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続)ムスリムの子ども教育-18-イスラームにおける思春期の子ども達とのかかわり方(9)視聴者からの質問2

2020年02月17日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

 

続)ムスリムの子ども教育-18-

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生17」(最初~24:45)

https://www.youtube.com/watch?v=b13M2hUECcU   

前回の復習:子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。

 

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イスラームにおける思春期※の子ども達とのかかわり方(9)視聴者からの質問2

 

※思春期:

医学的には「第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで」と定義。(ウィキペディア)

イスラーム的には「10歳からブルーグ※までの時期」

※ブルーグとは?:ムカッラフ(イスラーム法学上の義務行為を行う義務が課せられる者)になること。男の子は精通、女の子は初潮が来ると「ムカッラフ」となる。ブルーグに達した子どもたちは、すでに思春期を卒業し、「ムカッラフ」として、アッラーの元でイスラーム的な義務を負う「成人」の状態になる。

 

番組に寄せられた親からの質問:「成長し成人となった娘との家での会話がまったくありません。娘はプライベートなことに口出ししないで、と言い、母親が娘の生活を知ろうとしても、拒絶されます。私たちの育て方が間違っていたのだと思いますが、娘のこの状態で放っておいていいのでしょうか。」

 

回答:こういった問題は多く寄せられています。現代では、成人に達した娘や息子が、自分のことは何でも100%自分で決める自由がある、と主張し、プライベートなことを親に話さなくなり、自分の生活は自分だけに関するプライバシーで、親には関係ない、と考える傾向があるためです。この問題は、ひとつの問題だけではなく、いくつかの問題が複雑に絡まっています。

 

まず一つ目の問題は、子どもがイスラームにおける、母親、両親の重要性を明確に理解していないこと、

二つ目は、これまでに母親が十分に子どもに対して、感情的にも理性的にも良い関係を築いて来なかったこと、

三つ目は、この子だけの問題ではなく、今の時代の共通の問題であること、つまり、ネットやテレビを通して、18歳になった子どもは独立すべき、というような西洋的な考え方が浸透していること、です。この西洋的な親子関係では、子どもは18歳になるまでは、親の責任下に置かれ、好きなことはできないが、18歳になった途端、そこから解放され、自由を謳歌できる、という親子関係です。しかし、イスラーム的な親子関係はそれとは異なります。母親と娘の関係、父親と息子の関係、すべてが西洋的な価値観とはまったく違います。

 

これらの点を踏まえて、この相談者の方に、まずお願いしたいことは、娘さんとの愛情に基づいた親子関係を修復する努力をしてください、ということです。現代は、母親が若いときとは時代が違っていて、子どもは、お母さんの時代とは違うんだから、お母さんにはわからない、と言うかもしれませんが、時代と共に変わることもあれば、時代が変わっても変わらないこともあります。母親の娘への愛情は、変わりません。どんな時代でも子どもを愛する母親の気持ちは同じです。人徳も、良い振舞いも、時代によって変わるものではありません。ムスリムとして、母親や両親への振舞いや親孝行の大切さが、時代によって変わるべきということもありません。

 

 

質問:子ども達は、現代の誘惑の多い環境の中で、どうやって自分を守って行けばいいでしょうか。娘が学校に行けば、異性の男の子達が話しかけて来る、息子が大学に行けば、女の子たちがきれいにお化粧をしてファッショナブルな服を着て歩き回っています。そんな中で、ムスリムの子ども達へのアドバイスをお願いします。

 

回答:学校に行き知識を求める、というすばらしい崇拝行為をしているムスリムの女の子達に送る言葉は、どうか自分のしていることの目的を自分の中で明確にしてください、ということです。何のために学校や大学に行くのか、知識を求めるために学校に行く、という目的を明確にし、その目的を果たすために必要なことを優先して行うことが大切です。目的意識をしっかり持つこと、ニーヤ(意思)をすることによって、大学のカフェテリアで毎日何時間も自分にかかわりのない映画や芸能人のことについておしゃべりをして時間を無駄にしたり、校内の中庭でただ人間ウオッチングをして過ごすようなことはなくなるでしょう。

 

また、学校で誘惑の多い環境を作っている原因は、女の子達だけに責任があるわけではありません。男の子達に対してのアドバイスは、クルアーンにある通りです。

 

【男の信者たちに言ってやるがいい。「(自分の係累以外の婦人に対しては)かれらの視線を低くし、貞潔を守れ。」それはかれらのために一段と清廉である。アッラーはかれらの行うことを熟知なされる。】クルアーン24-30

