ワニと読むミステリ(アガサ・レーズンとカリスマ美容師)

アガサ・レーズンとカリスマ美容師 (コージーブックス)
M・C・ビートン
原書房

Agatha Raisin and the Wizard of Evesham
M.C. Beaton
Constable Crime

(M・C・ビートン著)

ご婦人たちはみんなミスター・ジョンのことをカラーリングの魔術師だとうわさしています。アガサは白髪をいく筋か見つけたので大慌てでうちで毛染めをしましたが白髪が紫色に染まってしまったので、そのハンサムなイヴシャムの美容師のところへ飛んでいきました。魅力的なミスター・ジョンはアガサの髪を美しく整えるだけでなく、デートに誘ってきます。どうやらアガサに気があるらしい、とアガサは喜びますが同時に誰かを強請っているのではとの疑いも持ちます。ミスター・ジョンとの楽しい未来を思い描くアガサでしたが、彼がサロンで毒殺されるとまたアガサは殺人事件に巻きこまれてしまいます。ミスター・ジョンのたくさんの女性客たちは隠したい秘密があるようで、アガサは素人探偵として首を突っ込みますが、アガサ自身が困ったことに。

アガサ・レーズンのシリーズ8作目です。今回はアガサが恋心を寄せる隣人のジェームズは旅行で不在。その代り准男爵のサー・チャールズ・フレイスが相棒となって一緒に事件解決に奮闘します。しかしチャールズのシワイこと!いつでもアガサから煙草をもらおうとし、アガサの家に泊まって、タクシー代もアガサ持ち。おまけにチャールズの若い女性とのデートを見せつけられちょっとむかつきます。アガサの周りの男たちはどうも自分勝手でアガサにたかろうとするヤツばっかりみたいですね。しかしアガサはそんなことではめげません。自立した女性としてしっかり自分の生活は守っています、それと2匹のネコ、ホッジとボズウェルも。最後は旅行から帰ってきたジェームズと、アガサのご機嫌を取り戻そうとするチャールズの鉢合わせで終わりますが、次回作の幕開けは波乱含みかも。

■既刊
いつのまにかもう8作も出ています。
アガサ・レーズンの困った料理
アガサ・レーズンと猫泥棒
アガサ・レーズンの完璧な裏庭

主人公: アガサ(アギー)・レーズン(元PR会社経営者)
グルメ: なし
動物:  ネコ:ホッジ(サバトラ猫)、ボズウェル(トラ猫) (両方アガサの飼い猫)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(幽霊はお見通し)

幽霊はお見通し (創元推理文庫)
エミリー・ブライトウェル
東京創元社

The Ghost and Mrs Jeffries (Mrs.Jeffries Mysteries)
Emily Brightwell
C & R Crime

読むと、怪しいことは信じてはいけない。

(エミリー・ブライトウェル著)
ヴィクトリア朝の殺人事件シリーズ3作目。スコットランドヤードの温厚な警部補ウィザースプーンはまたも難解な殺人事件を担当することになります。とほうにくれる警部補ですが、彼には強力な助っ人、家政婦であるジェフリー夫人とハウスメイドたちがいます。機転のきくジェフリー夫人は事件解決めざして人の良いウィザースプーンをそーっとみちびいていきます。さて、今回、新年早々ホッジス夫人は最初の交霊会で死を予見されます。その占いは現実となり、事件を担当するのはウィザースプーン警部補です。良い年でありますようにと祈った彼の願いは裏切られ、年初から殺人がらみの犯罪で、彼は深いため息に埋もれています。

ヴィクトリア朝が舞台のミステリですが、この頃心霊研究が流行っていたようです。シャーロック・ホームズの生みの親のコナン・ドイルも心霊研究にこっていたころだそうです。家政婦のヘプシバ率いる探偵団にクルックシャンク夫人(アメリカ人の未亡人)も加わることになりました。夫人の執事のハチェットは心配のタネが増えましたが夫人に忠実に仕え、夫人に危害が及ばぬように、また夫人が無茶をしないようにしっかりと見張っています。頼もしいですね。 この事件では、お金持ちの夫人をだまそうとするのですがなかなか手がこんでいて、現代の劇場型のオレオレ詐欺みたいな感じかもしれません。ウィザースプーン警部補を助ける捜査中に従僕のウィギンズは野良イヌと仲良しになってしましい一緒に張込みをすることになります。イヌはフレッドと名付けられますが、次の作品でも活躍するか心配です。かわいい!

