ワニと読むミステリ(ディーン牧師の事件簿)

ディーン牧師の事件簿 (創元推理文庫)
ハル・ホワイト
東京創元社

The Mysteries of Reverend Dean
Hal White
Lighthouse eBooks


読むと、密室からもなんとか抜け出せるものです。
 
(ハル・ホワイト著)
 ディーン牧師は80歳になったところで引退を決意しました。これからは何物にも邪魔されない静かな生活を送ることになるはずだったのですが、なぜか次々と不可解な事件の相談が寄せられます。
 本書には6編、短編というにはちょっと長いくらいのミステリがおさまっています。密室殺人や不可能犯罪が多く、ミステリ・ファンは大変楽しめます。本格ミステリ大好きのワニは、こんな素晴らしいミステリが出てきてくれて狂喜しています。巻末の解説にあるようにあとはポール・アルテ、エドワード・D・ホック、くらいでしょうか。ホックは亡くなってしまいましたから、アルテとこのハル・ホワイトに期待が集まりますね。
 連続殺人が起こるのですが、いずれの現場にも足跡がありません。
 ディーン牧師も目撃者となる狙撃事件では鍵のかかった部屋から狙撃者が消えてしまいます。
 教会の聖餐式で、ディーン牧師の友人が毒殺されますが、どうやって毒入りのカップを選ばせることができたのか。
 ディーン牧師が参加したカリブ海クルーズでは参加者が密室で殺されているのが発見されます。
 いずれも謎解きにわくわくしますよ。

■牧師のでるミステリ
 牧師が探偵役は、ほかに見つかりませんでしたが、犯人が牧師、あるいは牧師夫人というのは意外にもたくさんありました。犯人のことなのでネタばれになってしまう関係上、ここに作品名を上げられないのがとても残念です。
 作家名だけちょっとあげると、ローレンス・ブロック、レスリー・メイヤー、リヴィア・J・ウォッシュバーンなど。

主人公: サディアス・ディーン(引退した牧師)
場所:  USA
グルメ: バナナ・プディング(ディーンの好物)
動物:  イヌ:プパドッグ(セントバーナード、ディーン牧師の飼い犬)
ユーモア: 中

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ワニと読むミステリ(チェリー・パイの困った届け先)

チェリー・パイの困った届け先 卵料理のカフェ2 (RHブックス・プラス)
ローラ チャイルズ
武田ランダムハウスジャパン


Eggs Benedict Arnold (A Cackleberry Club Mystery)
Laura Childs
Berkley



読むと、殺しはジワジワ。
 
(ローラ・チャイルズ著)
 これは、カックルベリー・クラブの経営者のスザンヌが主人公のほうのミステリシリーズです。2作目。
 カックルベリー・クラブは、スザンヌ、トニ、ペトラの3人で共同経営している卵料理が得意なお店です。
 でも今日は店ではなくキンドレッド・スピリット・デイの催しで手づくりお菓子の販売のボランティア中です。あまりおいしそうでないお菓子を見ながらスザンヌとペトラはうんざり顔。もうすぐイベントも終わりそうで、早く帰りたいスザンヌたちですが、葬祭業者のオジーがまだ取り置きのチェリーパイを受け取りに現れません。しかたなく届けにいくことになったスザンヌが葬祭場で発見したのはオジーの死体でした。スザンヌ自身も殴られて気絶。
 殺人の容疑がかかったのはオジーと付き合っていたミッシーですが、最近どうも2人の仲はうまくいっていなかったらしい。
 キンドレッドの小さな街ではいろいろな出来事が起こり、自分が住んでいるような感覚になります。
 トニは別居中の夫がまた悪いことに手を染めているのではないかと気が気でなく、スザンヌに応援を頼んで悪事を止めさせようとしますが、とんでもない展開になります。
 本格的なレストランが開業するかもというスザンヌたちにはありがたくない話がでてきました。
 スザンヌにもしかしたら新たな恋が生まれるかも?
 今回もおいしそうな料理がいっぱいで、巻末にレシピがあります。

■既刊
 インディゴ・ティーショップのオーナー、セオドシア・ブラウニングのシリーズです。

ダージリンは死を招く
グリーン・ティーは裏切らない
アール・グレイと消えた首飾り お茶と探偵 3
イングリッシュ・ブレックファスト倶楽部 お茶と探偵4
ジャスミン・ティーは幽霊と
カモミール・ティーは雨の日に
ブラッドオレンジ・ティーと秘密の小部屋
ロンジン・ティーと天使のいる庭
ホワイト・ティーは映画のあとで

スザンヌ・デイツのシリーズは、まだこれで2冊目の刊行です。

あつあつ卵の不吉な火曜日

ますますグルメに拍車がかかりそうです。

主人公: スザンヌ・デイツ(カックルベリー・クラブの経営者)
場所:  USA、中西部キンドレッド
グルメ: 卵料理とお菓子
動物:  イヌ:バクスター(スザンヌの愛犬、アイリッシュ・セッター)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(魔女の館)

