ワニと読むミステリ(エッジウェア卿の死)

エッジウェア卿の死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー
早川書房


The Complete Christie: An Agatha Christie Encyclopedia
Agatha Christie
Pocket


読むと、似せても現れます。
 
(アガサ・クリスティ著)
 エッジウェア卿の夫人は美貌の舞台女優ジェーン・ウィルキンスンです。二人は別居状態でジェーンは離婚を望んでいましたが、なかなか思うように進まず、ポアロに仲介を依頼します。ある日、エッジウェア卿が書斎で殺されているのが発見されます。第一の容疑者はジェーンですが、彼女には晩餐会に出席しておりたくさんの人がそれを見ているという鉄壁のアリバイがあります。それに離婚も整いそうになっていたので殺す理由が見つかりません。では財産狙いの甥の仕業なのか。エッジウェア卿に会いに来た人は誰なのか。
動機も機会もある人物はなかなか見つからず、また殺人の手口もはっきりせず、ジャップ警部の捜査は難航します。
さすがにクリスティですね。アリバイ崩しにはドキドキするような緊張感があります。徐々にいろいろな出来事が組み合わさって、犯罪の絵を完成させていきます。
 随所に手がかりがありますが、あまりにも巧妙に提示されているのであっさりと見逃してしまいます。ポアロの説明で初めてそれと気づくのはくやしいような気もしますが、それよりも実によくできたミステリと感服する気持ちのほうが強いです。
 クリスティならば何回読んでも楽しめます。

主人公: エルキュール・ポワロ(私立探偵)
場所:  イギリス、ロンドン
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(蘭追い人、幻の貴婦人をさがす)

蘭追い人、幻の貴婦人をさがす (ヴィレッジブックス)
ミシェル・ワン
ヴィレッジブックス


Deadly Slipper: A Novel of Death in the Dordogne
Michelle Wan
Doubleday


読むと、美しい蘭には昆虫をだます巧妙なテクニックがあります。
 
(ミシェル・ワン著)
 蘭が重要な手がかりになるミステリです。
 マーラはインテリア・デザイナーで19年間行方不明になっている双子の姉ベディを捜しています。最後に目撃されたのはフランスの南西部ドルドーニュで、マーラはそこに移住して姉を捜す決心をします。手がかりは姉の残したカメラに写っていた蘭。蘭の好きだったベディはいくつかの蘭を写していましたが、その花の跡をたどればベディにいきつくのではと、蘭愛好家で造園業のジュリアンに助けを求めます。失踪人の捜査にはちょっと気の進まないジュリアンですが、写真の中の一枚にとても珍しい蘭があるのを発見し、それを見つけようとマーラに協力することにします。蘭を求めて山の中を右往左往するマーラとジュリアンですが、二人に危機が迫ります。
 とにかく蘭のウンチク満載です。種類によって花の咲く時期、育つ環境などさまざまに違うので、その蘭にあった生育環境を求めて森を歩くのですが、道もないところなので迷ってしまいますね。
 マーラの飼い犬ジャズ、ジュリアンの近所の犬エディスも、なかなか重要な役割を果たします。
 ドルドーニュ地方の人たちのみなユニークで、そういう村の人たちの行動も楽しく読めます。手がかりを発見したところで殺されそうになる郵便配達人。おいしい料理が自慢のビストロの夫婦。一緒にいるのが長くなると我慢できなくなってケンカして別れてはまたよりを戻す蘭愛好家とその恋人。壮大なお城に住みながらも破産寸前で遠くで働く息子だけが頼りという少々精神に異常をきたしていそうな領主夫妻。その近くに住み、異様な外見と行動で恐れられている母と息子。
 犯人はその存在が知れたところで、あー、これが犯人ねとわかってしまうのはなぜでしょうか。
 蘭の花の香りが漂ってきそうなミステリです。

■造園業つながり
 ローズマリー・ハリス著の造園業を営むポーラ・ホリデーが主人公のミステリです。庭園修復作業中に赤ん坊のミイラを発見します。
事件現場は花ざかり

 あまり造園関係のミステリは読んでないですね。

主人公: マーラ・ダン(カナダ人のインテリア・デザイナー)
ジュリアン・ウッド(蘭愛好家、造園業を営むイギリス人)
場所:  フランス、ドルドーニュ県
グルメ: なし
動物:  イヌ:ジャズ(マーラの飼い犬)
エディス(近所の農場の飼い犬)
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(ウェディングケーキにご用心)