■既刊
これまで2作出ています。
家政婦は名探偵 → 開業医が殺害されます
消えたメイドと空家の死体 → 年若いメイドが行方不明になります
ウィザースプーン警部補を支える従僕たちの活躍がまだまだ続いてほしいです。

主人公: 1.ジェラルド・ウィザースプーン(ロンドン警視庁の警部補)
2.ヘプシバ・ジェフリーズ(ウィザースプーン家の家政婦)
場所:  イギリス、ロンドン
グルメ: なし
動物:  イヌ:フレッド(雑種)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(プラム・ティーは偽りの乾杯)

プラム・ティーは偽りの乾杯 (コージーブックス)
ローラ・チャイルズ
原書房
940円+税
Steeped in Evil (A Tea Shop Mystery)
クリエーター情報なし
Berkley
847円+税
読むと、本物を見分けましょう。

(ローラ・チャイルズ著)
セオドシア・ブラウニングはこれまで自分がワイン通だとは考えたこともありませんでした。お茶については非常に詳しいですが。しかしチャールストン郊外の高級なナイトホール・ワイナリーでのおしゃれな試飲パーティには興味があります。楽しい夕べはワイン樽から死体が転がり出たことで悲惨な結果になってしまいました。ワイナリーの経営者の息子ジョーダン・ナイトが殺害されていたのです。警察の捜査に不満なナイトは、セオドシアにドレイトン(セオの店インディゴ・ティーショップのティー・ブレンダ―)を通じて助けを求めてきました。酒の中に真実ありとは言うものの、ワイナリーの誰もかれもがウソをついているようです。パーティの参加者リストをじっくりと観察すると、セオは数人の容疑者を見つけることができました。

今回はワイナリーが事件現場です。まだ新しいワイナリーはなかなか経営も困難なようで、新しいワインを売り込むというのも大変な労力がかかるものですね。ブドウ畑をどう育てていくのかちょっと知識を得ました。
チャールストンの街は芸術散歩のイベントの真っ最中ですが、街を盛り上げるために常にいろいろな催しがあるのは大したものですね。
今回もヘイリー(シェフ兼パティシエ)はユニークで美味しそうな料理を考案します。
レシピあり。

■既刊
インディゴ・ティーショップのシリーズはもう15冊目だそうです。いつのまにこんなにたくさんの作品がでたのでしょうか。
  ダージリンは死を招く
  グリーン・ティーは裏切らない

スザンヌ・デイツ、卵料理の店「カックルベリー・クラブ」の経営者が主人公のシリーズもあります。
  あつあつ卵の不吉な火曜日

主人公: セオドシア・ブラウニング(インディゴ・ティーショップのオーナー)
場所:  USA、サウスカロライナ州チャールストン
グルメ: ティーとお菓子(レシピあり)
動物:  イヌ:アールグレイ(セオドシアの愛犬、セラピー犬)。ダルメシアンとラブラドールのミックスのダルブラドール
ユーモア: 中


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ワニと読むミステリ(モデル探偵事件録)

モデル探偵事件録: アクセル、パリを駆け巡る (ハヤカワ・ミステリ文庫“my perfume”)
カリーナ・アクセルソン
早川書房

Model Under Cover ? A Crime of Fashion: Model Under Cover (Book 1)
Carina Axelsson
Usborne Publishing Ltd


読むと、近くの動きはわかりづらい。

(カリーナ・アクセルソン著)
ファッション界の最もスタイリッシュな探偵アクセル・アンダーソンの活躍するミステリです。
長い脚をもつアクセルはファッションに心酔する家族から無理やりパリに住むファッション誌の敏腕編集者のおばのアシスタントにさせられます。しかし、アクセルが本当にやりたいことは謎を解くこと。そこでスターデザイナーのベル・ラ・リュヌが失踪したと知ったとき、アクセルはチャンスだと思いました。とてつもなく高いヒールでキャットウォークをよろよろ歩きながら、モデルの仕事に隠れて事件を解決しよう。ゴージャスなセバスチャンとトップモデルのエリーの助けを借りて、パリのファッション・ウィークの真っただ中でスターデザイナー失踪の謎に挑むアクセルですが残された時間はあまりありません。

