風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

スウェーデンの秋暮らし 5

2017-11-21 | 海外
4日目からの続きです。 

● 帰国の日

とうとう帰国する日になりました。
リョコちゃんの旦那さんとはほとんど入れ替わりになり、一緒に行動できずじまい。
「26日に来てもう帰るなんて、短すぎるよ。この週末、一緒に過ごせればよかったんだけど」と言われます。
時差がなければね~。土日を使って日本に帰るのです。
確かに実質4日間の滞在では、あちこちには動けませんでした。
でも、今回は観光よりもリラックスするのが目的だったので、のんびり過ごせて満足です。



おうちで最後のフィーカをします。
カップは、マリメッコのウニッコの色違い。かわいくってセンスがいい~。

かつて2回訪れたことのあるストックホルムですが、2回とも、オスロに向かう途中で立ち寄っていました。
当時は全荷物をしょったバックパッカー姿で、ガムラスタン(旧市街)の石畳を歩きまわったものです。
1回目はオスロ止まり、2回目にはオスロの先のベルゲンまで行ったのでした。
本当はさらに先にある地の果てのようなノールカップが目的地でしたが、実際に行ってみるとノルウェーはあまりにも広く果てしなく、さらに夏だったので白夜が続き、いつまでも夜になりません。
白夜を体験したことで満足し、途中のフロムでフィヨルドを見て戻ったんだったなあ。

ノルウェーには友人がいたし、デンマークではたまたま出会った親切なおじいさんが町を案内してくれましたが、スウェーデンは誰も知り合いがおらず、一番薄い記憶でした。
でも今回の旅で、スウェーデンが一番思い出深い町に変わりました。

● ムーミンマグ

お土産だといって、リョコちゃんからアラビアのムーミンイヤーマグカップをプレゼントしてもらいました。
2015年にスウェーデン国内で限定発売された、環境自然保護のチャリティーマグだそうです。



びっくりしました。
「だってこれ、あなたがこつこつ集めているムーミンコレクションじゃない」
今年のではないため、プレミアムがついているから受け取れないと、一旦は断りましたが、「自分の分もちゃんとあるから」とのことで、ありがたくいただくことに。
大切にするわ!これはなんとしても、割らずに持ち帰らねば。

● ノルウェーの友人

そこから「かつてノルウェーでお世話になった友人は、陶芸家とその弟子だった」という話をしました。
オスロに住むLeifとKnutの話。



別れ際にいただいたLeifの作品は、今でも大切に飾っています。



「メールとかない頃の話だったから、今はどうしているのかなあ」
「すぐわかるよ」
「え、どうやって?」
「調べればすぐよ」

● オープンデータ国家

北欧はオープンデータの国で、個人データがネットでわかるようになっています。
名前を検索すると、年齢、家族形態、職場、住所などが出てくるのです。
驚きました。日本では、個人情報保護法の大切さが日々語られているのに。

ソーシャルセキュリティナンバーも表示されます。下4桁はさすがに伏字になっているので、ほっとしましたが
「調べたければ、調査会社にお金を払ったらわかるよ」と言われてさらにビックリ。

「ほら、見てみて」と言われてPCをのぞくと、リョコちゃんの名前でヒットした彼女の個人情報がずらりと並んでいるではありませんか。
パートナーの年齢や職業といった情報までも。
日本人が知られまいとしている個人情報が丸見えです。
その人の住む家の地価までも出ているのです!

「えー!?これ、みんなの情報がわかっちゃうの?」
「そう。嫌だと言っても国民に拒否権はないのよ」

個人的な情報を知られたら最後。悪用されたり事件に巻き込まれたりする恐れがあるから、個人情報はとにかくネット上にさらさないようにと注意喚起されている日本人にとって、相当なカルチャーショック。
私はかなり混乱しています。
「なにかトラブルになったりしないの?」
「特に聞かないわよ」

こちらの生活が長いリョコちゃんにとっては、特に驚くことでもなくなっているよう。
「大丈夫なの?平気なの?」と心配する私に
「逆に、これだけ世の中に公表されているわけだから、偽名を語った犯罪とか起こらないし、重婚詐欺も存在しないよ」と言われました。

なるほどー、そういうメリットもあるんですね。
あとは、数十年ぶりに学校の同窓会を開くときなどにも便利ですね。

● Leif H. Myrdam

さて、オスロに住むLeifとKnutに話を戻します。 
リョコちゃんは、本当にすぐに調べてくれました。
「2人とも元気みたい」
これまで、ときどき思い出しては(昔の住所に住んでいるのかしら。メアドもわからないし、手紙しかつてはないなあ)と思っていましたが、消息探しは実はとっても簡単だったんですね。