ウェディングケーキにご用心 カップケーキ探偵1 (RHブックス・プラス)
ジェン・マッキンリー
武田ランダムハウスジャパン


Sprinkle with Murder (Cupcake Bakery Mystery)
Jenn McKinlay
Berkley


読むと、恨みを出す人隠す人。
 
(ジェン・マッキンリー著)
 カップケーキ探偵のシリーズ第1弾です。
 メルとアンジーは〈フェアリーテイル・カップケーキ〉の共同経営者。テイトはその出資者で、3人は幼なじみで親友です。店を開いたばかりですが、商売敵の〈コンフェクションズ〉のオーナーがさかんに様子を探りにきています。一日に何度も店の前を通るので、メルもアンジーもあきれ顔。
 テイトがファッションデザイナーのクリスティーと結婚することになり、メルたちはウェディングケーキの作成を頼まれます。二人ともクリスティーを好きになれず、結婚に賛成しかねていますが、頼まれればしかたなくウェディングカップケーキのデザインを考えています。
 試作のカップケーキができあがり、感想を聞こうとクリスティーを訪ねていったところで、メルは死体と遭遇してしまいます。メルは容疑者にされ、テイトも疑われ、容疑を晴らそうとメルとアンジーは協力して聞き込みを始めますが、被害者に恨みを持つ人が多すぎてなかなか犯人を特定することができません。
 
 メル、アンジー、テイトの3人の親友が助けあいながら犯人捜しをするというのはなかなかおもしろいです。3人は古い映画が好きで映画の中のセリフをたくさん引用していますが、みなさんどのくらいわかるでしょうか。
 カップケーキを積み上げてウェディングケーキにするのが今はやっているらしいですが、いったいどんな感じにできあがるのでしょうか。
 巻末にカップケーキのレシピがあります。いろいろなフロスティングがあっておいしそうですが、カロリーも高そうですね。
 自分の好きなカップケーキを食べながら気楽に読むのがよいでしょう。

■お菓子の探偵
 最初に思い出してしまうのは、ジョアン・フルーク作〈クッキー・ジャー〉のハンナ・スウェンセンのシリーズですね。こちらはクッキーのお店です。
 ファッジ・カップケーキは怒っている
 その他、シリーズはすでに11作出ています。

こちらは下宿屋のシリーズですが、いつもお菓子コンテストで競争しています。リヴィア・J・ウォッシュバーン作です。
かぼちゃケーキを切る前に

主人公: メラニー(メル)・クーパー(〈フェアリーテイル・カップケーキ〉の経営者)
場所:  USA、アリゾナ州スコッツデール旧市街
グルメ: カップケーキ
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(感謝祭の勇敢な七面鳥)

感謝祭の勇敢な七面鳥 (創元推理文庫)
レスリー・メイヤー
東京創元社


Turkey Day Murder (Lucy Stone Mysteries)
Leslie Meier
Kensington Pub Corp (Mm)


読むと、利害がからむとねぇ。
 
(レスリー・メイヤー著)
 ルーシー・ストーンのシリーズ第7弾だそうです。もう7冊目とは早いものですね。
今回は感謝祭の季節です。
大学に入学して家を離れている長男のトビーが、感謝祭に帰ってくるというので(しかも友人を連れて)ルーシーはその準備で大忙しです。週刊新聞『ペニーセイヴァー』の記者としての仕事もあり、町の行政委員会の聴聞会にも取材に行かないといけません。ニワトリを大量殺戮したとして、カート・ノーランの飼い犬カジョーが裁かれようとしています。いつになく厳しい内容になりそうな聴聞会の成り行きは、飼い主のカートが先住民であることが関係しているようで、ルーシーは義憤にかられます。行政委員会の会員についてもいままで書かないでいた実態をついに記事にすることを決意します。これでルーシーの町での立場はあまりよくないことになりそうです。
先住民の部族として認定を受けようとしているメティニカット族の人々は、認定だけにとどまらず町にカジノを建設しようとしています。しかし建設をめぐっては部族の間でも賛否が分かれるようです。
だんだんと意見の衝突が激しくなってきたところで、反対意見を表明していた人物が殺されます。
静かな町だったティンカーズ・コーヴにカジノは建設されるのでしょうか。
今回は感謝祭の料理が満載です。伝統的な感謝祭のメニューは、なかなかおいしそうです。
長男トビーの帰省は、大学1年生の男の子ならこんなものかなと、思い当たる人も多いかもしれません。
空の巣症候群のルーシーはイヌを飼うことになってしまいますが、なかなか個性的なイヌのようで、これからの活躍が期待できるかもしれません。
アメリカの先住民族のあり方とか、訳者あとがきも非常に参考になります。
小さな町の感謝祭の過ごし方が描かれていて、アメリカの伝統を垣間見ることができます。
 