元モデルのカリーナ・アクセルソンが著者です。モデル業界の専門用語満載で、またパリで訪れたい場所のリストでもあります。まるでパリの観光案内のように次々に見どころが変化しアクセルと一緒に名所を巡っているようです。しかしパリのいろいろな建物が地下でこのようにつながっているというのは驚きです。地下墓地もずいぶん広範囲に及ぶというのも初めて知りました。最新の自動車が高速で移動する道路のわきに古い地下墓地への出入り口が存在するというのはパリの歴史を感ずるというのと同時にちょっと不気味。
 このシリーズはまだまだ続くようでファッション用語の勉強になりそうです。
著者によるパリのお気に入りの場所も紹介されています。

■ファッションつながり
S・J・ローザンの消えた春物コレクションのスケッチを追うミステリ。
新生の街

主人公: アクセル・アンダーソン(ロンドンの女子高生。16歳)
場所:  フランス、パリ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(蝋人形館の殺人)

蝋人形館の殺人 (創元推理文庫)
ジョン・ディクスン・カー
東京創元社

The Corpse in the Waxworks
John Dickson Carr
Macmillan USA

読むと、愛していても許せない。

(ジョン・ディクスン・カー著)
 元閣僚の娘オデットは背中を刺されてセーヌ河を流されているのを発見されます。さらにその友人の名家の娘も蠟人形館で背中にナイフが刺さった状態で“セーヌ河のサテュロス”の腕の中で発見されます。入手されたすべての手がかりは悪名高い秘密クラブに導かれますが、そこは上流階級の人たちが仮面をつけて不純な気晴らしを求めて出会うところでした。アンリ・バンコランと友人ジェフ・マールはクラブに潜入し、事件解明のために手がかりを模索します。秘密クラブと事件との関係は何なのか、そして犯人は誰なのか、パリの暗い側面を暴き出し、最後は驚きの犯人との賭けがまっています。

 アンリ・バンコラン(パリの予審判事)が探偵役のシリーズです。蠟人形館というだけで怪しい響きがしますね。それに退廃的なパリの暗い小路に人目を気にする影がちらちらするとなると事件が起こらないはずがないという気がします。こういうおどろおどろしい幕開けはさすがカーです。
 ここに出てくる仮面をつけた秘密クラブというのは実際にあったのでしょうか。パリならあってほしいですね。
巻末の鳥飼杏宇氏の解説によると、作品中に登場する予審判事とは、
  「訴追された重罪事件を公判にするかどうか決定する立場の強制捜査権を持つ司法官のこと。証拠集めなどの捜査を行う際には警察を自由に動かす権限を持ち、バンコランも彼らを手足のように使っている。」
のだそうです。日本人にはちょっとわかりにくい職です。

■既刊
アンリ・バンコランのシリーズは、
夜歩く
絞首台の謎
髑髏城
蠟人形館の殺人
四つの凶器
の5冊です。全部を新訳版で読みたいです。
カーのもう一人の巨体の探偵ヘンリ・メリヴェール卿に比べると、こちらは随分と伊達男です。

主人公:アンリ・バンコラン(パリの予審判事)
ジェフ・マール(バンコランの友人。語り手)
場所:  フランス、パリ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(ピカデリーの殺人)

ピカデリーの殺人 (創元推理文庫)
アントニイ・バークリー
東京創元社

The Piccadilly Murder
Anthony Berkeley
Dover Pubns

読むと、すぐにチャンスを活かせるかが成功のもと。

(アントニイ・バークリー著)
 アンブローズ・チタウィック氏がピカデリー・パレス・ホテルで見たのは、自殺か、他殺か? チタウィック氏は老婦人の死は殺人であると証言します。老婦人のコーヒーカップに何かが入れられるのを見たからです。ロンドン警視庁のモーズビー首席警部はチタウィック氏の証言をもとに、甥で遺産相続人であるシンクレア少佐を容疑者とみなしますが、彼の友人や親戚の人々は少佐はそういうことのできる人物ではないと強く訴えます。チタウィック氏はほとんど脅迫のようなかたちでこの件をもっと詳しく調べることを約束させられ、事件は見かけほど単純ではないとわかってきます。

