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続)ムスリムの子ども教育-7-預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が訪問されたら

2019年02月17日 | 預言者の教育方法

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

続)ムスリムの子ども教育-7-

 

ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生13」(8:54~最後)

https://www.youtube.com/watch?v=JpETpYyw1zU 

子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。

 

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質問: もしあなたの家に、今から、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が訪問に来ます、と言ったら、あなたは、どうしますか?

 

この質問をするのは、私たちが、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が家に来る、としたら、自分の生活の中のどの部分を変える必要があると感じ、どんな習慣を止めたいと思うか、と、現在の自分自身の生活を見直すことだけを目的としている訳ではありません。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が来るときだけ、それらを隠し、いなくなったら、また元の生活に戻る、というのでは意味がないからです。そうではなく、悪い習慣を止め、良い習慣を取り戻し、常に預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が共にいらっしゃる生活を、今後の人生で継続して行くために、この質問をしています。

 

ある子どもに、この質問をすると、「プレイステーションを窓から外に放り投げる。」と答えました。子どもの心の中に、それが自分にとって良くない物、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がご覧になるのにふさわしくないものだ、という気持ちがあるからです。子どもがどんなおもちゃで遊ぶのが好きなのか、それがどういうものなのかを親がよく知ることはとても大切です。

 

皆さんは、自分の子どもがどんなおもちゃで遊ぶことが好きなのか、知っているでしょうか。

 

プレイステーション等のゲームの中には、暴力的なものや、道徳に反するものもたくさんあります。ネットやスマホを使わせることも同じです。親が子どもの遊びを把握しているかどうか、は、親が子どもにそういったものを与える際に、教育の道具として与えているのか、それとも、子どもを静かにさせるために与えているのか、その目的によって、変わって来ます。教育の一環として与えていれば、当然、親はその内容を把握していますが、ただ、静かにさせるため、もしくは、自分がすることを邪魔されないために子どもにゲームやスマホを使わせていれば、子どもが静かにすることが目的ですから、内容は関係なく何でも見せておけばいい、となってしまいます。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が来るから、と言って、インターネットやスマホやテレビをすべて捨てなければいけない、ということではありません。それらは、ただの道具であり、例えてみれば、コップがただの道具で、もしそれを使ってザムザムの水を飲めば、ご褒美があり、ハラームの飲み物を飲めば、罰があるのと同じです。

 

ここで、質問したいのは、皆さんのお子さんのおもちゃや遊びを、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がご覧になるとしたら、その中に、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)に見せるのが恥ずかしい、これは見せられない、と思うものはありますか?

 

お子さん達にも、ぜひ聞いてみてください。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が来て、あなたのおもちゃを見せて、と言ったら、見せるのが恥ずかしい、と思うものはありますか?と。もし、恥ずかしいと思う物があるのなら、それは、あなたにとって必要のない物だ、とあなた自身がわかっているのだから、もうそれで遊ぶのは止めましょう。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がお喜びになられるようなものと交換しましょう。いい物か悪い物かどちらかわからない、迷うものがあれば、それを選ぶ代わりに、確実に、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が喜ばれるものを選びましょう。

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が、あなたの子どもに、こう尋ねることを想像してみてください。「あなたの好きなことは何ですか?」子どもがもし、「テレビを見るのが好き。」と言ったら、「どんなテレビを見るのですか?」子どもは何と答えるでしょうか。その後に、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)があなたの方に向き直って、

 

「この子が好きだと言っている、そのテレビ番組を見せてください。」

 

とおっしゃったら、恥ずかしく気まずい思いをするものはないでしょうか。

 

あなたがいつも見ているテレビ番組を、一週間、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が一緒にご覧になるとしたら、どの番組を、まっさきに見るのを止めるでしょうか?

 

 

質問:預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が、私たちの時代にいらっしゃったら、私たちがテレビを見たり、ネットやスマホを使ったりするのを禁じるでしょうか?