 

どんなに周りにきれいな女の子がいても、自分の視線を低くし落とすことで、誘惑は確実に少なくなります。男の子達も、女の子達同様、自分が学校に行く目的を明確にし、知識を求めるというすばらしい行為をニーヤ(意思)することで、女の子達の容姿や髪形を比べたり、服のチェックをすることはなくなります。若い男の子達がよく、「視線を低くすることは、もちろん、知っていますよ!でも自分には無理です!」と言うのを聞きますが、すでに、クルアーンでアッラーが、私たちに命令しています。「無理」なことを、アッラーは私たちに求めません。アッラーが命じていることは、私たちが必ず「できること」だけです。

 

【アッラーは誰にも、その能力以上のものを負わせられない。】クルアーン雌牛章2-286

 

男の子達にそれを命じられている、ということは、つまり、彼らにはそれができる、ということです。

 

実際に多くの大学生の若者達が、異性の誘惑を避け、学問を真摯に修めて卒業しています。彼らは、知識を求めるという崇高な目的を持ち、アッラーに近づく崇拝行為をしている時に、左右の異性に目を奪われることはありません。イスラーム学でなくとも、ウンマにとって役に立つ知識を求めることは崇拝行為になり得ます。それによって、社会を改善し、ウンマにとって善いことを望んで学ぶことで、アッラーからのご褒美が沢山あります。自分の目的を明確にして、視線を伏せることで、自分を取り巻く誘惑は、大きく減らすことができます。

 

女の子と男の子両方へのアドバイスは、知識を求めるという目的意識を持った善い友達を選ぶことの大切さです。自分の周りに、異性の彼氏や彼女のことばかり話したり、遊びの話題ばかりの友達を集めるのではなく、本来の大学の目的である学ぶことを楽しんでいる友達を見つけて、そういう人達と付き合うことで、異性の誘惑は、大きく減少させることができます。

 

ただ周りの環境を嘆いて、誘惑を前にして弱くなってしまうことは、シャイターンに負けているということです。私たちはムスリムです。環境がどうあっても、誘惑に対して強く自分を守ることができるように、努力することが大切です。

 

 

質問:子ども達へのアドバイスはわかりました。では、今、思春期の子どもを育てている親御さん達へのアドバイスはありますか。

 

回答:親の世代の方たちにお願いしたいことは、現代は、自分が育った環境や時代と全く違う環境に子ども達が置かれている、子ども達は自分達と全く違う価値観を持っている、と決めつけて、子ども達のことを理解するのをあきらめてしまわないことです。親子の間の信頼関係は、時代が変わっても、変わることはありません。どんなに子ども達が、自分とは違う考え方をしていると感じても、あきらめずに、子どもの話を聞くこと、理解しようとする努力が大切です。

 

現代の親の側の問題は、自分たちの価値観とは違う西洋的な価値観が押し寄せていることや、子ども達を取り巻く環境が誘惑に満ちていることに恐怖を抱き過ぎるあまり、子ども達をまったく信頼せずに、子どもの話も聞かずに、ただ力で押さえつけたり、抑圧したり、一方的に言うことを聞かせようとして、高圧的な態度に出てしまうことです。信頼関係は一方的に命令するだけでは築かれません。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、若者たちの間違った考え方を正す際、実際どうされていたでしょうか。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の時代に、アブドッラー・ビン・アムル様(アッラーのご満悦あれ)という若者がいました。彼は、イスラームで定められたこと以上に、崇拝行為を行い、自分を痛めつけていました。そのことが預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の耳に届いた時、彼の間違いを正すために、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がなさったことは、まず、彼のところにご自分で出向き、彼を訪問し、彼と話をすることでした。

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、子どもを呼び出すのではなく、ご自分で彼のところに出向かれ、彼の自尊心を満たし、彼に、自分は重要な存在なのだ、と感じさせました。親御さん達、子どもと意見の食い違いがあったり、喧嘩をした時、自分から子ども達の部屋を訪れたり、自ら子ども達のところに行き、あなたと話をしたい、と言って、彼らを訪ねているでしょうか。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、そうなさっていました。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が訪問すると、アブドッラー様(アッラーのご満悦あれ)は、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)に、部屋にひとつしかなかったクッションを勧めますが、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はその上に座ることをお断りになりました。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、自分だけがクッションの上に座り、アブドゥッラー様(アッラーのご満悦あれ)が、自分よりも低い位置になることで、彼に対して高圧的になることをよしとなさらなかったのです。