 1929年刊。探偵役はアンブローズ・チタウィック。伯母のミス・チタウィックの相続人で伯母と同居していますが、威圧的な伯母のもと、さまざまな用事をさせられています。まったく伯母さんに逆らえないところがなんか笑えます。容疑者であるシンクレア少佐もチタウィック氏と似たような境遇で、実は少佐はある女性と結婚したのですが、ミス・シンクレアがその結婚を怒って相続人からはずすと言い出すのではないかと恐れているあたりがチタウィック氏としては大いに共感できるところです。
 いくつもの事件が重なるのですが、一部は共犯で、しかしそうでないところもあり、時間差で犯罪がすれ違ったりで、実に実に楽しめるミステリです。
 怪しい人物にはこと欠かず、犯人がだんだん絞り込まれていくのだけれども、最後はえっという感じで読後満足です。

■既刊
 アントニイ・バークリーの著作は入手困難なものが多く、これから復刊、新訳してほしいです。

ジャンピング・ジェニイ  ← 最後の真犯人の告白がたまらなく愉快です。
第二の銃声

主人公:アンブローズ・チタウィック(犯罪研究家)
場所:  イギリス、ロンドン
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(ジャック・リッチーのびっくりパレード )

ジャック・リッチーのびっくりパレード (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ジャック・リッチー
早川書房

読むと、ちっとも思った通りでない。

(ジャック・リッチー著 小鷹信光 編・訳)
 日本オリジナル短篇集です。4つに分かれています。

  Part I: 1950年代(5篇)。
  Part II:1960年代(6篇)。 
  Part III:1970年代(10篇)。 
  Part IV:1980年代(4篇)。

 どれも意表をつく結末で、300ページを超える厚さでもどんどん読んでしまいました。実に楽しい。
 この中に、カーデュラ探偵社ものも入っているのが、ちょっと儲けた気分です。ファンタジー風、SF風の作品もあります。
 巻末の編訳者あとがきによると、この本の最後の作品「洞窟のインディアン」は遺作だそうで、注釈がついていましたので引用します。
 『リッチーの息子、スティーブから送られてきた未発表のこの作品のタイプ原稿には、「1983年8月23日に亡くなったとき、ジャック・リッチーはこの物語を執筆中だった」という注記が付されていました。そして著者名はジャック&スティーブ・リッチーの連作となっています。未完成の原稿にスティーブが手を加え、完成させたことを明らかにしたのでしょう。』
 親子二代で作られたものですね。そう聞くと余韻を感じます。
 カーデュラ探偵社ものはPart IIIにあります。「名画明暗―カーデュラ探偵社調査ファイル」。夜しか開いていない探偵社に画家を殺してくれとの依頼がはいります。ちょっとコウモリに変身すれば尾行なんて簡単なもの。、
 『地球からの殺人者』では、非常にユニークで実行が難しい処刑方法があります。
 ジャック・リッチーの作品集はこれで終わりでしょうか。それはあまりにも悲しい。もっと多くの作品を読みたいです。

■既刊
ジャック・リッチーの作品はこれまで3冊出ています。

クライム・マシン
カーデュラ探偵社
ジャック・リッチーのあの手この手
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ワニと読むミステリ(幸せケーキは事件の火種)

幸せケーキは事件の火種 (コージーブックス)
ローラ・チャイルズ
原書房

Scorched Eggs (A Cackleberry Club Mystery)
Laura Childs
Berkley

読むと、炎は遠ざけたいが結果は見たい。

(ローラ・チャイルズ著)
 スザンヌがルート66で髪を染めていると、隣の郡民生活局の建物が突然炎に包まれて燃え上がり、近くで目撃したスザンヌは呆然としてしまいます。火事は長く郡民生活局の職員として働いていたハンナ・ヴェナブルの命を奪い、彼女はカックルベリー・クラブのスザンヌたちの友人でもありました。火事には燃焼促進剤が使われていることがわかり、スザンヌ、ぺトラ、トニの3人は犯人をあぶりだすことを誓いました。スザンヌはこの火事と近くのカジノとの間になにか関係があると気がつき、放火犯の秘密に近づいていきます。

 今回はローガン郡のカウンティ・フェアがあるため、スザンヌは愛馬モカとともにバレルレースの練習に一生懸命で、ペトラはお菓子部門にエントリーしています。スザンヌの付き合っているサムは演劇の練習です。いつもいろいろな催しがあって楽しそうです。最初のところ、キット(カックルベリー・クラブのウェイトレス)とリッキーの結婚式に保安官がなだれこんできて新郎が容疑者として引っ立てられていくのでどうなることかと思いました。
 イヌやウマに囲まれているスザンヌですが今回は巣から落ちてしまったフクロウのヒナまで育てることになります。フクロウも事件解決にちょっと貢献します。
 今回の作品も巻末にレシピがあります。

