医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

運動前後のストレッチングには筋肉痛・ケガ予防の効果がない

2022年05月03日 | 整形外科
コロナ感染に対する行動制限も緩和され、今後屋外で身体を動かす機会が増えてくると思います。私も最近、積極的に登山するようにしています。

昔は、運動前には準備体操をしなさいと言われてきました。本当に準備体操は効果があるのかを検証した論文があります。

Effects of stretching before and after exercising on muscle soreness and risk of injury: systematic review.
BMJ. 2002;325:468.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この論文はこれまでの8つの論文をまとめたレビューです。基準に該当する研究結果を集め、再解析する方法では信頼性が高い根拠が得られます。そしてこのBritish Medical Journalというのはとても信頼性の高い医学雑誌です。

対象人数が最大のものは17~35歳の兵役でのトレーニング生1,538人、同じく1,093人のものが含まれています。

調査では毎日のトレーニング前後に5~10分の準備運動(ストレッチング)をする群としない群に分け、80日間のトレーニング期間の筋肉痛、ケガの状態が評価されました。

筋肉痛は0から10までの11段階で評価されました。ケガは捻挫、疲労骨折、骨膜炎、アキレス腱炎、前脛骨区画症候群(前脛骨筋、長指伸筋、長母指伸筋とそれぞれの筋膜および前脛骨区画に関与する神経と血管に、何らかの原因によって障害が生じ、そのために組織内圧が亢進し、前脛骨区画内の循環系に不全が起こり、筋・腱・神経組織に機能障害や壊死が生じるものである)を対象とされました。

結果ですが、筋肉痛のスコアは両群で同じでした。上の図は80日間のトレーニング期間にケガをしなかった者の割合で、赤は1998年の調査でのストレッチング施行群、青は非施行群、水色は2000年の調査でのストレッチング施行群、オレンジは非施行群です。1998年、2000年の調査とも両群でケガが起きる割合は同じでした。

他の6つの調査でもほぼ同様の結果がでています。

運動前に準備運動(ストレッチング)をしても筋肉痛やケガを防ぐことはできません。筋肉痛になるときはなる、ならないときはならない、ケガをするときはする、しないときはしないのです。私たちが小学校の時から運動前には準備体操をしなさいと言われてきたのはなんだったのでしょうね。思い込みというのは恐ろしいものです。

ただし、この結果の解釈に対して注意するべきことは、対象年齢が17~40歳と若く高齢者に関しては不明である点、準備運動(ストレッチング)がその後の運動能力を向上させるかは調査されていないという点です。


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