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映画・演劇のレビュー

大阪新撰組『フェルナンド・アラバール作品撰 Vol.3』

2017-10-11 22:38:37 | 演劇

 

今回は「ドストエフスキーという名の亀(」演出:栖参蔵)と「遁走曲エロチカ」(演出:阿矢)の2本立。このわけのわからなさが短編故、作品の魅力になっている。もし、長編でこれをやられたなら腹が立つところだが、短編ならキツネにつままれた気分でスコンと受け入れられる。なんか騙されたような、でもそんな不思議って、どこにでもあるかも、という気分。理屈の通らない不条理をそのまま受け止める、という感じだ。感情的に、というか、感覚的に受け入れられる。しかも、2本とも演出がなんだか軽くて深刻にはならないのがいい。

 

まず、1本目の『ドストエフスキーという名の亀』から。夫が動物園の巨大な亀に食べられてしまった女。丸呑みされた夫は亀の中で生き続ける。動物園の職員は彼女の夫ではなく、亀の方の心配をする。コップのフチ子ちゃんを使い、水槽を持ち込み、本物の亀にも登場させ、着ぐるみの亀として南田さんが登場する。巨大な亀に飲み込まれた男が、亀の体内で、亀と同化して生きるだなんて、バカバカしい話をキッチュなタッチで見せる。現実にはあり得ないし、そこに理に落ちる意味を見いだせないから不安になる。え? なんで? そして、それって何? と思ったところで終わっていく。この40分程という長さが実に心地よい。南田さんと古川さんというベテランコンビが初々しい夫婦をかわいらしく演じていて笑えるのもいい。

 

初めて見る若手2人による2本目『遁走曲エロチカ』も新鮮だった。たぶん、恋人同士の男女のやりとり。きっと甘い語らいのはずなのに、「あなたのような不細工な人はいない」「そんなに褒められたら困って照れるよ」という感じで、本来の反対の語彙で応酬する。罵る言葉が褒め言葉とはややこしい。そんな言葉のキャッチボール。これもなんだかよくわからない話だ。しかも、主人公ふたりに音楽に伴奏者まで登場して、なにがなんだか。僕には難しいことはわからないけど、とても気分よく見ることは出来た。

 


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