■既刊
 もう6作品が翻訳されています。ルーシーの家族の変遷が見えます。

 メールオーダーはできません ← 通販会社の経営者が自殺します
トウシューズはピンクだけ ← バレエの発表会です
ハロウィーンに完璧なカボチャ ← ルーシーの夫が修復した屋敷が全焼し、そこから死体が発見されます
授業の開始に爆弾予告 ← ルーシーの娘が通う学校に爆弾予告があります
バレンタインは雪あそび ← 図書館の理事になったルーシーはそこで死体を発見してしまいます
史上最悪のクリスマスクッキー交換会 ← ルーシーの家で開くことになったクリスマスクッキー交換会はさんざんな結果に終わります

 ずいぶんと事件がありましたね。
■主婦探偵つながり
 主婦探偵を考えてみると、ジル・チャーチルのジェーン・ジェフリーが近いかも。
 飛ぶのがフライ
カオスの商人
眺めのいいヘマ
こちらも長く続いてます。

アイアレット・ウォルドマンのジュリエット・アップルバームも子育て中。
マタニティ・ママは名探偵 
そういえばこのシリーズはどうなっているのでしょう。その後の翻訳がでていませんね。

主人公: ルーシー・ストーン(ミステリ好きの主婦)
場所:  USA、メイン州ティンカーズコーヴ
グルメ: 感謝祭の料理
動物:  イヌ:クードー(またはカジョー)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(不変の神の事件)

不変の神の事件 (創元推理文庫)
ルーファス・キング
東京創元社


読むと、関係者ならば知っている。
 
(ルーファス・キング著)
 1936年に刊行されたミステリです。
 ジェニーは恐喝にたえられなくなり自殺してしまいます。翌年、ジェニーの夫や家族たちは恐喝者と接触できると、話し合い、もみあっているうちに恐喝者が死んでしまいます。激しく身をうちつけたときに心臓発作を起こしたらしい。彼らは警察の手を逃れようと死体を遠くまで運んで行きますが、その途中に見とがめられ、すぐに警察に通報されてしまいます。さまざまに考えて逮捕を逃れようとしますが、警察の追及が迫ってきます。しかし、捜査の過程で死因が当初予想されたものでないことがわかると、事件は思わぬ展開を見せていきます。
大がかりな逃走劇の最中にまた殺人が起きますが、自分たちの中に殺人者がいるのかと、家族や友人を疑いの目で見るようになり、よりいっそう緊張が増してきます。
 必死に逃げるジェニーの家族たち、それをどこまでも追っていくヴァルクール警部補。
 最後はヴァルクール警部補の見事な推理が冴えます。
 読み終わると、なるほどーとうなります。
 いろいろと隠ぺい工作をして、自分たちは大変にうまくやっていると思っているところがおかしみを誘います。人相を隠そうとして、絶対これならバレないと自信を持って変装しているのですが、やり過ぎて人の記憶にしっかり残ってしまったり、誰にも聞かれていないと思った会話が筒抜けだったり、どこかであったような感じで笑ってしまいます。
 逃走の間に、ジェニーの夫、家族、友人たちのこれまで見えなかった性格や感情が現れてきて、ちょっと恐ろしかったりほろ苦かったり、だんだんと登場人物に親しみを覚えてきます。このまま逃走が成功してほしいような、犯罪者として捕まってほしいような、引き裂かれた感情に悩まされ、先をさきをと読んでしまいます。
 こういうミステリがおもしろいですね。
 ルーファス・キングの作品がもっとたくさん出版されることを望みます。これまで読めなかったなんて、なんともったいないことでしょう。
 でも、これからたくさん読めるなら、大きな楽しみが残っていたということでそれは大変なよろこびです。
 