 

その状態で、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、彼(アッラーのご満悦あれ)と会話を始めますが、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、いきなり、彼(アッラーのご満悦あれ)の間違いを指摘することはなさいませんでした。本当に少しづつ、彼(アッラーのご満悦あれ)にとって妥協案となる案を提案していくところから始められました。毎日断食し続ける彼(アッラーのご満悦あれ)に対し、最初は、一ヶ月に3日断食しては、と薦めます。彼(アッラーのご満悦あれ)が、それを拒むと、次に、一ヶ月に5日、次に一週間、と少しづつ妥協点を探すように提案していきます。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、決して、一方的にこうしなさい、と命令し、選択肢を示さない、という形にはなさいませんでした。その時のことが以下のハディース(ムスリム伝承)にあります。

 

アブー・キラーバはアブー・マリーフが(次のように)告げたと伝えている。:

《私はあなたの父君と御一緒にアブドッラー・ビン・アムルの所に行った。彼はわれわれに(次のような)話をした。

アッラーのみ使いは私の断食についてお耳にされた。するとその御方は私の所に御出でになった。私はその御方になつめ椰子の繊維の入った皮のクッションをおすすめしたが、その御方は大地にお座りになった。クッションは私とその御方の間に置かれたままであった。

み使いは私に「一ヵ月に三日間の断食では満足ではないのか」と申された。

私は「アッラーのみ使いよ、(それでは満足ではありません)」と言った。

み使いは「五日では」と申された。

私は「いいえ、アッラーのみ使いよ、(それでも満足ではありません)」と言った。

み使いは「一週間」と申された。

私は「いいえ、アッラーのみ使いよ」と言った。

み使いは「九日では」と申された。

私は「いいえ、アッラーのみ使いよ」と言った。

み使いは「11日では」と申された。

それでも私は「いいえ、アッラーのみ使いよ」と申し上げると預言者は「ダビデが行われた一日置きの断食、つまり半生の断食より優れたそれはない」と申された。》ムスリム伝承

 

《彼(アブドッラー・ビン・アムル)は(老いてから)「ああ、み使いの特許を受け入れておけばよかった」とよく口にしていた。》ムスリム伝承

 

親が一方的に命令するのではなく、子ども達の気持ちを汲んで、妥協できる案を提案して行くという、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の振舞いは、時代を超えて、すべての親と子の対話の見本となるものです。

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2020年02月07日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

 

続)ムスリムの子ども教育-17-

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生16」(40:38~最後)

https://www.youtube.com/watch?v=8IKeIlrPnnk   

前回の復習:子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。

 

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イスラームにおける思春期※の子ども達とのかかわり方(8) 視聴者からの質問

 

※思春期:

医学的には「第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで」と定義。(ウィキペディア)

イスラーム的には「10歳からブルーグ※までの時期」

※ブルーグとは?:ムカッラフ(イスラーム法学上の義務行為を行う義務が課せられる者)になること。男の子は精通、女の子は初潮が来ると「ムカッラフ」となる。ブルーグに達した子どもたちは、すでに思春期を卒業し、「ムカッラフ」として、アッラーの元でイスラーム的な義務を負う「成人」の状態になる。

 

 

子ども達から親への不満:

「私が電話していると、誰からだ?どうして話をするのか?と親が詮索して来る。そして、友達のことを、あの子は良くない、付き合わないように、この子は自分勝手であなたを利用している、とジャッジします。うんざりです。」

「僕が10時間以上勉強した後、やっと休憩していると、親が、どうして勉強しないのか?と怒る。少し休憩しているのだというと、休憩するのは十年早い、勉強しろ、と。」

 