■既刊
もうこれで6冊目だそうです。
あつあつ卵の不吉な火曜日
チェリーパイの困った届け先
ほかほかパンプキンとあぶない読書会
あったかスープと雪の森の罠

その他、インディゴ・ティーショップのオーナーのセオドシア・ブラウニングのシリーズもあります。
ミントの香りは危険がいっぱい

主人公: スザンヌ・デイツ(カックルベリー・クラブの経営者)
場所:  USA、中西部キンドレッド
グルメ: 卵料理とお菓子。レシピ有り。
動物:  イヌ:バクスター(スザンヌの愛犬、アイリッシュ・セッター)、スクラッフ(コリーとシェパードの雑種)
ウマ:モカ、フクロウ
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(マジシャンは騙りを破る)

マジシャンは騙りを破る (創元推理文庫)
ジョン・ガスパード
東京創元社

The Ambitious Card (An Eli Marks Mystery Book 1) (English Edition)
John Gaspard
Henery Press


読むと、身近なトリックは見破るのは困難。

(ジョン・ガスパード著)
 マジシャンはトランプを使った手品や子どものお誕生会のショーをやるだけではありません。ときには殺人につながるときもあります。特に手品師のイーライ・マークスが有名なメンタリストを相手取ってこれはインチキであると言い放った場合には。血塗られたダイヤのキングが殺人現場から見つかると、それは警察をイーライへと導きます。さらに霊能者が殺されて、イーライは連続殺人犯の容疑者として確固とした地位を築いてしまいます。次の犠牲者は誰なのか?イーライが恋に浮かれているあいだに、次のターゲットはトラップにはまり、イーライは知っているあらゆるトリックを使ってわが身も救おうとしますが。 
 
 マジシャンが主人公のミステリはなかなかないですね。ちょっとした種明かしもあって、興味を持って読めます。電話だけで相談を受けるという霊能者の話が出てくるのですが、支払いの方法がおもしろかったです。ネットワークに属しているどの超能力者にも使える共通チケットがあって、霊能者が電話を受けるとクライアントのアクセスコードをパソコンに入力するだけで料金はチケットから差し引かれて霊能者に入金される、というシステムだそうです。日本でもこうなのでしょうか。
 いろいろなタイプの霊能者やマジシャンがあってその違いを知るだけでも楽しいです。
 イーライ・マークスのシリーズはすでに3作あり、2作目は撮影現場が舞台だそうです。低予算の長編映画を6本も制作しているジョン・ガスパードですからミステリのなかでもそれが生かされているだろうと期待が膨らみますね。

主人公: イーライ・マークス(マジシャン)
場所:  USA、ミネソタ州ミネアポリスとセントポール
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(不思議なキジのサンドウィッチ )

不思議なキジのサンドウィッチ (創元推理文庫)
アラン・ブラッドリー
東京創元社

The Dead in Their Vaulted Arches: A Flavia de Luce Novel
Alan Bradley
Bantam

読むと、近づくものは油断がならない。

(アラン・ブラッドリー著)
 
 1951年の春、11歳の化学大好きな探偵少女フレーヴィアは、長く行方不明だった母ハリエットの帰還を家族とともに駅で待っています。そこにはハリエットを偲ぶ村の人たちとともにウインストン・チャーチルの姿も見られます。イギリスの村ビショップス・レーシーに汽車が到着するときに、背の高い見知らぬ男がフレーヴィアに近づいてきて謎のメッセージを彼女の耳にささやくのです。その直後、男は死んでいました。群衆の誰かに押され、列車の下敷きになっていたのです。いったい彼は誰なのか?彼の言葉は何を意味しているのか?なぜフレーヴィアに? ド・ルース家の古びたバックショー荘でフレーヴィアは秘密の場所に隠されていたフィルムのリールを発見し、それを手がかりにしてド・ルース家の秘められた歴史を解きほぐしていくことになります。そしてハリエットの愛した陽気な気分号も弔問に訪れ、フレーヴィアは空へと飛び立ち壮大な眺めの中に殺人者の姿を見出します。

