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映画・演劇のレビュー

和歌山大学演劇部『プレジエンド』

2016-03-05 22:08:22 | 演劇

和歌山大学演劇部第11期生卒業公演が、なぜかウイングフィールドで上演される。普通なら学内でやればいいはず。そのほうがリスクも少ないし、たくさんの友人知人にも見に来てもらえたはず。なのに、彼らは果敢にも大阪の小劇場で、普通の土日公演を打つ。まず、その試みに興味魅かれた。「なぜ?」と思うから、気になる。どんな試みをするのかにも。だから、見に行ってみた。

不思議な芝居である。今まで見たことないような、タッチ。上手いのか、下手なだけなのか、それすらなんだか微妙で、そこがまたミステリアスで、心魅かれる。凄い、と言うのでは断じてない。過大評価する気もさらさらない。でも、これは、すごく変だ。そのくせ、真面目で奇を衒わない。でも、こういうのは正攻法とは言わない。 確信犯なのか、どうかは、微妙だ。いろんなことが聞いてみたくなる作品で、ついつい出口にいたスタッフに声をかけてしまったし。なんで、これをウイングで上演したのか、とか。あまりたくさんは聞かなかったけど。(想像する楽しみを残しておきたいし。)

4話からなるオムニバス。のはず。だけど、こんなオムニバス初めて。転換の遅さも画期的。ふつうならもっと、テキパキする。だが、彼らはのんびり、しゃべりながら、する。そこでも芝居をしてるし。しかも、必要以上に遅い。お話のつなぎ、なのだが、そこが本編と陸続きになっている。2時間の作品はトータルでひとつの世界を提示する。だから、これは短編連作スタイルの長編でもある。タイトルの『プレジエンド』というのを、僕はずっと『プレジデント』だと、思いこんでいた。

芝居が始まる直前に気付いた。でも、これはずるい。『プレ・ジ・エンド』なのだ。おしまい(エンド)の直前の風景、ということで、それなら、こんなふうにつなげないで欲しい。でも、こちらは明らか確信犯。4つの話は別々の作家が手掛けている。トータルなイメージがちゃんと出来ているのは総合演出の馬淵浩晃(1,3話の主役でもある)の手腕ゆえか。実に上手い。このアンニュイとしたタッチがいい。

いずれの話にも、ストーリーにメリハリがない。何が起こっているのか、よくわからない。単純なお話で難しいことなんか何もないのに、なんだか、よくわからない。そして、そこが魅力でもある。スイカ男の話なんか、わけわからない。でも、スイカ男がとてもチャーミングで、わけなんかわからなくてもいいや、と思わせる。

第1話である『アスファルトに置く花のように』。このタイトルはわかりやすいし、説明的で、芝居をしっかり、伝えるけど、当の芝居自身は、摑みどころがないし、よくわからない。自分の勤める会社に放火しようとしていた男は、その犯行現場を少女に見られて、彼女に脅され付き合うことになるのだが、その後のふたりのデート延々と綴る。なんだか、幸せそうなのだ。だが、・・・。

わかりやすいものを、わかりにくく、作る。その姿勢は4話ともに共通する。終末の風景を暗示する4話は、いずれも、すっとぼけたようで、さらりとしたタッチ。いずれも2人芝居。オチはあまりはっきりとは付けない。「4つの思いの物語」とパンフにはある。確かにそれぞれの想いは描かれる。だが、説明的にはしない。悠々たるタッチで2時間を見せる。とても、おもしろく見た。


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2 コメント

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ご来場ありがとうございました。 (吉村篤生)
2016-03-06 01:00:01
和歌山大学演劇部の吉村と申します。出口近くでお話しさせていただいたスタッフの者です。
本日はご来場くださりありがとうございました。
その上、このような素敵な劇評まで書いていただいて。
何より、少しだけではありましたが、お話しする機会を持てて嬉しかったです。
夜分に失礼いたしました。
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御来場ありがとうございました! (仮面の1枚)
2016-03-06 01:52:07
御来場ありがとうございました!
自分たちの公演がこのようにブログとして扱われるのが初めてなので嬉しいです!
内容について僕からは公演で伝えられたものだけを。

タイトルについてですが「プレ・ジ・エンド」の他にも......。まあでも意味なんてないんですけどね。

僕等11期生の代とはだいぶテイストが違いますが、後輩達の公演も機会があれば是非。
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