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続)ムスリムの子ども教育-8- テレビの前で何時間も・・・

2019年04月05日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

続)ムスリムの子ども教育-8-

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生14」(30:00~39:50)

https://www.youtube.com/watch?v=oGtIefugW3A 

前回の復習:子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。

 

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質問: 子どもが、テレビの前で何時間も座ってしまう問題は、どうしたらいいでしょうか?

 

回答:イスラーム世界では、少し前まで、「子どもがテレビを見過ぎることは良くない」というと、まるで時代遅れのように非難されていましたが、現在では、先進国の家庭が、子どもに及ぼすテレビの悪影響に気づき、テレビの視聴時間を制限したり、テレビを禁止したりしています。

 

実際テレビにはいくつかの問題があります。そのひとつに、テレビによって、子ども時代を無理やり侵害されること、があります。子どもが知らなくてもいい情報や知ることで害がある知識を、テレビがどんどん、子ども達の頭の中に垂れ流してしまうためです。子ども時代は、年齢に応じて成長に必要な過程があります。子どもにとって成長段階の適切な時期に、適切な体験をすることはとても大切です。子どもには遊びが必要な時期があり、空想や想像力を発達させる時期があり、イスラーム道徳を理解し、身に着けていく時期があります。こういった適切な時期に適切な活動を経験することにより、思春期に入った時の問題が少なくなります。

 

遊びの体験を十分に積んできた子どもが、空想や想像力を十分に発達させて、アッラーのこと、天国のこと、天使たちのことを十分に想像して自分の中にそれらの場所を持っていれば、その後に、善い行いと悪い行いを学び、これをすると天国に入れる、と聞けば、したい、と思い、これをすると、左の天使が書いてしまう、と聞けば、止めようと思う、という善悪の判断やイスラーム的な道徳規範を持つことが簡単になります。それによって思春期には、揺らぐことのないしっかりとした信仰に基づいた生活を送ることができます。

 

現在の子ども達の問題は、テレビによって、そういった成長の段階が早められてしまうことです。善悪の判断がはっきりつかない小さなうちから、テレビドラマで見た男の人と女の人の恋愛について興味を持ってしまう、子どもには刺激が強すぎるような暴力的な場面をテレビで見てしまう、など、テレビによって、子ども達の文化が、大人たちの文化に侵害されてしまっています。これはとても危険な現象です。テレビだけでなく、インターネットもこの問題を大きくしています。子ども達は、簡単にFacebookやラインで知らない人とチャットをすることができます。相手がどんな人なのか、性別も年齢もわからないまま会話をすることは、子ども達を大きな危険にさらします。

 

先生が小さい頃、父親と一緒にテレビを見ていて、コマーシャルで良くない映像が映ると、兄弟みんなで目を伏せて、「アイブ!(恥)」と言って見ないようにしていたそうです。子どもだけで近所の子どもの家に行ってテレビを見ていても、良くない場面が映ると、親の目がなくても、自分たちで「アイブ!」と言って、テレビ画面から目をそらして、兄弟同士顔を見合わせていたので、近所の子どもたちも同じようにするようになったそうです。

 

現代は、子育てにおいて、「禁止」の時代はもう終わりました。子ども達に、親が何かを禁止して、悪い物を見せないようにして遠ざけ、子ども達を守ることができた時代は、もう終わりました。今は、子ども達の心に、善悪の正しい判断、「良心の声」を築くことが大切です。イスラーム的に善いことを教えて、子ども達に自分で考えて自分で正しい選択ができるように、悪いことを自分で避けることができるように、育てなければならない時代です。

 

 

質問: もしあなたの家に、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が訪問に来て、子どもがいつも見るテレビ番組を見ていたら、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の前で、あなたが恥ずかしくなるような番組はないでしょうか?

 

回答:もし、子どもが好きなテレビ番組の中に、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)には見せられないようなものが含まれている場合、問題は2つあります。

 

ひとつ目は、子どもの教育、というアマーナ(預かりもの)を、あなたが守ることができなかった、という不名誉を被ってしまうことです。小さな子どもがいるご家庭で、親が子どもから解放されるために、子どもが何を見ているのか把握することなく、1時間も2時間も子どもにテレビを見せておく、スマホでYouTube動画を見せておく、ゲームで遊ばせておく、というのは、アッラーからの大切なアマーナ(預かりもの)を紛失してしまった、という裏切りになってしまいます。

 

【彼(アッラー)は、目の裏切りも、胸が隠すものも知り給う。】クルアーン ガ―フィル章19

 

二つ目の問題は、子どもが、そういった番組を恥ずかしいと思うことがなくなっている、つまり、すでに善悪の判断を失ってしまっている、という点です。これは、とても重大な問題です。テレビで流れていることを良い物も悪い物も大量に見せられることで、子ども達は悪いことにどんどん慣れて、感覚が麻痺して行きます。悪いものを見ても、何とも思わなくなってしまいます。見慣れることで、恥ずかしいという感覚もなくなっていきます。子どもが、善悪の判断基準を失ってしまうこと、これは大問題です。

 

どうか、お子さんたちがテレビで何を見ているのか、もう一度、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がご自宅を訪問するという前提で、見直してみてください。まず、お子さんたちの好きなテレビ番組やYouTube動画を把握していますか?問題をもっと大きくしてしまうのが、テレビやスマホの子ども部屋への持ち込みを許可することです。親が子どもの見ている物をまったく知ることができなくなります。知らないうちにネット依存症になっていた、ということも起こり得ます。親がこういった危険に子ども達をさらすことは、親が子ども達の権利を侵害していることになります。

ムスリムの子ども達に、アッラーのご援助がありますように。

 

 

◆日本の有識者の方のご意見:群馬大学名誉教授、下田博次教授

「ネット依存や中毒化は、従来の中高生の思春期の問題のみならず、乳幼児期から意識すべき問題です。今は、乳幼児期の子ども達がスマホやタブレットを利用するようになりました。ネット依存が乳幼児期から始まると、治療が困難になるという指摘もされています。わが国のネット依存の予防、治療体制は諸外国から遅れていることから考えても、乳幼児期からのスマホ、タブレットの利用は危険です。」

 

引用「有害情報の受発信における被害・加害や、ネット依存予防などに対して、社会的整備が十分でない現状を鑑みると、スマホからのネット利用はできるだけ遅らせたほうが賢明です。」

http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=2179&page=3 日経DUAL

 

◆スティーブ・ジョブズが子どもにiPhone やiPadを使わせなかった理由

http://singaporeryugaku.blogspot.jp/2014/09/iphone-ipad.html?spref=fb&m=1 

 

 

 

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