 本の帯に「大団円!」とあったので、これはフレーヴィアのシリーズが終わってしまうのかと懸念しがっかりしてしまいましたが、安心してください、まだまだ続きます。春にはすべての謎が解けるの最後で行方不明だった母ハリエットが見つかったという衝撃的な父の言葉で終わるのですが、この作品ではハリエットの死の真相のみならずハリエットが戦時中にいかに勇敢な活躍をしていたかということが語られます。ちょっとびっくり。そしてフレーヴィアのおばフェリシティも諜報活動に関係していたらしいこともしめされ、フレーヴィアはフェリシティから重要な任務を知らされます。話は思わぬ方向に向かいますね。
 今回はハリエットの死の真相について解き明かすのがメインで、さらにハリエットの愛した陽気な気分号も登場しド・ルース家のいろいろな過去も語られ、フレーヴィアが少しも気がつかないところで父の支援があったことなどちょっと感動ものです。フレーヴィアがいろいろな人からお母さんにそっくりだと言われて涙するあたりはこれまでの作品でフレーヴィアだけが母のぬくもりを知らないで寂しい思いをしていたのでなんだかこちらまで涙です。今回は謎解きの要素は希薄ですが、これからのフレーヴィアにつながると思えば納得です。劇的に世界が変わり新しい教育をうけることになるフレーヴィアの次の作品が楽しみです。次作ではフレーヴィアは12歳になっているそうです。新しい環境でのお話はどんなものでしょうか。

■既刊
 これまで5作品あります。
人形遣いと絞首台
パイは小さな秘密を運ぶ
水晶玉は嘘をつく?
サンタクロースは雪のなか
春にはすべての謎が解ける

主人公: フレーヴィア・ド・ルース(11歳の化学好きの少女)
場所:  イギリス、イングランド
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(クーポンマダムの事件メモ )

クーポンマダムの事件メモ (ハヤカワ・ミステリ文庫“my perfume”)
リンダ・ジョフィ・ハル
早川書房

Eternally 21 (A Mrs. Frugalicious Shopping Mystery)
LindaJoffe hull
Midnight Ink

読むと、ショッピングモールはなんでもあり。

(リンダ・ジョフィ・ハル著)
 マディはクーポンを駆使して家計費を節約中。ちょっと前まではセレブ夫人として値段には無頓着だったのに。が、夫のフランク・ファイナンス・マイクルズ、町で有名な財産管理の権威、が投資詐欺にあい、家族の貯金を失ってしまったのです。家計は火の車。マディは経済的にまったく問題ないというふりをしていますが、実はクーポンを駆使して家計を切り詰めているのです。クーポンマダムの名前で節約サイトを始めてみると、ウェブサイトは大ヒットで節約のヒントを求める人たちであふれています。マディがクーポンを利用し、10代の子どもたちや親戚のためにエターナリー21で買い物をしていると、マネージャーのレイラが万引きだととがめひと悶着ありますが、そのレイラが急に倒れて息を引き取ると事態は最悪の方向に向かいます。誰からも嫌われていたレイラなので容疑者のリストは長く、しかも様々な証拠がマディを第一容疑者とさししめしているとなるとマディは自力で犯人を見つけ出さなければなりません。

 こんなにいろいろな種類のクーポンがあるとは思いもよりませんでした。使える条件も様々でとても全体を把握できそうもありません。でもこれらのクーポンをしっかり使いこなせるならばずいぶん生活費が助かるだろうなぁと思いました。と、その国の状況がわかるのが肩のこらないミステリのよいところでもあります。
 日本でもこの作品にでてくるような節約に役立つ方法はあるのでしょうが、クーポンをここまで使いこなすのはなかなか難しそうです。
 本国ではもう3作目が刊行されているようです。はやく翻訳版がでるとよいのですが。

■シリーズ
 2作目でマディはテレビ出演をはたすようです。あんなに逃げ回っていたのに何があったのでしょうか。
 
主人公: マディ・マイクルズ(またの名を〈クーポンマダム〉。匿名人気ブロガー)
場所:  USA
グルメ: なし
動物:  ネコ:チリ、アップルビー
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(蹄鉄ころんだ)