Leifのフルネームは、Leif H. Myrdam。
彼の作品は、京都国立近代美術館にも所蔵されているそうです。
そんなに大物芸術家だったのね~。確かに彼の作品は、どれも吸い込まれるような美しい青色をしています。
今度所蔵作品を観に行かなくては。本人にも会いたいな。

● 日本へのお土産

日本に持ち帰るお土産をパッキングします。
普通の茸のほかに、カンタレラのスープを買いました。



これはSolstickanというスウェーデンのマッチ。
太陽と少年のイラストがかわいいです。
北欧を代表するマッチブランドで、売り上げの一部が子供たちの支援に使われるそうです。



マッチは飛行機への持ち込みが難しく、1箱なら機内持ち込みOKということで、リョコちゃんに分けてもらいました。
ちなみにIKEAの創始者Ingvar Kampradさんは、幼い頃貧しくて「マッチ売りの少年」だったそうです。



黒いパッケージは薬局で出している期間限定の紅茶。
(薬局が紅茶を?)と驚きますが、こちらではそれが慣習で、ほかの食べ物も出しているそうです。
黒いティー。フレーバーに「中国のリンゴ」と書かれていますが、それはリンゴではなくオレンジのことだそう。
ドイツ語やオランダ語もそうですね。
スウェーデンでは、リンゴは酸味が強いのが好まれるそうです。

そしてみんな大好き、ペッパーコッカー。

行きのくだりに書いた通り、私のトランクはミニマムサイズの機内持ち込み用。
お土産を詰めると、やっぱりパンパンになりました。

● リアルなお国事情

毎日ゆっくりフィーカの時間をとっていたので、リョコちゃんとはいろいろな話をしました。
どんな話題でも広げてくれる聡明な彼女。
学生の頃、哲学専攻でもないのにミシェル・フーコーを完読したと聞いて「タダモノではない」と思った私(フーコー未読)。
その話をすると「フーコーってウプサラ大学にいたけれど、同性愛嗜好を受け入れてもらえずに追い出されてアルジェへ行き、そこで博士論文『狂気の歴史』を執筆したのよ」
そうスラスラ教えてもらい、またもや目からウロコが落ちました。
フランス哲学の講義でフーコーをかじった時にも、そこまで教えてもらわなかったわー。

そんな彼女は、大使館から「スウェーデンの良さを語って下さい」という講演依頼を受けるたびに、何を話そうかと悩んでしまうそう。
北欧の素敵な魅力を伝えてほしいという大使館側の意向はわかるものの、実際に暮らしている以上、リアルな部分も知っているわけで、いいところばかりを強調するのは不自然に感じるそうです。
夢のような話ばかり語れないため、折衷案としてメリットとデメリットを取り混ぜて話すと、必ず聴講者に引かれてしまうのだとか。

日本人にとって、北欧のイメージってすこぶるいいですからね。
私も大好きです。でも今回の滞在中、リョコちゃんにいろいろとリアルなスウェーデン事情を教えてもらいました。

出産費用も、子供の病気の治療費もタダ。
さらに日本のようにベビーカーは嫌われておらず、人々は協力的で、育児のしやすい社会保障国家です。
しかし、腕のいい医師は高給の出るノルウェーやアメリカに行ってしまい、国内の医療レベルは高くないそうです。
また、体調を崩して医者に行っても、すぐに診てもらえないシステムになっており、延々と待っているうちにさらに病気が悪化してしまうとか。

シビアなところはとことんシビア。
日本で憧れているのが、一番いい距離感なのかもしれません。

● 朝から晴れた日

旦那さんとベイビーとお別れし、12時前に家を出ました。
ここには書きませんでしたが、ベイビーとは毎日一緒にたくさん遊んで(もとい、遊んでもらって)いました。
なにをしでかすかわからない小さい王様に振り回されて、目が離せませんでしたが、かわいかったから全部ハッピー!
お別れは寂しいわ~。今度再会する時には、グッと成長して、手足が長くなっているんだろうな。

リョコちゃんに送ってもらい、駅までバスで向かいます。
この日は珍しく、午前中から青空が見えていい天気。
私が去るのを祝福しているのでしょうか。(それは悲しくてよー)

滞在中はずっとリョコちゃんの厚手のコートを借りていましたが、この日は晴天であまり寒くないため、持参した薄手のフリースでもなんとか大丈夫。
うん、いいことありました!



