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映画・演劇のレビュー

「演」~en~『愛情マニア』

2017-04-26 18:56:10 | 演劇

大学生を拉致して自分の部屋に閉じ込めるOL。彼女に気がある大家。みんなに愛してもらいたい彼女の母親は大家にも好きになってもらいたい。そんな大家の娘は父親の愛に飢えている。職場の後輩と上司にカップルがやってきて、拉致学生の友人もやってきて、なんだかんだの大騒ぎになる。芝居は、このなんとも異常な人たちの関係性を通して、その向こう側へと突き抜けていこうとする。 きっと表面的には突劇金魚によるオリジナル・ヴァージョンとはまるで違う世界を見せながら、根本では同じ世界を見せる。

この群像劇に登場する人たちは、自己表現の未熟さから他者との関係性をうまくに築くことができず、突飛な行動に出る。しかもそれが異常であるということすら気付かない。「演」~en~の役者たちは不器用さを武器にしてこの異形の世界を誠実に表現しようとする。しかもこの抽象的な舞台美術においては、演じるうえで頼りとするモノもなく、演じることになる。そんな彼らの芝居のぎこちなさが、なぜかこの作品のルックと見事にマッチしている。

 

とても変態的な行為が、そんな風にしか自己表現できないもどかしさが、なんだか切ない。とても繊細なサリngさんの世界を、演出の佐藤さんは爆音と過剰な演技で過激にみせる。水と油がぶつかり合うことで生じるとんでもない世界は、やがてなぜかとても優しい世界へと収斂されていく。傷つけあっているように見えながらも実はお互いを思いやり、幸福な世界へと向かう。

 

 


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