ワニと読むミステリ(サイズ12はでぶじゃない )

読むと、執着は怖い。
 
(メグ・キャボット著)
 ニューヨーク大学で起こる連続殺人事件、というとひどく難しい内容のように思われますが、いたって等身大の共感を呼ぶような出来事です。
 ヘザー・ウェルズは元ポップスターですが、母親に全財産を持ち逃げされ、元婚約者には裏切られ、住む場所も無くなってしまったところで、元婚約者の兄で私立探偵のクーパーの家に居候させてもらっています。やっと手にした職は、ニューヨーク大学の学生寮の副寮母。6か月の仮採用期間を無事に切り抜ければ、正式に副寮母として雇用されいくつかの講座を取るのも夢じゃない。それなのに学生寮に住むいたっておとなしい女子学生がエレベーターから転落死して大学は大騒ぎです。エレベーターサーフィンをしていてあやまって落ちたとの警察の見解に対してヘザーは疑問を持ちます。あんなにおとなしい女の子がエレベーターサーフィンなんかする?それも誰も観客が見てないところで?
 さらに別のおとなしい女子学生がまたもやエレベーターから転落死して、ヘザーは警察のやり方に納得がいかないところから独自に調べ始めます。
 大学の様子が楽しく描かれていて、その楽しみもあります。さばけたところを見せたい学長が学生寮に住んで、およそ学長らしくない格好(白ズボン、金色のニューヨーク大学Tシャツ、アディダスの靴)で歩き回り、学長夫人は朝っぱら酔っぱらうアル中です。ヘザーの上司の寮母のアシスタントをしている学生のサラは社会学を取っていて、無遠慮にヘザーの心理分析をしてはいらぬアドバイスをしてヘザーを悩ませます。
 元婚約者のポップスターは、他の女性との婚約発表の直後にヘザーを訪ねてきて、よりを戻したいような話をするし、ヘザーの憧れのクーパーはまったく関心を払ってくれないようだし、服のサイズは12になってしまったし、ヘザーの周辺の悩みもいろいろあります。
  それにしても、エレベーターサーフィンなんてほんとにやっているのでしょうか。動いているエレベーターの屋根の上に上がって、隣のエレベーターに飛び移るとか、危険すぎますね。
 元ポップスターの業界の話と大学構内の話と、楽しみながら読みましょう。コージーミステリですもの。

主人公: ヘザー・ウェルズ(ニューヨーク大学の学生寮の副寮母。元ポップ歌手)
場所:  USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物:  イヌ:ルーシー(ヘザーの飼い犬。雑種犬)
ユーモア: 中

サイズ12はでぶじゃない (創元推理文庫)
メグ・キャボット
東京創元社

ダイエット宣言する方に
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(休日には向かないクラブ・ケーキ )

読むと、滞在にも隠れた理由があります。
 
(リヴィア・J・ウォッシュバーン著)
 フィリスの下宿シリーズも、もう4冊目ですね。今回もおいしそうなお菓子がたくさんでてきます。巻末にレシピもあるのでお料理好きの人はなお楽しめます。
 いつも通りお菓子コンテストもあります。
 フィリスの営む下宿は、テキサス州ウェザーフォードですが、今回はフィリスのいとこドロシーに頼まれてテキサス州フルトンのB&Bの留守を預かることになりました。ドロシーの初孫に問題が生じ、ドロシーは夫とともに娘の住むダラスへ急きょ行くことになったのです。
 フィリスとその下宿人たちは休暇気分でB&Bに滞在しています。フィリスだけでなく、キャロリン、イヴ、サムと全員で来ているのが良いですね。
 みんなでのんびりと浜辺の生活を楽しもうとしたのに、桟橋でB&Bの宿泊者が死んでいるのをフィリスたちが発見してしまいます。しかも死因はB&Bの朝食のクラブ・ケーキに入っていた毒らしい。容疑は料理人やフィリスたちにも及んで、さらに駆けつけた遺族は故人の死を悲しむよりなんとかしてB&Bから謝罪金を取ろうとするような不愉快極まりない人たちです。故人の経営する会社を巡って親族間に軋轢があったようでもあり、容疑者は増える一方です。しかし、どうして殺されないといけなかったのか、殺人の動機がどうもよくわかりません。
 海祭りと“ジャスト・デザート”というお菓子コンテストの様子も事件解決しながら楽しみましょう。
 