■1930年代のミステリ
 1930年代に刊行されたミステリ、または1930年代に設定されたミステリというのは結構たくさんありますね。舞台設定に良い時代なのでしょうか。
 予期せぬ夜 ← エリザベス・デイリイ。避暑地で莫大な財産を相続した青年が死体で発見されます
 手袋の中の手 ← レックス・スタウト。女性探偵ドル・ボナーです。
 苦いオードブル ← レックス・スタウト。ドル・ボナーが探偵事務所を経営しています。
 ヒンデンブルク号の殺人 ← マックス・アラン・コリンズ。ドイツの飛行船ヒンデンブルク号で殺人が起こります。
 ロジャー・マーガトロイドのしわざ ← ギルバート・アデア。密室殺人です。
 ライノクス殺人事件 ← フィリップ・マクドナルド。ゲスリン大佐のシリーズです。
騙し絵 ← マルセル・F・ラントーム。結婚披露の日にダイヤモンドが消えます。
 
 まだいろいろありますね。

主人公: ヴァルクール(警部補)
場所:  USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(今をたよりに)

今をたよりに (創元推理文庫)
ジル・チャーチル
東京創元社 ←Amazonで購入できます


Who's Sorry Now?: A Grace & Favor Mystery (Grace & Favor Mysteries)
Jill Churchill ←Amazonで購入できます
Avon


読むと、誰かが見ている。
 
(ジル・チャーチル著)
 ブルースター兄妹のシリーズももう第6弾だそうです。いつのまにかこんなに話が進んでいたのですね。
 今回は、1933年4月から5月にかけての事件です。
 ブルースター兄妹の住むグレイス&フェイヴァーの屋敷では、植え込みを整理することになり、何でも屋のハービンジャー兄弟に作業を頼むことになります。兄弟が買ったばかりのチェーンソーで伐採し、木を引っこ抜くと、地面の中から白骨死体が発見されます。病理学者と人類学者が呼ばれ、いつごろの骨なのかなど調査が始まります。
 町には、ドイツからの引揚げ者のクルツ氏が仕立屋を開業しますが、店を開いた直後に赤ペンキで鉤十字が描かれたり、店に放火する試みがなされたりと、不穏な動きがあります。
 ロバート(ブルースター兄)は、ふとしたきっかけから町の郵便事情の改善に乗り出します。町議会の承認を得るために、郵便仕分けの作業場所の設計書を作ったり、見積りをとったりと、奮闘しています。
 この計画が実現したら仕分けの作業を請け負ってもらおうと思っていた駅のポーター、エドウィンが殺されてしまいます。善良で人畜無害のエドウィンがなぜ殺されなければならないのか。まったく殺人の動機がみつからず、警察署長のウォーカーは捜査に行き詰ってしまいます。
 今回はロバートの活躍が中心で、妹のリリーは本を読んでいることが多いです。
 ちょうどドイツではヒトラーが台頭し、外国人の出国が規制されるころで、そういうことが及ぼす影響もクルツ氏をめぐる事件で現されます。
 グレイス&フェイヴァーの下宿人たちは相変わらずですが、新たな下宿人が加わります。警察署長のウォーカーです。大きな屋敷なので、まだ空き部屋はありそうですね。
 それほどの謎解きはないので、1933年ころのアメリカの街ヴォールブルグの人たちの生活がどういうものだったのか、楽しみましょう。
 グレイス&フェイヴァーの屋敷からは兄妹の大伯父が隠していたものが見つかります。まだこの屋敷には謎がありそうな気配ですね。
 
■シリーズのその他
 グレイス&フェイヴァーのシリーズは、あと5冊あります。
   風の向くまま
   夜の静寂に
闇を見つめて
愛は売るもの
君を想いて

 ジル・チャーチルのもう一つのシリーズは、主婦探偵ジェーン・ジェフリーが探偵役です。
   忘れじの包丁
地上より賭場に
豚たちの沈黙
エンドウと平和
   飛ぶのがフライ
カオスの商人
眺めのいいヘマ

主人公: リリー・ブルースター(妹)
ロバート・ブルースター(兄)
場所:  USA、ニューヨーク州ヴォールブルグ
グルメ: なし
動物:  イヌ:アガサ(兄妹の飼い犬)
ユーモア: 中
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