いことが分かりました。

心臓の3本の血管のうち2本の血管に狭窄がある糖尿病患者の皆さんは、盲目的にステント治療をするステント治療医からステント治療を勧められても、このデータをその医者に見せて、もう一度よく考えてもらう必要があります。

確かに、3本の心臓の血管のうち2本の血管に70%以上の狭窄がある糖尿病患者でもステント治療が向いている患者もいますが、それはどういう特徴がある患者なのか、ステント治療医は印象だけで述べていないで、科学的に明らかにする必要があります。

なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高齢者に対する大腸内視鏡検査・治療

2012年11月03日 | 消化器
先日、大腸ポリープの予後をお伝えしましたが、高齢者に対する治療戦略は少し違うので、その根拠となっている論文をお伝えします。

50歳を越えると年々大腸ガンの発症率は上昇していくので、もちろん便潜血検査は不可欠ですが、便に血液が混ざっていた場合の精密検査(注腸検査:おしりからバリウムを浣腸してX線写真を撮る検査)で大腸ガンの前駆状態といわれるポリープが見つかった場合に、何歳の高齢者まで大腸内視鏡でポリープを切除するのがよいのかは、これまで検証されていませんでした。

Screening colonoscopy in very elderly patients. Prevalence of neoplasia and estimated impact on life expectancy.
The Journal of the American Medical Association. 2006:295;2357.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

対象は何の症状もない、50~54歳のグループ1,034人、75~79歳のグループ147人、80歳以上のグループ63人で、まず大腸内視鏡検査が行われました。

ポリープが見つかった割合は、50~54歳のグループで13.8%、75~79歳のグループで26.5%、80歳以上のグループで28.6%と年齢が高くなるにつれて有病率も高くなりました。

ポリープの発見によりそれを切除した場合の寿命が、切除しなかった場合の寿命と比較してどれくらい長くなるかをシミュレーションで計算したところ、50~54歳のグループで0.85年、75~79歳のグループで0.17年、80歳以上のグループで0.13年でした。

80歳以上の患者さんではポリープ(大腸ガンではない)が見つかってそれを切除しても、寿命はほとんど変わらず、大腸内視鏡治療による合併症の発症率の方が高くなるので、十分な考慮が必要だと結論づけています。

著者らはこのような結果がでた原因として以下のことを上げています。

大腸ガンの前駆状態といわれる小さなポリープが実際に大腸ガンになるのに11年かかる
Premalignancy of the mucosal polyp in the large intestine, II: estimation of the periods required for malignant transformation of mucosal polyp.
Dis Colon Rectum. 1975;18:494.

6~10mmのポリープが大腸ガンになるのに7.75年、1cm以上のポリープが大腸ガンになるのに5.27年かかる
A case-cohot study for the disease natural history of adenoma-carcinoma and de novo carcinoma and surveillance of colon and rectum after polypectomy: implication for efficacy of colonscopy.
Br J Cancer. 2003;88:1866.

ポリープが大腸癌になる進行は遅く、5年で2.5%、10年で8%、20年で24%である
Natural history of untreated colonic polyps.
Gastroenterology. 1987;93:1009.

大腸内視鏡治療の合併症(腸に穴があく、出血が止まらない)の発生率は0.1%~0.5%で、高齢者では5倍である
Procedual success and complications of large-scale screening colonscopy.
Gastrointest Endosc. 2002;55:307.

頻回の大腸内視鏡検査は必要ないという事ですね。でも便潜血検査は必ず受けましょう。

なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!

コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

間違った論理展開

2012年11月02日 | 雑感
今日のNHKニュースを見ていて、間違った論理展開に不思議に思い、この記事を書くことにした。今回も批判と誤解を恐れず、斜め後ろからの論評をお伝えしたい。

最近、アメリカ兵による日本人女性暴行事件があった。感情的になるのは言論の自由だが、それで政治を行おうとするのは間違っている。
下の記事の件。

離島防衛訓練中止 米・キャンベル国務次官補が強い不快感示す

アメリカ兵による暴行事件はそんなに多いのか。上の図は、都道府県別の性犯罪の発生割合を、日本全国の平均を基準としてカラーコードしたものである。ネットで調べればすぐに手に入る。

