医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心房細動のカテーテル治療成功後に血液さらさら療法が必要な患者とは

2024年01月07日 | 循環器
心房細動という脈の乱れに対するカテーテル治療の成功後に血液さらさら療法を継続することの有効性や安全性はこれまで明らかになっていませんでした。

先月、この未解決問題に客観的な結論が出されました。
この研究は日本で施行された大変素晴らしい研究です。まだ紙の医学雑誌上で掲載されていませんが、ネットで閲覧することができます。

Oral anticoagulation after atrial fibrillation catheter ablation: benefits and risks.
Eur Heart J. 2023 Dec 20:ehad798. doi: 10.1093/eurheartj/ehad798. Online ahead of print.


【方法】
2014年~2021年に心房細動に対するカテーテル治療が行われた患者のデータをレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)から抽出し、後ろ向きに解析されまた。

カテーテル治療後、心房細動の再発がない患者23万1,374例を対象として、カテーテル治療後6ヵ月時点の抗凝固薬の継続の有無で2群に分類されました。

さらにCHADS2スコアで3群(1点以下、2点、3点以上)に分類し、抗凝固薬の継続の有無と血栓塞栓症、大出血の発生の関連が検討されました。

【結果】
CHADS2スコア別に血栓塞栓症リスクを検討した結果、CHADS2スコア3点以上の患者では抗凝固薬の継続により有意に血栓塞栓症リスクが低下しましたが、CHADS2スコア1点以下、2点の患者では低下しませんでした。

CHADS2スコア別に大出血リスクを検討した結果、CHADS2スコア1点以下、2点の患者では抗凝固薬の継続により有意に大出血リスクが上昇しましたが、CHADS2スコア3点以上の患者では上昇しませんでした。

【結論】
つまり、CHADS2スコア2点以下の患者では、カテーテル治療成功後に血液さらさら療法を継続するのはよくないことが判明しました。


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無症状・短時間の心房細動の65歳以上にDOACを投与するのは出血を増やして有害

2024年01月02日 | 循環器
以前、 DOAC(新しい直接抗凝固薬)の5年予後はワーファリンと同じであることをお伝えしました。

DOACは製薬会社から宣伝されているほどワーファリンより優れているわけではありません。

通常の心電図で心房細動が捕らえられていないぐらい短時間の心房細動に対して、DOACによる抗凝固療法が有用なのかどうかはこれまで明らかでありませんでした。
そのことに関して、最近、New England Journal of Medicineでこんな結果が報告されました。

Anticoagulation with Edoxaban in Patients with Atrial High-Rate Episodes
N Eng J Med Sep 28;389(13):1167-1179.


ペースメーカーなどの植え込み型心臓デバイスで検出された心房性頻拍エピソード(AHRE)を伴う2,536例が対象とされました。

対象は6分~24時間の心房性頻拍エピソードが記録された65歳以上で脳梗塞の危険因子(CHADS2スコアーの慢性心不全、高血圧症、糖尿病)が1つ以上ある患者です。

本来アスピリンは心房細動の血栓予防に効果はありませんが、心房細動に何も投与しないのは倫理的に問題があるためか(アスピリン投与でも倫理的問題はありますが、計画当時の欧米のガイドラインには低リスク心房細動患者に対しアスピリンが推奨されていたそうです)、アスピリン81mg/日投与群とエドキサバン適量投与群にランダムに割り当てられました。

心房細動の持続時間の中央値は2.8時間でした。

このNOAH-AFNET 6試験では、DOACエドキサバン(商品名:リクシアナ)が主要有効性評価項目(心血管死または脳卒中または全身性塞栓症)を有意に抑制できず(ハザード比0.81、95%CI 0.60~1.08、P=0.15)、安全性主要評価項目の「全ての理由による死亡」または「大出血」が有意に増加(ハザード比1.31、1.02~1.67、P=0.03)したため、有益性がないことは明かであるとして試験は早期に終了され、このような患者への抗凝固療法施行が否定されました。

脳梗塞の発症率は両群共に約1%/年でした。

著者らは「対象集団にDOACを投与する前に、ガイドライン委員会により脳卒中抑制のベネフィットと出血リスクのバランスや、治療必要数(NNT)対有害必要数(NNH)などを検討する必要がある」との見解を示しました。

やはり、心房細動が少しでもあれば何でもかんでもDOACによる抗凝固療法を開始するのは良くないですね。

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