今年一番の芝居だ。もちろん、一番よく出来た芝居、というわけではなく、一番目に見た芝居という意味なのだけど。ウイングカップ参加作品。まだ芝居をはじめたばかりの若手が大一番に挑む勝負作のはずなのだが、どうしてこんなにも、感傷的なお話を作るのだろうか。もっと大きな夢を語るような芝居にしてもいいじゃないか、と思うのだけど、そうはしないのが今の若い人たちなのか。
20歳の6人が高校時代を振り返る冒頭のエピソード。それだけで、90分持たせるのかと、一瞬思ったけど、そうじゃなかった。次は25歳の話になる。さらには、30歳、と5年刻みの3話からなるタイトル通りのボーイズトーク(だった気がする)。成人式に集まった高校の演劇部の6人。社会人になったばかりの25歳。そして、同窓会に集まった30歳の彼ら。夢を叶えたのは誰か。
仲間のひとりが、もう一度芝居をやろう、と言う。だけど、みんなそれぞれの生活があるから、不可能だ。そんなこと言わなくてもわかる話だろう。だけど、そこに頼りたくなるほど、心が弱っている。ある種の普遍を描こうとしたのだろう。だけど、それは想像の普遍でしかない。
ひとりひとりが書き割りのようなキャラクターなので、リアルではない。20代になったばかりの自分たちが想像する未来。それがこんなふうにパターン化された悲惨でしかないのが、見ていてつらい。
途中から、これは『キサラギ』のような芝居か、と思った。ラストは、虐められていた男(からかわれたいただけ?)が無邪気に彼を虐めていた他の5人に復讐する話になる。だが、そこがお話の中心ではなく、それすら、横道のエピソードになる。結局は挫折の話に収斂されていく。今も芝居を続けている男が、ひとり去って行くことで終わるのはなぜか。彼を主人公にしたのなら、もう少し彼への言及があってもよさそうなのに、そうはならない。6人を均等に描く群像劇としてはバランスが悪い。いろんなところで中途半端なまま終わってしまうのが残念だ。やりたいことがこれでは伝わらない。作り手の中でも、収拾がついてないまま、提示してしまったように見える。