ワニと読むミステリ(やさしい小さな手)

読むと、マットの人生もいろいろでした。

(ローレンス・ブロック著)
 短篇集です。14篇。
 スポーツを題材にしたものが多いです。野球、テニス、ゴルフ、バスケットボール、ボクシング、ビリヤード。「ボールを打って、フレッドを引きずって」は、まだ事件の途中で終わってしまうので、そこから先を想像すると余計に怖いですね。なんだかぞっとして。
 「三人まとめてサイドポケットに」は、いったいどちらが仕組んだことなのかわからなくなります。ここまでいくことはなくても、現実にこのように仕組んで仕組まれることはたくさんあるんだろうなと思ってしまいました。
 短篇は、世の中の出来事のある瞬間をぎゅっと押し詰めたようなところがありますね。きっと周りを見回せば、登場人物の名前や職業が違うだけでどこにでもあるのかもしれません。
 「ノックしないで」はちょっと甘ったるくて願い下げ。
 最後の4篇は、マット・スカダーものです。
 マットがまだ警官時代で家庭がある時、警官をやめて一人暮らしをしておりアルコール中毒の治療中、エレインと住み始めたころ、と、マット・スカダーの人生が早回しで見られます。

 マット・スカダーもの: 元警官で無免許の探偵
    過去からの弔鐘
    獣たちの墓
    死者の長い列

怪盗タナーもの: タナーは眠らない
    怪盗タナーは眠らない
    タナーと謎のナチ老人

泥棒ロ-デンバーもの: 泥棒で古書店経営
    泥棒は深夜に徘徊する

主人公: いろいろ
場所:  いろいろ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小


現代短篇の名手たち7 やさしい小さな手(ハヤカワ・ミステリ文庫)
ローレンス・ブロック
早川書房

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ワニと読むミステリ(夜の冒険)

読むと、なぞはいつでもそこにあります。

(エドワード・D・ホック著)
 短篇集です。しかしおなじみのサム・ホーソーン医師や怪盗ニックは登場しません。20篇のノン・シリーズものです。ホックのファンとしてはノン・シリーズのミステリもまた楽し、といったところでしょうか。
 「影の映画祭」。映画祭の最中に各国のスパイが技術を盗もうと暗躍する話ですが、007の中の1挿話として出てきそうな話です。ちょっとドキドキ感があって、先を早く読みたくなりますね。
 「空っぽの動物園」は、ちょっと怖い。以前は人が多く集まっていたのに今は閉鎖され誰もいなくなったところというのはなぜあんなにぞぞとするのでしょうね。何かがその場所に記憶されているのでしょうか。
 「大物中の大物」は、ぐるぐると回り続けるような話で、因果はめぐるを解説したような感じでしょうか。

 本の解説から借りると、エドワード・D・ホックは2008年1月17日にニューヨーク州ロチェスターの自宅で心臓発作のために亡くなるまで、950篇以上の短編小説を発表したそうです。
 シリーズ・キャラクターでいうと、怪盗ニック・ヴェルヴェット、サム・ホーソーン医師、オカルト探偵サイモン・アークあたりはおなじみですが、そのほかにも、ジュールズ・レオポルド警部、私立探偵アル・ダーラン、暗号解読専門家ジェフリー・ランド、西部探偵ベン・スノウなどあるようです。その他シリーズ・キャラクターでない短篇も多数あり、まだ日本語訳になっていないものがたくさんあるようなので、まだこれからもエドワード・D・ホックのミステリを期待することができるかもしれません。
 ぜひとも翻訳お願いしたいです。
 
 サム・ホーソーン医師のシリーズ: サムの生活の変化を追うのも楽しいです
    サム・ホーソーンの事件簿IV
    サム・ホーソーンの事件簿V
    サム・ホーソーンの事件簿 VI

 オカルト探偵サイモン・アークのシリーズ: 超常現象にあふれています
    サイモン・アークの事件簿I
 
主人公: いろいろ
場所:  いろいろ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中



現代短篇の名手たち8 夜の冒険 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
エドワード・D・ホック
早川書房

ノン・シリーズものです
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ワニと読むミステリ(勝手に来やがれ)

読むと、組合せの問題です。

(ジャネット・イヴァノヴィッチ著)
 バウンティ・ハンターのステファニー・プラムものです。
 今回はバレンタイン・デーにかかわるドタバタ騒ぎで、ちょっと番外編です。ジョー・モレリもレンジャーもあまり顔を見せず、代わりに超能力があるらしいディーゼルと組んで数人の男女のお悩み解決します。
 あとがきもいれて250ページくらいなので、気楽に読みましょう。
 自分の恋人問題も満足に整理できないのに、はたしてステファニーはみんなに幸せなバレンタイン・デーを迎えさせることができるのでしょうか。
 お悩み相談はいろいろですが、全然女性としゃべれないのに肉のことだったら雄弁になる肉屋さんがワニは気に入りました。
 相談者の中には、ステファニーの姉ヴァレリーの婚約者アルバートも含まれています。結婚式のことを考えると気絶してしまうのですね。それでいまだにヴァレリーとアルバートは結婚式を挙げることができません。2人を結婚させようというステファニーの計略はうまくいくでしょうか。
 動物のこととなったらデートの途中でも病院に帰ってしまう獣医さん。
 夫のいびきがうるさくて眠れないのにいびきをかくことを認めようとしない夫、この夫婦ははたして解決策を思いつくのでしょうか。
 
主人公: ステファニー・プラム(バウンティ・ハンター)
場所:  USA、ニュージャージー州トレントン
グルメ: なし
動物:  ハムスター(レックス)
犬(ボブ)
ユーモア: 大