 

預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、私たちを益するものは許可され、害するものは禁じられるでしょう、インシャーアッラー。テレビやネットを全面的に禁止するよりも、きっと、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のハディースやクルアーンを、多くの言語に訳して、世界中に届けることにそれらの道具を使われるのではないでしょうか。問題は、道具ではなく、私たちの使い方です。私たちが反省しなければならないのは、それらを、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)のもたらした導きを人々に伝え、私たちを益するように使っていないことです。私たちの使い方を、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がお喜びになられる使い方に変えること、それだけが必要です。

 

 

質問:ムスリムの子ども達が、ハリーポッターに夢中になっていますが、イスラーム的にはどうでしょうか?

 

まず、イスラーム的に何かを判断する際に、短絡的にすべてを否定して、子どもに禁じたり、すべてを許可したり、ということはあまり良いことではないことを知る必要があります。子ども達に、ハリーポッターのどんなところが好き?と聞くと、魔法使いの子どもが、魔法を使って悪と戦い、友達を助けたり、正義のために戦うところ、という意見が多く出ます。子ども達がハリーポッターに惹かれる理由として、彼の善い性格に惹かれ、子ども達の中に、正義を愛する気持ちがあるのは、とても喜ばしいことです。その点は、教育的見解や、道徳的見解と、イスラーム的見解に相違はないでしょう。

 

ただ、問題なのは、その魅力的な彼が、「魔法を使う」、という点です。イスラームでは、魔法は、ハラームです。魔法に、良い魔法も悪い魔法もありません。ハリーポッターがいくらそれを善いことに使っても、アッラーが禁じられたハラームの物を使っていることに変わりはありません。また、魔法を使って、悪を退治する、というのは、空想であって、現実に起こることではありません。魔法を善いことに使う、というのは、ただの作者の考えた「嘘」であり、子ども達の中に、アッラーが禁じていることに対する愛情を植え付ける、という点には、問題があるでしょう。

 

「奇跡」に惹かれる現代人

 

また、注目すべきは、子ども達が、ハリーポッターが魔法を使って起こす「奇跡」というものにとても惹かれる、魅力を感じる、という点です。現実的に起こるはずがないような「奇跡」に、なぜ人は惹かれるのでしょうか。それは、ハリーポッターに、子どもだけでなく、大人のファンが多いことからもわかりますが、すべての人にとって、「奇跡」は興味を引き付ける対象になっています。現代のように、科学が進み、世俗主義が浸透し、不可視の物を信じる気持ちが薄れている世の中で、どうして、魔法のような「奇跡」に、人々がワクワクし、夢中になるのでしょうか。それはまるで矛盾しているように見えます。目に見える物しか信じないと言っている人たちが、魔法や魔法使いの物語に夢中になるというのは、どういうことでしょう。

 

他にも、先進国と呼ばれる国で、宗教から遠く離れた生活を送っている人たちに、よく当たると評判の占い師が大人気だったりします。目に見えない物を信じない、と言っていたのではないですか?占い師の言葉を信じる?魔法使いに夢中になる?!どうしてでしょうか。

 

それは、アッラーが、人間を創造した時、すべての人が、不可視の物、幽玄界への信仰を持つようにお創りになられたからです。すべての人に、そういったものに対する欲求が備わっています。ただ、ある人達にとっては、それが、アッラーへの信仰や、クルアーンや預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)への信仰となって現れ、また別の人たちには、魔法や占い師への信仰となって現れる、ということです。つまり、すべての人の中にある、真実の信仰によって満たすべき場所が空白になっていると、別の形の不可視の物、魔法やその他の物に惹かれ、それらを必要としてしまう、ということです。

 

ハリーポッターの最初に売り出された本は、世界140カ国で1千万部を超える前代未聞の販売実績を記録し、最終的にシリーズ7作品は、全世界で73の言語に翻訳され、シリーズ世界累計発行は4億5000万部以上という超ベストセラーとなりました。それだけの人がハリーポッターに惹かれた理由は、人々の魂の中に、アッラーがお創りになられた、不可視の物を信じたいという欲求があり、その欲求が正しい信仰で満たされていないと、他の不可視の物で満たそうと、それらを求めるからです。

 

目に見えないものに惹かれる心のすき間を埋めるには?