 フィリスはクッキー部門にエントリーしますが、賞をとれるでしょうか。好敵手のキャロリンは今回もフィリスと上回るのでしょうか。お菓子対決は今回はどちらに軍配が上がるのでしょう。
二人の出品したお菓子のレシピも載っています。
 
■既刊
 フィリスの下宿シリーズはすでに4冊目です。

 桃のデザートには隠し味 ← ピーチ・フェスティバルで事件が起こります。
 かぼちゃケーキを切る前に ← チャリティー・オークションで遺体が発見されます。
 クッキー交換会の隣人たち ← クリスマスのクッキー交換会の最中に殺人が起こります。

いずれもレシピ付きです。

主人公: フィリス・ニューサム(もと歴史科教師。未亡人。下宿を営むオーナー)
場所:  USA、テキサス州フルトン
グルメ: お菓子料理
動物:  なし
ユーモア: 中

休日には向かないクラブ・ケーキ (お料理名人の事件簿4) (RHブックス・プラス)
リヴィア J ウォッシュバーン
武田ランダムハウスジャパン

お料理コンテストへの参加を考えている方に
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(上手に人を殺すには )

読むと、壁に耳あり、油断は禁物。
 
(マーガレット・デュマス著)
 チャーリー&ジャック・フェアファックス夫妻のシリーズ2冊目です。
 理想の新居を見つけたチャーリーですが、インテリアをどうするか決めることができず、いまだ新居にあるのは大きなベッドだけ。訪ねてきた友人たちは座るところもありません。
 ジャックとその友人で起こしたコンピューター・セキュリティ会社の取引先であるザグダンのCEOから持ちかけられた話は、婚約者だった会社の重役が殺されたので犯人捜しに協力してほしいというもの。深夜に訪れたスポーツクラブのスチームバスで死んでいるのが発見されますが、警察は事故として片付けてしまいました。
 死んだのはチャーリーの友人ブレンダの元同級生とわかると、チャーリーたちは総力を結集して捜査することにします。もちろん旦那様のジャックには内緒にして、といってもすぐにばれてしまいますが。
 会社内部の犯行とみたチャーリーたちは潜入捜査を敢行します。チャーリーたちがコンピューター・コンサルタントのふりをして内部事情を聞き出そうとするところは、設定にかなり無理があるのは承知で笑えますね。劇団レップの芸術監督は大張りきりですよ、なにしろ実際に演技するわけですから。
 チャーリーの叔父のハリーも投資家という触れ込みで潜入捜査に加担し、ハリーがどうしても連れて行けと言い張ったボディガードのフランクは意外にもオフィス環境の設定にたけていて、無言でチャーリーたちのために働いてくれます。ワニは、このフランクがちょっと気にいってます。
 秘密にしていたはずの婚約は、社内では多くの人が知っていたりして、ゴシップの広がりはチャーリーたちの予想を超えていますが、まぁ、こんなものでしょう。
 車で激突されそうになったり、銃撃戦になったり、またチャーリーたちは殺されそうになりますが、なんとか生き延びて犯人逮捕にこぎつけます。
 チャーリーの主宰する劇団レップの新シナリオ発掘の進行もなかなか笑えます。
 まぁ、あまりミステリとは考えずに、クッキーとコーヒー片手に軽い気持ちで読みましょう。

■既刊
 何か文句があるかしら
 これが1作目。
 電撃結婚した二人がサンフランシスコへ帰ってきてホテルのスイートで発見したのは全裸死体。
 知り合って、あっという間に結婚したのは良いけれど、旦那様にはなにやら怪しげな過去がありそうで。

主人公: チャーリー・フェアファックス(新妻)
場所:  カリフォルニア州サンフランシスコ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中

上手に人を殺すには (創元推理文庫)
マーガレット・デュマス
東京創元社

コージーミステリの好きな方へ
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(機械探偵クリク・ロボット)

読むと、推理は事実の積み重ね。
 
(カミ著)
 2つの中篇からなっています。「五つの館の謎」(1945年)と「パンテオンの誘拐事件」(1947年)。
 ジュール・アルキメデス博士は古代ギリシャの偉大なる発明家の直系の子孫です。その博士の発明したクリク・ロボットは、事件が起こると視覚・聴覚あらゆる機能を駆使してデータを集め、計算機としてそのデータを解析し、1つのメッセージとして口から吐き出します。でもそのメッセージは難解で理解するのは至難の業。
 読者は、目撃者から語られる事件の謎と、クリク・ロボットからのメッセージの解明と、2つの謎を追いかけることになります。これはなかなかです。
 クリク・ロボットとはいかなる外見か、本書から参照すると、“いっぽう、博士が発明したクリク・ロボットのほうは、四角い頭の片隅にちょこんとチロリアン・ハットをのせていて、動かない目でまっすぐ前をみつめている。(中略)身体はもちろん鋼鉄製だが、きちんと上までボタンをとめたチェックの上着に裾の広がったズボンをはいている。だが、背中にはいくつものボタンやハンドル、レバーがあるので、「人間のように見せてはいるが、やはり機械なのだ」と、見ている者の心に不思議な気持ちを起こさせた。”ということになります。
カミによる挿絵でご覧あれ。
この随所にはさまれている絵がまたおもしろいので、そちらも堪能しましょう。
とにかく読んでください。楽しめること請け合いです。
 