蹄鉄ころんだ【新版】 (創元推理文庫)
シャーロット・マクラウド
東京創元社

The Luck Runs Out (English Edition)
Charlotte MacLeod
早川書房

読むと、近いほどわからない。

(シャーロット・マクラウド著)
 バラクラヴァ農業大学は、年に一度の馬の競技大会を前にみんな準備で大忙し。そこへブタの誘拐と殺人が加わった。 
 新婚のピーターとヘレン・シャンディ夫婦が工芸店で銀食器を選んでいるときに、二人組の暴漢が金銀を強奪して金庫を空にし、さらにヘレンを人質にしていった。ヘレンはすぐに見つかったが、ピーターはその間死ぬ思いで苦しんでいた。翌朝早く、大学の畜産学部長が半狂乱でピーターの家にやってきた。ベリンダ、すばらしき雌豚が誘拐されたのだ。
 ベリンダを探していると、装蹄師フラックレーが豚舎の粉末給餌器の中で死んでいるのが発見された。消えたブタと殺された装蹄師、二つの事件には関連があるのか、それを解明するのはピーター・シャンディ教授の使命だ。

 これは再読。やっぱり面白いです。
 大学での事件なので教授たちがたくさん登場するのですが、いずれも期待を裏切らない変わった人たちで大変楽しいです。ブタのベリンダは、『畜産学部長のストット教授が30年近い年月をかけてつづけてきた一連の遺伝学的な実験の重要な標本動物で、もうじき子供を産む予定であり、ブタの育種における科学的な重要性ははかりしれない』という極めて重要なブタです。読みながらもうベーコンになっているのではないかとハラハラしました。
 犯人たちとの決戦で期待にたがわず学長のトールシェルド・スヴェンソンは超人的なパワーでねじ伏せますが、妻のシーグリンデはそれを上回るやわらかい重しで制しています。この辺の力関係が絶妙ですね。
 装蹄師フラックレー一族がどのように家業を継いできたかが語られるのですが、この不思議な縁がまた面白みを加えています。

■既刊
 シャーロット・マクラウド名義では、ピーター・シャンディ教授もの、セーラ・ケリングもの、があります。
 アリサ・クレイグ名義では、マドック&ジェネットもの、ディタニー・ヘンビットもの、があります。
 翻訳されているものはみな読んでいますが、いくつか未訳があるようでぜひともそれらも翻訳してもらいたいものです。

主人公: ピーター(ピート)・シャンディ(応用土壌学教授)
場所:  USA、バラクラヴァ
グルメ: なし
動物:  ブタ:ベリンダ
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(水の葬送)

水の葬送 (創元推理文庫)
アン・クリ-ヴス/td>
東京創元社

Dead Water: Shetland Series 5
Ann Cleeves
Pan Books

読むと、守りたいという激しい気持ちは誰でも持っているかも。

(アン・クリ-ヴス著)
 シェトランド島のシリーズです。 前作“青雷の光る秋”まで活躍していたジミー・ペレス警部が主役のシリーズですが、ジミーは激しい衝撃からまだ立ち直ることができないでいます。新聞記者の死体が発見されるとインヴァネス署の警部ウィリー・リーヴズが派遣され、この事件の指揮をとることになります。ジミー・ペレスは療養中でまだ捜査に参加していませんでした。しかしこの事件の捜査には地元の事情に通じている必要があるということで、ジミーはこの事件を手伝うことになります。亡くなった新聞記者は自分の記者としてのキャリアを向上させるために数年前に島を出ていったのだが、そのきっかけは若い女性を巻き込んだスキャンダルから逃れるためでした。ウィローとジミーが事件を掘り下げていくと、そこにはシェトランド島の電力開発についての島民間の意見の相違があり、島民が表沙汰にしたくない事情もあるようです。

 ジミー・ペレスがひどい落ち込みようで、この事件では捜査に参加しないのかと心配でしたが、ようやっと事件に関心を持つ気持ちがよみがえってきたようで、だんだんと精力的に動き回るようになります。シェトランド島の人たちの生活が詳細に書かれていて、フェリーによる島の移動や島内での人間関係がとても複雑にからみあっています。島の生活は秘密を持つことが非常に困難で隠そうとしても、どこかで誰かが見ていますね。
 ジミーは今は婚約者フランから託された子どもキャシーと生活し、キャシーに対して強い責任感を持っています。これから
2人の関係はどうなっていくのでしょう。
 500ページ近くの長丁場です。覚悟して読みましょう。

■既刊
 シェトランド島のシリーズ4部作です。

白夜に惑う夏
大鴉の啼く冬
野兎を悼む春
青雷の光る秋


主人公: ジミー・ペレス(シェトランド署の警部)
場所:  イギリス、シェトランド本島
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(助手席のチェット )