バスがやってきました。老人が乗り降りする時には、運転手がワンタッチでタイヤの空気を減らして車体を傾け、乗りやすくしています。
さりげなく行われていて、教えてもらうまで全く気が付きませんでした。
さすがは福祉国家。日本にはまだ導入されていない技術ですね。
どんどん高齢化社会になっていく日本でも、そのうち見られるようになるかもしれません。

● リョコちゃんとのお別れ

ウプサラ中央駅に着きました。
古い方の駅は、クラシカルな駅舎こそ残っていますが、中はカフェに改修されており、もう線路はありません。



その前にある男女の裸体像は、前衛的すぎてあんまりそぐわない感じ。



自販機で空港までのチケットを購入。
購入期は3台並んでいますが、不思議なことに、マシンによって賃金が2クローネくらい違います。
どうしてー?
リョコちゃんがチェックしてみたものの、どれも合っているようでよくわからないとのこと。
そこで、一番安いチケット(183クローネ、2700円)を買いました。違っていたら買い足せばいいので。

駅で電車に乗り込み、いよいよリョコちゃんとお別れ。
ひしっとハグをします。
もう何も言えません。まさにオフコースです。
 ~あなたに会えて ほんとうによかった
  嬉しくて 嬉しくて 言葉にできない~♪

今回の旅は、ひとえに彼女が迎えてくれたおかげです。
北欧で落ち着いた時間を過ごすことができ、すっかりリラックスできました。
来年、ヨーロッパの別の場所で会いたいねと話しながら、手を振りました。

● アフリカ系移民家族

電車が動き出し、泣きたくなりながらホームの彼女に大きく手を振っていると、6人がけの私の席に3名のアフリカ系乗客がやってきました。
悲しい顔をしてブンブン手を振っている私が子供っぽかったのか、どこか笑みを含んだ顔で「お友達とお別れしているところをお邪魔しちゃったわね」と言います。
「いえいえ、大丈夫。どうぞ座って」
リョコちゃんとお別れした後は、彼らとおしゃべりしました。

話しかけてきた女性は、エチオピアから25年前に移住してきた人で、連れのティーンエイジャー風の男女は彼女の子供でした。
女の子は大学生、男の子は高校を卒業後、1年間いろいろな仕事のトライアルをやっているそう。
こちらには、そういったインターンのようなお試し制度があるそうです。

私のことを聞かれたので「こちらに住む友人に会いに来た」と話すと「お友達はウプサラ大学で働いてるの?」と的確に聞かれました。
「最近はウプサラにも中国人が増えてきたよ」とのこと。
何日いたのかと聞かれたので「フォーデイズ」と答えると
「日本からウプサラまで来て、たった4日間?」「うそでしょう!?」と、3人とも目を真ん丸にして驚きました。
そうよね~。(遠い目)

エチオピア出身と聞いて「前に隣国のケニアに行ったことがある」と話したら「一ヶ月?」と聞かれました。
「ううん、一週間」と訂正しながら(短い・・・)と切ない気持ちになります。
3人に「日本人は休みを取れないって聞くからね~」とかわいそうがられました。

ううっ。移民の方々に同情される私、そして日本人。
国際的にどうかと思うんですけど!

彼らは、日本に1年留学した親戚がいるとか、去年家族でオーストラリアに旅行したとか、聞くと豊かな暮らしぶり。
丁寧な英語を話す人たちなので、きちんと教育を受けたのだろうと思います。移民でも難民ではなさそうです。

休日を利用して、3人はウプサラからストックホルムに住むお姉さんの元へ行く途中だとのこと。
話をしながらのんびりしていたら「ここ空港だけど、ここで降りるんじゃない?」と教えてもらい、あわてて別れを告げて電車から降りました。
最初も最後も、家族に笑われちゃいましたが、おかげで乗り過ごすことなく助かったわ。

● 空港ふたたび



空港駅の長いエスカレーター。登った先は、もう空港です。



改札を抜けると空港直結。購入したチケットでOKでした。
空港に入ると暖房が効いており、とたんに暑くなったのでフリースを脱いでトランクに詰めこみます。



なんとなく球形のデザインが多い気がします。



来るときに到着した国際ターミナルへと向かいました。
6日目(ラスト)に続きます。



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