■著者紹介
 本の説明によると、カミの著者紹介は下記の通りです。 
 1884年ピレネー山脈の麓に生まれる。闘牛士を志すも断念し、パリに出て文筆で身を立て、フランスきってのユーモア作家となった。邦訳には『ルーフォック・オルメスの冒険』など。1958年死去
 (参照終わり)

 この『ルーフォック・オルメスの冒険』も読んでみたいですね。 

主人公: ジュール・アルキメデス(古代ギリシャの偉大なる発明家の直系の子孫)
場所:  フランス、パリ、その他
グルメ: なし
動物:  カササギ
ユーモア: 中


機械探偵クリク・ロボット〔ハヤカワ・ミステリ1837〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
カミ
早川書房

論理的に考える方に
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(レベル3)

読むと、それは現実なのか、ちょっと振り返ってみたくなる。
 
(ジャック・フィニイ著)
 ミステリというわけではありませんが、ワニのお気に入りの一冊なのでここに紹介します。
 11の短篇からなりますが、表題作の“レベル3”は秀逸です。この1篇だけでも読む価値は十分にあります。
 実はワニは、この“レベル3”を捜していたのです。ずいぶん前に読んで、もう題名も作者も忘れてしまい、覚えているのは粗筋だけ、でもどうしてももう一度読みたかったので、友人たちにことあるごとに聞いてみたのですが、誰も知らず、もう諦めかけていたときに偶然の出会いで見つけることができました。ワニ自身が通常SFを読まず、友人の中にもSF好きがいなかったために巡りあうことができなかったのですが、実際は大変有名な一篇で捜すところさえ押さえていれば容易に見つけることができたのでした。
 ある日、主人公はグランド・セントラル駅で迷ってしまい、あるはずのない地下3階に行き着きます。気がつくとそこは1890年代で、とても幸福な時代です。この時代に住みたくて現在に戻ってから準備をして地下3階への階段をもう一度捜すのですが、どうしても見つけることができません。この話を主人公は友人の精神科医にするのですが、彼は『それは白昼夢のなかで行われた願望達成心理』だと言い、つまり『不幸』なのだと。主人公はもう地下3階を見つけることをあきらめかけているのですが、ある時趣味で集めている古い切手収集品の中に見慣れない手紙を見つけます。
 異時空間を移動する話はこのほかにもあり、だんだんと奇妙な世界に入り込んでいく感じは、怖いのだけれどもある種の憧れがあり、そしてもしかしたら日常生活の中でも、知らないうちに空間を移動しているのではないかという不安のようなものを生じさせます。それはそれで少しもかまわないのかもしれません。
 もっとたくさんの人に読んでもらいたい本です。

主人公: 複数
場所:  いろいろ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小・中

レベル3 (異色作家短篇集)
ジャック フィニイ
早川書房

不思議の体験したい方
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(アマチュア手品師失踪事件)