回答:親子の関係で、私が自分の母親を思い出すのは、母が私に、「私はあなたの話を聞きます。だから、あなたも私の話を聞いてくださいね。」といつも言っていたことです。親が子どもの意見をしっかり聞くことで、子どもは、自分には価値がある、親は自分の意見を尊重してくれている、と感じることができ、子どもの自尊心が育ちます。その上に成り立った親子関係では、子どもが一方的に自分の意見を通すこともなく、親が一方的に子どもに命令することもありません。お互いがお互いの意見を聞き合い、尊重し合う友達のような関係、それがとても大切です。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)も、ご自分の子どもの意見を受け入れて尊重していました。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)と娘さんのザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)の逸話があります。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がマディーナへとヒジュラされた時、娘のザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)は、夫のアブー・ル=アースと一緒にマッカに残っていました。彼女の夫、アブー・ル=アースは、ムスリムになっていなかったため、バドルの戦いでマッカの多神教徒達の側にいて、ムスリム達に敵対して戦い、ムスリム軍に捕えられ、捕虜となりました。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、捕虜解放の手段を、親族が身代金を払うか、捕虜本人がムスリム子弟10人に読み書きを教えること、とされました。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の元に、捕虜になった人達の身代金が届いた時、その中に、首飾りがありました。それは、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の奥様のハディージャ様(アッラーのご満悦あれ)が、娘のザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)とアブー・ル=アースとの結婚に際して、彼女に贈ったものでした。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はその首飾りをご覧になると、彼女に同情し、ある伝承によると、涙を流され、こうおっしゃいました。

《この首飾りは、ハディージャものです。もしあなた方が、彼女の夫を解放し、彼女の首飾りを返却するのがよいと思われたなら、そうしなさい。》

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、命令はなさいませんでした。あくまで、決定は、ムスリム達に任されました。ムスリム達は、もちろんです!と答え、ザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)に、首飾りを返しました。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、アブー・ル=アースに、解放の条件として、ザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)をマディーナに移住させることを約束させました。すでに、ムスリマ女性は、ムスリムでない夫と一緒に住むことが禁止されたためです。アブー・ル=アースはその約束通り、ザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)をマディーナへ送りましたが、その旅の途中、マッカの多神教徒達が彼女の乗ったラクダを突き、ザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)はラクダから落ち、妊娠していた子どもを流産してしまいました。その時の傷の痛みは、ヒジュラ暦8年に彼女が亡くなるまで続きました。

 

それから6年後、アブー・ル=アースは商人として、マッカの多神教徒達からお金を預かってシャーム地方で商売をするために旅に出ました。旅の途中で、マッカの多神教徒達に財産を没収されたムスリム達が、その代替として多神教徒達のお金を持っている彼を捕まえ、持っていたお金を没収しました。アブー・ル=アースは、捕虜になりそうになったところを逃げ、マディーナのザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)の家に助けを求めて訪れました。ザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)は、彼を家の中に入れると、マスジドでファジュルの礼拝をしていた預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)とムスリム達のところに行き、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が礼拝最後のタスリーム(座った状態で左右にサラームをする動作)をする前に、大声で人々に向かって叫びました。

「人々よ、私は、アブー・ル=アースを保護しました。」

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はタスリームを終えると、おっしゃいました。

《人々よ、私が聞いたことを聞きましたか?》

人々が、「はい」と答えると、

《ムハンマドの命がその御手にある御方にかけて、あなた方を聞いたことを聞くまで、私は何もこれについて知らなかった。実に彼は、ムスリム達に保護されました。》

 

それから預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、娘のザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)のところに行くと、こうおっしゃいました。

《娘よ、その客を丁重にもてなしなさい。そして、彼があなたに近づかないようにしなさい。あなたは、彼にとって許されていないのですから。》

 

その後、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、アブー・ル=アースのお金を没収したムスリム達のところに行くと、こうおっしゃいました。

《この男は、知っているように私たちの同族者です。あなた達は、彼からお金を受け取りました。もし、あなた達が良い振舞いをされるのでしたら、彼のお金を返すことで、私たちはそれを好みます。もし、それを拒否するのでしたら、それはアッラーがあなた達にお与えになった戦利品であり、あなた方に最も権利があります。》

人々は、「アッラーの御使い様よ、私たちはそれを彼に返します。」と言いました。

そして、ムスリム達は、彼から没収したお金や品物を少しも欠けることなく全額返しました。アブー・ル=アースは、それを持ってマッカに戻り、多神教徒達に、彼らから預かったお金をすべて返却すると言いました。

「クライシュ族の方々よ、私のところに、まだ受け取っていない自分のお金が残っている方はいますか?」

人々は言いました。「いいえ、ジャザーカッラーフ ハイラー。私たちは、あなたが完全に約束を守られる方だとわかりました。」

すると彼は言いました。「アシュハドアッラーイラーハイッラッラー、ワ アシュハド アンナ ムハンマダン アブドゥフ ワ ラスールフ(私はアッラーだけが神であることを証言します。私はムハンマドがアッラーしもべであり、使徒であることを証言します)。私からイスラームを妨げるものは何もありませんでした。ただ、あなた方のお金を欲したと思われる恐れ以外は。ですから、アッラーがそれをあなた方に戻してくださり、その恐れがなくなった今、私は、ムスリムになりました。」