助手席のチェット (名犬チェットと探偵バーニー1) (創元推理文庫)
スペンサー・クイン
東京創元社

Dog On It (English Edition)
Spencer Quinn
Simon & Schuster UK

読むと、チェットの鼻を信じよう。

(スペンサー・クイン著)

 チェット、賢くてかわいいもう少しで警察犬訓練所を優秀な成績で卒業しそうだったイヌと、ちょっとばかりついてない私立探偵バーニーのコンビは新しい事件に取り組みます。取り乱した母親からの依頼でティーンエージャーの娘を捜すことになるのですが、この女子高校生は行儀のよい成績優秀で才能のある学生で、とても家出するような不品行な行動をするとは思えません。それでは誘拐されたのか? 少ない手がかりを追ううちにチェットはバーニーと離れてしまい窮地におちいりますがバイカ―たちに助けられてホッとしたのも束の間、さらなる絶体絶命の危機に陥ります。

 名犬チェットと探偵バーニーのシリーズ1作目です。犬が一人称で事件を語るミステリは珍しいかもしれません。
 チェットはミックスの大型犬で強烈なジャンプ力を誇って、バーニーには実に忠実な賢い犬ですが、どうも食べ物に弱い傾向があり事件捜査中でもついハンバーガーなどに引き寄せられ気が付いたら食べてしまっているという、もうとてもかわいい犬です。いろいろ考えているうちに眠ってしまったりして、耳の後ろをかいてやりたくなります。
 捜査中にピューマに遭遇したりしますがラスヴェガスあたりではピューマが徘徊しているのでしょうか。怖いけど見てみたいです。
 まだまだチェットのシリーズが続くようで早く読みたいです。

■犬が探偵
 いろいろ捜してみましたが、犬が語るミステリはなかなかないですね。手がかりを提示するようなのはありますが。
 これはネコのミセス・マーフィーが主要な役割ですが、コーギーのタッカーも活躍します。
散歩をこよなく愛する猫

主人公: バーニー・リトル(元刑事でバツイチの私立探偵)
チェット(バーニーの相棒。名犬)
場所:  USA、ラスヴェガス周辺の町
グルメ: なし
動物:  イヌ:チェット
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(あなたは誰?)

あなたは誰? (ちくま文庫)
ヘレン・マクロイ
筑摩書房


Who's Calling? (Dr Basil Willing) (English Edition)
Helen McCloy
The Murder Room

読むと、自分でもわからない。

(ヘレン・マクロイ著)

精神科医の卵のアーチーがナイトクラブの歌手フリーダと婚約し、母にフリーダを引きあわせようとしたとき、不思議な現象が始まった。何者かがフリーダに行くなという電話をかけてきたのだ。フリーダの訪問を知っているのは数人の知合いだけのはず。警告を無視してワシントンの近くのウィロウ・スプリングを訪れたフリーダにまたしても何者かによる破壊行為が起こる。請われて事件を調査し始めたベイジル・ウィリング博士、精神科医にして探偵、の目の前でついに殺人が起こる。ベイジル・ウィリング博士は一連の現象はポルターガイストで説明できるというのだが、犯人の正体はなかなかわからず事件解決は困難をきわめる。

1942年作、ベイジル・ウィリング博士が探偵役のシリーズです。期待を裏切らず夜更かし必至の作品です。容疑者はほんの数人なのになかなか犯人にたどりつかないという最後まで楽しませてくれるミステリです。この頃はこういうミステリが少ないなぁ、と思っていたら巻末の訳者(渕上痩平氏)の解説によると、米国ではすっかりコージーミステリばやりで本格派のミステリは読まれなくなってしまっているとのこと。エラリー・クイーンの名さえもはや忘れ去られていると聞くことになるとは。なんと恐ろしい。ペリー・メイスンのシリーズが書店の棚から消えつつあるなどとあってはならないことが起こっているようです。しかし、まだイギリスのミステリ界では本格謎解きが健在だそうでこれからもそうあってほしいものです。日本ではまだまだ本格ミステリファンが多いですね。
 まだ翻訳されていない作品があるようでこれから日本語訳がでるのを大変期待しています。

■既刊
 どれも読みながら息をつめてしまいそうなものばかりです。

幽霊の2/3
殺す者と殺される者 ← ベイジル・ウィリング博士のシリーズではない
暗い鏡の中に
小鬼の市

主人公: ベイジル・ウィリング(精神科医)
場所:  USA、ウィロウ・スプリング
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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