読むと、犯罪現場の保存に注意しましょう。
 
(イアン・サンソム著)
 司書のイスラエルのシリーズ2冊目です。
 1作目で消えた蔵書をなんとか捜しあてたイスラエル青年は、移動図書館の司書として働きはじめました。タムドラムの町や人にもなじんできたところです。
 きょうは大切な日。イスラエルがはじめておこなう移動図書館の巡回展示会の初日です。展示予定の五枚組パネルは、百周年を迎える〈ディクソン&ピカリング〉百貨店の歴史がつづられています。イスラエル青年は、展示のために百貨店に行きますが、そこで発見したのは、荒らされた部屋と金庫から盗まれたお金、そして消えた百貨店経営者。たまたまそこへ居合わせて、なんの考えもなく現場に踏み込んで、ちょっと調べてしまったイスラエル青年は、警察に連行されると容疑者にされてしまいます。
 容疑をはらすべくイスラエル青年は、自分でこの事件を調べ始めますが。
 移動図書館は証拠物件として警察に押収されているので、イスラエルは大家のジョージーナから自転車を借りますがそれを教会の前に駐輪して盗まれてしまい、またタクシー運転手のテッドに助けを求めます。
 イスラエルのドジぶりにあきれながらもテッドはイスラエルの捜査に協力します。
 見当違いな仮説の連続ですが、ようやく事件の全容が見えてくるのですが、最後には結局裏をかかれてしまいます。ま、イスラエル青年だから仕方がないか。
 いままで鶏小屋に住んでいたイスラエルですが、母屋のほうに部屋がもらえることになります。少し住環境が進歩します。
 しかし、イスラエルの本の返却期限を守らない人への怒りは強いですね。
 イスラエルとタムドラムの住人たちとのとぼけた会話は相変わらずです。なかなか会話がかみ合いませんね。
 イスラエルの彼女(?)のグロリアがタムドラムを訪れることになっているのですが、はたしてこの計画はうまく運ぶのでしょうか。

■既刊
 イスラエル青年の移動図書館シリーズの1作目は、図書館の本がまるごと消失してしまうものです。
 司書としてタムドラムの町にやってきたばかりのイスラエルは、愛する本を捜して右往左往します。
 蔵書まるごと消失事件

主人公: イスラエル・アームストロング(移動図書館の司書)
場所:  アイルランド、タムドラム
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中

アマチュア手品師失踪事件 (移動図書館貸出記録2) (創元推理文庫)
イアン・サンソム
東京創元社

図書館の本の返却が遅くなりがちの方は特に
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(料理教室の探偵たち )

読むと、犯罪計画も長期におよびます。
 
(J・B・スタンリー著)
 〈デブ・ファイブ〉のシリーズもあっという間に3作目。みんな努力していますが、まだまだダイエットの必要がありそうです。
 でもダイエットもあんまり続けると嫌気がさしてくるので、今回はみんな息抜きのためにミラの主催するメキシコ料理教室に通うことになります。みんなおいしいものに目がありませんからね。
 そのお料理教室にやってきたのは、最近この街にやってきた美人の双子姉妹パーカーとキンズリー。ジェイムズもポカンと見とれてしまうくらいの美女・美女です。
 〈デブ・ファイブ〉のメンバーで美術教師リンディの通う学校の主宰するルーレイ洞窟の校外実習に付き添いが足りなくなり、ジェイムズたちもそれに協力することになります。無秩序な高校生たちの監督は憂鬱ですが、結束の固い〈デブ・ファイブ〉のメンバーはリンディの頼みを断ることはしません。しかし、その洞窟探検で付き添いで料理教室の生徒でもある1人が殺されてしまいます。
 もう何度も事件にかかわってきたジェイムズたちは、お料理教室のかたわら、捜査にも尽力します。
 しかし、〈デブ・ファイブ〉の結束にも危機が訪れています。ルーシーがミーティングへの参加を渋りがちになり、さらにジェイムズとのデートもどうもしっくりいかないようです。
 ルーシーに一目ぼれだったジェイムズは失意に包まれますが、そこへジェイムズに積極的にアプローチする女性が現れて、ジェイムズは悩んでしまいます。恋の行方も気になりますね。
 〈デブ・ファイブ〉のメンバーは自分たちで事件解決のための証拠固めをしようと無謀な計画を立てますが、犯人に出し抜かれあわやの危機に陥ります。けがをしないか心配ですね。

 2作目で活躍したウィリーも〈アイスクリームの店〉の店主で随所に顔を出します。〈デブ・ファイブ〉の準メンバーですね。
 今回は、巻末にレシピがあります。

■登場人物紹介
 登場人物の紹介のところ、どうも間違いがあるようです。今回は美人の双子が事件の中心人物ですが、この双子の姉か妹かが本文中と逆になっているようです。ま、筋にはなんの影響もありませんが。
 でも、気になりますよね。
 第2刷で直るかな。

主人公: ジェイムズ・ヘンリー(図書館長。〈デブ・ファイブ〉のメンバー)
場所:  USA、ヴァージニア州クィンシーズ・ギャップ
グルメ: ミラの料理(メキシコ料理)
動物:  なし
ユーモア: 中


料理教室の探偵たち ダイエット・クラブ3 (RHブックス・プラス)
J B スタンリー
武田ランダムハウスジャパン

特にダイエットを考えている方に
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
     
 
 
<script async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"></script> <script> (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); </script>