 

イスラーム世界では、昔から、子ども達に預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の話をする際には、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の起こされた奇跡について、よく話したものでした。多神教徒達が、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)に、月を割ってみろ、と挑戦し、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がアッラーにドゥアーをされると、月が割れた、という話がクルアーンにもあります。

 

【時は近づき、月は真っ二つに裂けた。

彼らはたとえ印(奇跡)を見ても、背き去って、「これは相変らずの魔術だ。」と言うであろう。

彼らは(訓戒を)虚偽であるとし、自分の欲望に従ってきた。】クルアーン54:1〜3

 

また、ある戦いで、カターダ様(アッラーのご満悦あれ)の片目の眼球が落ちてしまった時、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がそれに息を吹きかけ、眼球を元の場所に戻すと、彼の眼は元通りに治った、という奇跡があります。彼(アッラーのご満悦あれ)は、その後、眼が病気になった時にも、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が戻してくださった方の眼は健康なままだった、と語っています。こういった多くの奇跡のお話は、子ども達に預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)への愛情を増し、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)への尊敬や興味を育て、アッラーが預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)を遣わし、そうした奇跡を与えてくださったことへの確かな信仰を育みます。

 

また、サハーバ達(アッラーのご満悦あれ)の奇跡や、アウリヤーと呼ばれる、アッラーに近しい人達の奇跡も、多くあります。例えば、ウマル様(アッラーのご満悦あれ)が、マディーナのミンバル(説教壇)の上で説教をしていた時に、アッラーが、ニハーワンド(現在のイランのテヘランの南)に遣わした軍隊をウマル様(アッラーのご満悦あれ)に見せ、そこに敵の罠があったために、軍隊の長官であるサーリヤに向かって、ウマル様(アッラーのご満悦あれ)が、ミンバルの上から、「サーリヤよ。山だ。山だ」と、大声で叫ぶと、サーリヤは遠く離れた距離(直線距離で2,000km以上)にもかかわらず、ウマル様(アッラーのご満悦あれ)の声を聞き、その警告通りに山の方に進軍し、勝利をした、という話があります。

 

また、ある男が妻でない女性のことをアッラーが禁止された悪い視線で凝視した後、その男が、ウスマーン様(アッラーのご満悦あれ)の元に人々が集まっているところに行くと、ウスマーン様(アッラーのご満悦あれ)の顔色が変わり、「あなた方の中で、目で婚外交渉を行った跡を残して、ここにやって来た人がいます。」とおっしゃいました。男は叫びました!「アッラーの使徒様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の後に啓示が下った!!!」するとウスマーン様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は「いや、そうではないが、真実の言葉と正確な眼識だ。」とおっしゃいました。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がおっしゃった通りです。

 

《信者の眼識を畏れなさい。彼はアッラーの光によって見るのです。》ティルミズィー伝承

 

こういった奇跡を、子ども達に聞かせることで、人間の持つ不可視の物への欲求を満たし、アッラーが禁じている物を必要としなくて済むようにしてあげることが必要です。

 

また、ハリーポッターに関しては、子ども達が好きな点に、彼が正義のために悪と戦う、友達を守る、といった理想的なヒーロー像があります。これも、私たちは、ムスリムの子ども達に、実際に歴史上に、多くのムスリムの英雄がいたことを伝える必要があります。想像上のヒーローは、作者によって、その後、どのようにも変えられます。ムスリムの子ども達が憧れる対象が、現実にはいない、想像上の魔法使いであることは、ある種の危険を伴います。作者が、お話の中で後に、彼に道徳的に良くないことをさせ、間違った道へと子ども達を招く人物に作り上げることもあり得るからです。

 

子ども達の理想像が、ハリーポッターであることを、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がご覧になり、子どもに、「あなたの好きなハリーポッターは、どういう人ですか?」とお尋ねになられ、「彼は魔法使いです。」と私たちの子ども達が答えたら、また、子ども達が、ハリーポッターの登場人物については、その年齢から性格までこと細かく答えられるのに、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)が、「私の子ども達の名前を知っていますか?」と尋ね、私たちの子ども達が答えられなかったら、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)がどんなにがっかりなさるでしょうか。

 

アッラーが、私たちの子ども達に、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)への愛情を御恵みくださいますように。

 

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