詳しくはこのサイトに書いてある。

http://todo-ran.com/t/kiji/13991

当然ながら、沖縄は全国平均と比較して性犯罪の割合は平均以下である。そして、当然ながらその犯罪の99%以上は日本人によるものである。性犯罪の割合が日本で一番多いのは大阪であるが、大阪にアメリカ兵がうようよしているのだろうか。そうではない。つまり、先日の事件によりアメリカ兵の夜間外出を禁止するなら(アメリカ兵のほとんどはまともな人々だ)、日本国民(日本国民のほとんどはまともな人々であるが)にも相応の対策を施す必要があるのではないか。犯罪割合で考えても、それほど違いはないだろう。

ここには琉球新報など極左勢力の仕業が見え隠れしているが、つまり、比較する方法も解釈も間違った上に成り立っているということである。

先日、以下のような新聞記事があった。

離島防衛訓練中止 米・キャンベル国務次官補が強い不快感示す
沖縄県の無人島で計画されていた自衛隊とアメリカ軍による離島防衛訓練が、日本の要請で中止されたことについて、先週来日したアメリカのキャンベル国務次官補が外務省幹部に、「理解しかねる」と強い不快感を示していたことがわかった。日米両政府は11月、共同演習の一環として、初めて沖縄県の無人島で離島防衛訓練を行う計画だったが、沖縄県内の反発に加え、アメリカ軍兵士による女性暴行事件が起きたことなどを理由に、日本側の要請により、中止が決まった。キャンベル次官補は、先週、外務省幹部との会談の中で、「日本が決めたなら、戻せとは言わないが、なぜ中止しないといけないのか理解しかねる」と強い不快感を示した。外務省側は、中止の理由を「高度な政治判断」と説明し、尖閣諸島をめぐり、対立が激化している中国への配慮を示唆したということで、アメリカ外交筋は「中国をけん制するための訓練なのに、本末転倒だ」と疑問を投げかけている。

全くそのとおり、「中国をけん制するための訓練なのに、本末転倒」

今日も、アメリカ兵が酔って居酒屋の3階の民家に入り込み、中学生を殴った事件があったが、物を盗もうとするわけでもなく、自分に全く利益に(盗めば得という意味ではない)ならない行為を、この場(夜間外出禁止の期間)にするだろうかと考えると、皆さんも、女性暴行事件や中学生を殴った事件が、オスプレイの導入時期など、あまりにもタイミング良く起こっていることに気がつかないだろうか。オスプレイを導入する以前、こんな事件がニュースを賑わしていただろうか。

私は、これらの事件は中国がアメリカ兵に金を渡して起こしているようにみえてならない。アメリカ軍が沖縄から撤退し一番得をするのは中国である。アメリカ兵が撤退し日本が憲法に縛られて活動できないのなら、沖縄は中国のものだ。

一口に「オスプレイ」といっても、実際には空軍型(CV, 特殊作戦用)、海軍型(HV, 捜索・救難用)、海兵隊型(MV, 輸送用)の3種類(うち現在実戦配備されているのは空軍型のCVと海兵隊型のMVのみ)あるのだが、日本の報道ではこの3種があたかも同一のものとして扱われている。特殊作戦用の事故率は飛行時間10万時間に対して13.47件なのに対して、海兵隊型の事故率は同じ期間で事故率1.93件と有意に低い。ところが、日本のマスゴミは海兵隊型の事故率を特殊作戦用の事故率と同等であるがごとく報道している。

日本の周辺で起こる可能性がある有事も念頭においた上で米国が配備を計画したオスプレイを、日本人の現実離れした安全感覚を理由に使えないようにするのであれば、日本はその責任を負わなければならない。すなわち、オスプレイ配備を認めないのであれば、オスプレイが飛行できないことで影響が出る海兵隊の展開能力を日本の自衛隊に肩代わりさせる必要がある。

私の主張のまとめ

アメリカ兵の夜間外出を禁止するなら(アメリカ兵のほとんどはまともな人々だ)、同時に日本国民(日本国民のほとんどはまともな人々だ)にも、深夜外出禁止令など、相応の性犯罪予防対策を施す必要があるのではないか。

なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする