医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

新型コロナウイルス流行の「第一波を抑えることができたのは運が良かったから」?

2020年07月16日 | 雑感
7月18日号の東洋経済の51ページに、以前でたらめなことを言っていた岩田健太郎が「感染を抑え込めたのはただ運が良かっただけ」と書いていました。(第一波を抑えることができたことは認めたのですね)

その理由として「2月に患者が増え始めたタイミングで感染者に気がついたのが偶然にも早かったためだ」と言っている。
それなら、専門家らしく、2月の時点で「患者に早く気がついているので抑え込める」と言え、という感じですね。
まさに「後知恵バイアス」「後出しじゃんけん」の発言です。

PCR検査を拡充させなくても、強力なロックダウンをしなくても、第1波は収まった

「東洋経済」だから医者は読んでいないだろうと思って、こんないいかげんなことを書いたのでしょうか。

医者(科学者)(しかも教授?)がこんな非科学的なことをよく公に言うなぁと、呆れてしまいます。

ということは、彼はもし第一波を抑えることができなかった場合、彼の意見に反対の立場の人々から、「それは運が悪かったから」と反論されても良いということでしょうか。

「運がいい」とか「運が悪い」という定義を、岩田健太郎はどのように証明してくれるのでしょうか。
他の科学者が言うのもはばかることを彼は平気で言ってしまう、そんな精神が私は信じられません。

ちなみに、科学の世界で「運がいい」とか「運が悪い」(めったに起こらないことが起きた)ということをどのように扱っているかを、統計学的に説明したいと思います。

まず、簡単な例を挙げます。
あなたは「これからコインを3回投げるので、3回とも表がでたら私に1万円下さい。それ以外だったら私はあなたに1万円差し上げます」というゲームをしているとします(こんな期待値的に不自然なゲームは現実にはないですが)。

あなたはほぼ1万円を獲得できると思い、このゲームに参加したとします。でも、3回とも表が出てあなたは1万円を相手に支払わなければならなくなったら、あなたは「運が悪かった」と感じるでしょう。あるいは「コインに仕掛けがしてある、いかさまではないか」と感じる人もいるでしょう。

それでは、「これからコインを4回投げるので、4回とも表がでたら私に1万円下さい。それ以外だったら私はあなたに1万円差し上げます」というゲームに置き換えます。4回とも表がでて1万円を相手に支払わなければならなくなったら、あなたは「運が悪かった」どころか「コインに仕掛けがしてある、いかさまではないか」(めったに起こらないことが起きている)と感じるでしょう。

科学の世界ではこの辺を(めったに起こらないことが起きた)としています。

これだけでは私が何を言っているかわかりませんね。これから説明いたします。3回とも表がでる確率は8分の1=約12%で、4回とも表がでる確率は16分の1=約6%です。

多くの人が「いかさまではないか、こんなことめったに起きないぞ」と感じる6%、統計学の世界ではさらに少し確率の低い5%を「めったに起きない」(p=0.05)としています。

例えば、A君とB君のうち、どちらがテニスが上手いのか決めるとき、1回の試合の結果だけで決めるのは科学的でありません。次の試合では逆の結果になるかもしれないからです。それでは何回試合を設定し、片方が連勝すればよいのかという問題が生じます。A君が3回連勝すればA君の方がテニスは上手いのでしょうか。あるいは4回でも不足で10回ぐらい試合をさせて決めるべきでしょうか。統計学ではおおよそ4回連勝すればA君の方が上手いでしょうという立場をとっています。これはコイン投げの「いかさまか、いかさまでないか」と皆さんが感じた感覚のごとくです。

ところが「A君の方がB君よりテニスが上手い」といっても、それが「真実」であることを直接証明する方法はありません。「江戸時代にはまだネジらしき物はなかった」を証明するように、これを証明するには江戸時代の全ての年代の全ての場所を調べないといけないからです。A君とB君は1,000回以上、いや永遠に試合をしないといけないかもしれません。

そこで統計学では「A君とB君の勝率は同じである」(皆さんが最初、コインを投げて裏表が出るのは半々の確率だろうと感じたのと同じです)という仮説を立てておいて(これを帰無仮説あるいは統計的ゼロ仮説といいます)、「その仮説が起きることは5%以下の確率であり、めったに起きない」ということを証明して、「A君の方がB君よりテニスが上手い」を証明する方法を用います。

さて、岩田健太郎、「新型コロナウイルス流行の第一波を抑えることができたのは運が良かったから」という命題を、数値で統計学的・科学的に、どうか説明して下さい。5%(p<0.05)とまでは言いませんので、おまけして12%(p<0.12)でもいいですよ。どうかお願いします。

岩田健太郎って、完全に非科学者ですね。

科学的根拠を示さず、正しからぬことを公に発信してしまうこういう人たちって、私たちにとっての公益性・公共性・真実性を毀損していませんか。

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新型コロナウイルスワクチンの有効性を証明するにはどのような研究が必要か(帯状疱疹ワクチンを例に)

2020年07月09日 | 感染症
前回、「子宮頚癌ワクチンも接種しないで、新型コロナワクチンに期待しているバカな国」ということについてお伝えしました。


それでは、新型コロナウイルスワクチンの有効性を証明するにはどのような臨床研究が必要か、ということを帯状疱疹ワクチンの有効性を示した論文を紹介しながら解説したいと思います。

帯状疱疹は発症したらできるだけ早く薬物治療を開始しないと、その後チクチクとした神経の痛みがいつまでも続きます。

Efficacy of an Adjuvanted Herpes Zoster Subunit Vaccine in Older Adults
N Engl J Med 2015;372:2087-96
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)


この研究は時間的に「前向きの研究」で、ランダム化二重盲検研究です。

過去に帯状疱疹を発症したことのない50歳以上の参加者を、帯状疱疹ワクチンを接種する群7,361人と、プラセボすなわちワクチンの入っていない生理食塩水を注射する群7,436人にランダムに2群に分け(本人はどちらの群になったか知らないし、医者もその人がどちらの群か知りません)、その後1年間の帯状疱疹の発症率が「年齢別」に調べられました。
(正確にはワクチン群7,698人とプラセボ群7,713人ですが、途中で脱落者がいたのでこの数字になりました)

結果は上の図のごとくです。
プラセボ群はどの年齢層(50-59歳、60-69歳、70歳以上)も発症率は1,000人あたり約9人ですが、ワクチン接種群は1,000人あたり約0.3人と、劇的な効果がありました。

帯状疱疹の発症率は50歳を超えてくると、毎年1%もあるのですね。単純計算だと10年で10%です。

発症率1%/年の帯状疱疹でさえワクチンの有用性を証明しようとするとこういう研究が必要になるのに、罹患率0.1%~1%の新型コロナウイルスワクチンの有用性を証明するには、前回お伝えしたように様々な困難が立ち塞がります。

というか、新型コロナウイルスワクチンの有用性を「厳密」に証明することなどほとんど不可能で、「姑息的」な「ごまかし」を使わないと、新型コロナウイルスワクチンの有用性を証明するのは難しいでしょう。


作家、百田尚樹先生の「バカの国」、興味深いです。私もパクらせていただいております。
バカの国(新潮新書)

「帯状疱疹ワクチンも接種しないで、新型コロナワクチンに期待しているバカな国」



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