風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

スウェーデンの秋暮らし 4-1

2017-11-18 | 海外
3日目からの続きです。 

● ひとり散策

夜は家の中も外も、なんの音も聞こえないほど静かなので、毎晩ぐっすり熟睡できています。
気持ちよく目覚め、のんびり朝食を取り、この日は一人で外出します。
いつもリョコちゃんに頼りっきりだったので、ウプサラの町を一人で歩くのは、これが初めて。
「ひとりでできるもん」とか「はじめてのおつかい」気分です。



階段踊り場のバルコニーから外を眺めながら降りていきます。
マンションの中庭には、テーブルとイス。
ベンチだけではなく、ちゃんと料理を広げられるようになっているのがいいわ。



足元には赤い実が無数に散らばっている、。
これが何かは、リョコちゃんもわからないそうです。
鳥が喜んでつまみそう。



● 道草三昧

一人なので、まっすぐ歩きません。
これまで通り過ぎていた道の奥に入り込んでみたりして、気の向くままに道草します。



そう入り組んだ難しい町ではないので、迷ってもまったく気になりません。



緑地が多いので、角を曲がるたびにワクワクします。



ここで日本の画像と比べてみましょう。
これは、ひと月前に撮影した、芦屋警察署です。



クラシカルな素敵な建物ですが、日本で写真を撮ると、電線と電柱の存在に泣かされますね。
電線レスは空が広くて開放的。のびのびできます。

● マンホール

ウプサラのマンホール。
「Rikstelefon」と書いてあります。電話回線のようです。



こちらは一見軍事っぽいですが、大砲ではなく水道管のデザイン。



フィリス川のほとりにやってきました。



● ウプサラ大学

中世期の1477年に作られた、スカンジナビア最古のウプサラ大学。
日本では室町時代にあたります。足利尊氏さんです。



創設者は、大司教ヤコブ・ウルフッソン(Jakob Ulvsson)。
本館の建物正面に立つ銅像は大司教様だろうと思いましたが、大きく外れて、スウェーデンの愛国詩人、エーリック・グスタフ・イェイイェル(Erik Gustaf Geijer) だそうです。



まあ確かに、大司教っぽい衣装ではありませんね。
大学前の花壇越しに、大聖堂の塔が見えます。
ちなみに大聖堂が完成したのは1435年。大学よりも前にありました。



花壇に美しく咲いている、薄紫の花々。
色のチョイスがすてきです。



● 古代ルーン文字

大学敷地内の緑地に、古代ルーン文字の刻まれた石碑がありました。
1世紀頃に北欧で使われていたルーン文字。 木や石に刻まれて、占いや呪術にも用いられていました。



わあ、ミステリアス。
思わず足を停めましたが、こうした石碑はほかの場所にもちらほらありました。



けっこうたくさん残っているのね。
地震が起こらないからでしょうか。

● 立ち入り禁止の大聖堂



ウプサラ大聖堂のそばを毎日通っていますが、まだ中に入っていません。
入口に向かうと、立派なファサード彫刻に圧倒されます。



大聖堂ではちょうどお葬式を行っている最中でした。
「15分後くらいには終わっているから、また来て」と言われて、再び外に出ます。

● アナトミカル・シアター

大聖堂の向かいには、大学のグスタヴィアヌム博物館があります。
かつてのウプサラ大学はここが本館だったそう。



ここには、中世期のアナトミカル・シアター(解剖学講義室)があります。
多くの学生が解剖の実演を見られるように、 階段状の席が設けられており、電気がなかったため、建物上部に採光用の窓がついています。

つまり、かつては聖堂の真向かいで人体解剖が行われていたということです。
聖と俗のコントラストが強すぎて、なんだかぞっとしますが、当時は気にしなかったんでしょう。
というか、解剖直後に祈りを捧げて急いで埋葬するとか、そういうことなんでしょうね・・・。

● 秋の景色の中

大聖堂のそばにある、別の教会。
壁には赤いつたが絡まり、貴族の館のようです。



ウプサラは、今まさに秋の中。



落ちたばかりの枯葉の上を歩いていくと、カサコソと音がします。



美しい町を歩いているだけで、もう胸がいっぱいです。

● 大学図書館

坂を上っていったところに、クリームイエローの宮殿風の建物がありました。
大学図書館(Corolina Rediviva)です。



図書館前の道は、ゆるやかにずっとまっすぐ町の方へと伸びています。
この道はどこまで続くんだろう?と、あとで地図を見てみたら、道は町を越えてもずっと続き、ルート288となって海辺の町Börstilにまで伸びていました。



学生の後に続いて、図書館の中に入ってみました。
外はクラシカルですが、中はモダンな北欧スタイル。



カウンター前の新着図書コーナーは、猫の形をして、かわいいです。
置いてあったのは、ヴィトゲンシュタインの本でした。



2階に行くには、この螺旋階段を登っていきます。
もっとちゃんとした行き方があるんでしょうけれど、カウンターそばにあるし、このルートがあったら私は好んでここを通ります。
途中ですれ違うのは大変なので、反対側から人がやってきたら、待つのが暗黙のルール。



● 銀の聖書

入口には、見るからにものすごく価値のありそうな古書が展示されていました。
世界の秘密が記されていそう。

これは「Silverbibeln」(コーデックス・アルエンスト、銀の聖書)。
4世紀の司教ウルフィラ (311-383)がギリシャ語から翻訳したゴート語の聖書です。
金と銀で文字が刻まれ、1500年の時を生き抜いた唯一の写本。



ゲルマン語訳の「銀文字聖書」写本は、それから200年後の6世紀に、ようやく製作されています。
もっと南のドナウ流域で作成されたこの聖書が、不思議な運命をたどってスウェーデンのウプサラにたどり着き、今では大学図書館の宝物になっているのです。⇒Silverbibeln
この銀文字聖書について、フェリス大学理事長の小塩節さんが本にしてまとめているので、今度読んでみようと思います。



図書館前に立っていた銅像。リンネかと思ったけれど、よくわかりません。

● ウプサラ城

さらに丘を登り、てっぺんに立つウプサラ城に行きました。
ピンク色の丸い塔がかわいらしいイメージ。
眠りの森の美女とかがいそうなファンシーな雰囲気ですが、近くの砲台にはその夢を打ち砕くように無骨な大砲がずらりと並んでいました。
やっぱりバイキングの国ね。



ここは16世紀半ばに、スウェーデン王グスタフ1世の居城として建造されたお城。
現在は、ウプサラ県の知事公舎とウプサラ大学附属現代美術館になっています。 



お城の見晴らし台からは町が一望でき、絶好のビューポイント。
先ほど行った大聖堂を見下ろします。
控えめな鐘の音がずっと鳴り続いています。お葬式の弔いの鐘かもしれません。



それから坂道を降り、図書館の前を通って、再び大聖堂に戻りました。
あれから小一時間ほどたっていましたが、まだお葬式は続いており、中に入れませんでした。
急がない北欧人。お別れも急がずゆっくり。そうあるべきですね。
その2に続きます。



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