勝手に来やがれ (集英社文庫)
ジャネット イヴァノヴィッチ
集英社

ステファニー・プラムのファンなら必須で読むべし
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ワニと読むミステリ(友だち、恋人、チョコレート)

読むと、記憶を詳細に特定するのは容易ではありません

(アレグザンダー・マコール・スミス著)
 哲学者イザベルのシリーズ2作目です。
 事件なのか出来事なのか、とても静かに語られていくので、重要さがわからなくなってしまいます。
 イザベルは相変わらず〈応用倫理学レビュー〉誌の編集長で、送られてくる論文に目を通すのに忙しいです。
 姪のキャットはデリカテッセンの経営に忙しく、その店で働く寡黙な青年エディはちょっとだけ打ち解けてきたような兆しがあります。
 キャットの元恋人ジェイミーに恋人ができたような気配があり、ひそかに恋心のあるイザベルはひどく打ちのめされてしまいます。15歳以上年下ってところがどうしても乗り越えられないようです。ジェイミーが本当はどう思っているのか、今後明かされていくのか気になります。
 今回のテーマは、細胞記憶。
 キャットが留守の間にデリカテッセンを手伝っていたイザベルは、心臓移植を受けたという男性と知り合い、その男性から奇妙な体験を聞かされることになります。普通なら相席した人とのちょっとおかしな話ということで片付けられてしまうのですが、そこは不思議に思ったら追求せずにはおけないイザベルですから、男性との話からドナーをつきとめようといろいろ調べ始めます。
 自分の記憶でないものが、頭の中で映像として映し出されるというのはどういう気持ちなんでしょう。奇妙であろうとは想像つきますが、どう奇妙なのか、そしてどう自分がそれに反応するのか、考えてもわからないテーマですね。こういうことがあるようだという報道は見ていますが、本当にそうなんでしょうか。まだきっと解明されていないのでしょう。
 結末はやっぱりちょっと涙かもしれませんよ。

 ■マ・ラモツエ
 マ・ラモツエはボツワナ共和国の女探偵、〈No.1レディーズ探偵社〉を経営しています。
 エディンバラが舞台のイザベルのシリーズとはずいぶん環境が違いますが、こちらは大自然のなかにある気分がして夕日が心地よいです。
 アレグザンダー・マコール・スミスは多作な作家だそうで、このほかにも子ども本も書いていて、イザベルとマ・ラモツエのシリーズも未訳がまだたくさんあるようなので、まだまだ楽しませてもらえそうです。

主人公: イザベル・ダルハウジー(〈応用倫理学レビュー〉誌の編集長)
場所:  イギリス、エディンバラ
グルメ: なし
動物:  キツネ: ブラザー・フォックス
ユーモア: 中


友だち、恋人、チョコレート (創元推理文庫)
アレグザンダー・マコール・スミス
東京創元社

ほのかなミステリを読む
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ワニと読むミステリ(ホット・ロック)

読むと、どんなに不可能にみえることでも、必ずやり方がある。

(D・E・ウェストレイク著)
 ジョン・ドートマンダーものの輝かしい第1作目です。
 もうこれは古典ですね。原作は1970年5月に刊行されています。ここからドートマンダーものが始まったのかと思うと、ちょっと感動します。
 古いものもまた読んでみると時代の違いもあり、ミステリの別の楽しみもあります。
 ドートマンダーが出所して道を歩いていると、そこへいつものように盗んだ車(医者の)キャディラックでアンディ・ケルプが迎えに来ています。ちょっとした行き違いからドートマンダーはこのキャディラックからなんらかの理由で襲われるのではないかと逃げ出しますが、アンディ・ケルプとのかかわりは最初からこうだったのですね。
 スタン・マーチは運転手役で、のちに運転手役になるマーチの母はちょっとだけ顔を出しますが、これから運転手として泥棒にかかわってくるようになるとわかって読むとこの登場の仕方も実にうまくできていると感心してしまいます。
 まだ主要メンバーは、ドートマンダー、アンディ・ケルプ、スタン・マーチの3人です。ドートマンダーの女友達メイはまだ登場しません。タイニー・バルチャーもまだ影も見えません。バー「OJ・バー&グリル」はやっぱり彼らのたまり場で、ロロは酒の好みで客を判別しています。
 彼らの最初の仕事は、コロシアムに展示されているエメラルドを盗むこと。アフリカのある国の国連大使の依頼です。いったんエメラルドを盗み出すことに成功はしたのですが、その後のまたこのエメラルドを追いかけることになり、だんだんとドートマンダーたちの仕事も大掛かりになってきます。このあたりが妙ですね。
 せっかく盗み出したエメラルドも、弁護士に出し抜かれ、今度は銀行強盗をしなければ取り戻せないかもというところまで追いつめられたドートマンダーの奇策がさえます。
 「うまい話があるんだ」のアンディ・ケルプの話に乗せられて、これからもドートマンダーたちはずっとろくでもない仕事にかかわっていくことになるのですね。

 ■映画
 このホット・ロックが映画化された時のドートマンダー役は、ロバート・レッドフォード。最後のところは原作と違っていますが、とても印象的ですね。
 その他の作品のドートマンダー役は、ジョージ・C・スコット(「強盗プロフェッショナル」(映画:悪の天才たち))、ポール・ルマット(「ジミー・ザ・キッド(日本未公開)」)、クリストファー・ランバート(「逃げ出した秘宝」(映画:ホワイ・ミー))だそうですが、ワニは見ていません。誰が一番ドートマンダーのイメージに近いでしょうか。見比べるのも面白いかも。

主人公: ジョン・ドートマンダー(泥棒)
場所:  USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 大


ホット・ロック (角川文庫)
ドナルド・E. ウエストレイク
角川書店

ミステリの古典を読みましょう
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