 

彼はマディーナへと戻ると、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のところへ行き、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、ザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)との結婚を許しました。

 

ザイナブ様(アッラーのご満悦あれ)は、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の許可なく、夫を保護する、という決定を自分一人で決め、それを大勢の人前に出て発表する、という行動を起こしました。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、娘の決定と行動を尊重し、そのことが、イスラーム的に問題がないことを人々に告げ、娘の行動を支持しました。その結果が、アブー・ル=アース様(アッラーのご満悦あれ)の入信につながりました。

 

親が子どもの行動を認め、受け止め、応援することで、親子の関係はもっと良くなるでしょう、インシャーアッラー。

 

親からの質問:

「息子が悪い友達と付き合っていて心配だ。友達が息子の性格や言動に大きな影響を与えている。どうしたらいいか。」

 

回答:預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がマッカを開城した年、それに反発したマッカの多神教徒の諸部族が結集し、フナインの戦いが起こりました。その戦いの後、アザーンが制定され、マッカの人々は初めてアザーンを聞くことになります。当時16歳で、マッカ郊外に住んでいたアブー・マフズーラ様(アッラーのご満悦あれ)も、その一人でした。初めてアザーンを耳にした彼(アッラーのご満悦あれ)は、友達たちとそれを馬鹿にし、一緒に真似していたことを、ご自身が伝えているハディースがあります。

 

「私は、10人の若者達と預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のところに出かけました。我々にとって彼はもっとも憎悪する人でした。そこで、アザーンをしていたので、私たちも彼らをからかって、アザーンを真似して唱えていました。すると、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がおっしゃいました。

《私のところにあの青年たちを連れて来なさい。》それから、こうおっしゃいました。《アザーンをしてみなさい。》そこで我々はアザーンをし、自分もそのうちの一人でした。すると、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、(私がアザーンを唱えると)

《そう、これが、私がその声を聞いた者だ。行って、マッカの人達のためにアザーンをしなさい。》

とおっしゃいました。そして、私の前髪に触れ、言われました。

《アッラーフアクバル、アッラーフアクバル、アッラーフアクバル、アッラーフアクバル、アシュハドアッラーイラーハイッラッラーと2回、アシュハドアンナムハンマダンラスールッラーと2回、そして、アシュハドアッラーイラーハイッラッラーに戻って2回言い、アシュハドアンナムハンマダンラスールッラーと2回、ハイヤーアラッサラート、ハイヤーアラッサラート、ハイヤーアラルファラーフ、ハイヤーアラルファラーフと2回、アッラーフアクバル、アッラーフアクバル、ラーイラーハイッラッラー。また、スブフ礼拝の時にアザーンを言う時には、アッサラートハイルンミナンナウム、アッサラートハイルンミナンナウムと2回。そして、イカーマをする時には、カドカーマティッサラート、カドカーマティッサラートと2回言いなさい。あなたは、聞きましたか。》

伝承者は言いました。アブー・マハズーラは、その前髪を刈ることも分けることも決してしませんでした。アッラーの御使い様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がそれに触れたためです。」イマームアハマド伝承

 

 アブー・マフズーラ様(アッラーのご満悦あれ)は、こう言っています。「預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が私の前髪に触れた時、(別の伝承では、前髪と胸に触れた時)、アッラーに誓って、私の胸は、イーマーン(信仰)とヤキーン(確信)で一杯になりました。そして、わかりました、この方はアッラーの御使い様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)だ、と。」

アブー・マフズーラ様(アッラーのご満悦あれ)はその後、マッカでムアッズィンとなり、亡くなるまでその役目を果たしました。

 

アザーンを馬鹿にして真似する友達たちと一緒にいて、自分も馬鹿にしていたような状態の時に、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)から、突然、ムアッズィンの役割を言い渡された彼の驚きを考えてみてください。悪い友達の影響は、良い人と出会うことで変化します。そして、親がその役割をすることは十分に可能です。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のように、どんな時でも子どもを善い見方で見ることで、子どもは良い方向に変わることができます。

 

ムスリムの子ども達に、アッラーのご加護がありますように。