読むと、追跡の手がかりはどこかにあるものです。
 
(シャーロット・アームストロング著)
 パット・オシーは数学の講師です。そろそろ帰宅しようとふと顔を上げてみてしまったのは、同僚の生物学教授が不正を働いているらしい証拠の品。このために自分の教え子が疑われて学校を辞めなければならない立場に追い込まれているのを憂えていたパットは、怒りに心頭に達し、猛然とアダムズを追跡します。証拠を捨てようとするところに追いついたパットですが、逆襲され、殴られて気絶してしまいます。そして目覚めてみるとそこにいたのは少々精神に異常のありそうな老婆です。パットのことを息子と呼び、閉じられた部屋で世話をしてくれますが、もう警察に連れていかせるようなことは決して起こらないからと、医者にも見せずにただ食事を運んだりするだけ。パットの折れた足は、どんどん悪くなっているようです。
 老婆の飼っているのは獰猛なイヌで、パットの脱出を阻んでいます。
 帰ってこない夫を案じて警察に相談する妻アナベルですが、警察はまじめにとりあってくれません。これではいつまでも捜査してくれそうもないので、アナベルは独自に学校関係者にその日の出来事の聞き込みを始めます。
 事態はとても緊迫して、パットは生きて魔女の館を出られるのか、アナベルは目撃者の情報や推理からパットの行方を突き止めることができるのか、というものですが、そこはシャーロット・アームストロングの独特の語り口で、なんだかユーモラスな感じになってしまいます。
 新人とベテランの刑事のやりとり、なんとか穏便に済まそうとする学長、穿鑿好きで見たものからとんでもない結論を導き出す本人は悪気はないのだが迷惑な学生、特ダネのためならば騙してでもインタビューをとろうとする記者、など、おもわず誰かの顔が浮かんできそうな配役です。
 魔女の飼い犬レックスは、一生懸命に飼い主の魔女を守ろうとしていますが撃たれて死んでしまいます。かわいそうです。
 この作品は、1963年に刊行されています。

■既刊
 シャーロット・アームストロングの作品で、ワニが読んでいるのは3つです。

風船を売る男
サムシング・ブルー
疑われざる者

 もっとたくさんの翻訳がでることを期待します。

主人公: エリフ(パット)・オシー (数学の講師)
アナベル・オシー (その妻)
場所:  USA、南カリフォルニア
グルメ: なし
動物:  イヌ:レックス(魔女の飼い犬)
ユーモア: 小


魔女の館 (創元推理文庫)
シャーロット・アームストロング
東京創元社


Witch's House (Library Crime Classics)
Charlotte Armstrong
Intl Polygonics Ltd
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ワニと読むミステリ(悪魔に食われろ青尾蠅)

読むと、知らぬ間にというのは良くあることです。
 
(ジョン・フランクリン・バーディン著)
 エレン・パーセルはハープシコード奏者です。今日、やっと精神病院から退院することができました、2年ぶりです。夫のバジルとともに家に帰ってみると、なんとなく以前と違っているような気がします。
 不安な気持ちでいるときに、楽器の練習を再開しようとして楽器の前にいくと鍵が見つかりません。確かにあったはずなのに。自分の記憶に自信が持てなくなって気持ちが落ち込んでしまうエレン。
 そして偶然に再会したのは若かりし頃に付き合いのあった男です。エレンとよりを戻そうとするかのようにつきまとってくる男には愛人がいて、この愛人が嫉妬に苦しみます。
 読んでいるうちにだんだんと不安な気持ちがうつってきて、読んでいるこちらもおぼつかない気持ちになってきます。
 本の解説によると、これは1948年にアメリカで書かれたものです。作者のジョン・フランクリン・バーディンは1916年にアメリカ合衆国オハイオ州シンシナティで生まれ、1981年にニューヨークで死去しました。
 本の題名が変わっているなぁと思ったのですが、巻頭に歌が載っています。1840年ごろの本物の黒人楽師の歌だそうです。題名はその中の一節です。

■つながり
 ヘレン・マクロイの作品の1つに内容が似ているのがあります。
 ネタばれになるので、どれとは言えませんが。
 
 幽霊の2/3
殺す者と殺される者
 読後焼却のこと
ひとりで歩く女
家蠅とカナリア

ワニとしてはヘレン・マクロイの作品の方がうまくできているかなと思います。
 
主人公: エレン・パーセル(ハープシコード演奏家)
場所:  USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小


悪魔に食われろ青尾蠅 (創元推理文庫)
ジョン・フランクリン・バーディン
東京創元社


Devil Take the Blue-tail Fly (Canongate Crime Classics)
John Franklin Bardin
Canongate Crime
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