習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ルート・アイリッシュ』

2012-04-13 22:04:14 | 映画
 今週から新学期が始まって、とてつもなく忙しい。今年は3年の担任だし、それより何より、クラブだ。身体の調子が最悪で、先月の末から右肩が痛くてまともに腕も上げられないのに、ノックもちゃんとやるし、試合にも入って生徒の相手をしてきたのだが、それもあって痛みはどんどん増してくる。さらには原因不明の右脇腹の強度の痛み。あげくはまともに身体も動かせなくなる。さすがに怖くなり、医者に行ったが、原因はよくはわからないまま、数日、よくやく、左半身の痛みは、新学期が始まる前日にはなんとか徐々に収まり、今ではギリギリ普通に生活はしているが、先にも書いた右腕の痛みは収まらないままだ。そんなこんなで、今週はきつかった。なのに、火曜日はクラブが休みの日で、夜に時間が出来たから、ついつい重い身体を引きずって、映画館に行ってしまった。

 そこで見たのが、この映画なのだ。せっかく、1本映画を見れる時間が出来たのだ。できるだけいい映画が見たかった。選択は悪くはなかったはずなのだ。だが、如何せん体調が悪すぎた。後で考えると、早く帰れる日にはさっさと帰って早く寝るべきだった、と思う。疲れから、途中でうつらうつらしてしまい、やばい、ことになった。何度か意識を失ってしまうという失態をやらかしてしまったのだ。もったいない話だ。

 ということで、今回はちゃんと見れていないから、何も言えない。ケン・ローチの映画はすべて好きだ。前回の『エリックを探して』のようなちょっと甘い目の映画も含めて、つまらないと思ったことがないのに、今回はなぜか、のれなかった。それは前半の何度かうつらうつらしたことが、原因で、映画に集中出来なかったことによる、と言うべきかもしれないが、なんだかそれだけではない気もする。途中からはちゃんと見ていたし、内容がわからなくなるほどに、記憶が飛んでいるわけではないのだ。だが、失った集中力は如何ともしがたく、最後まで、この映画にのめり込むことはなかった。その日は、暗澹たる気分で帰った。だから、この映画については何も書く権利はない。

 凄く期待したのだ。ケン・ローチがどんなふうに、イラク戦争を描くのか。だが、僕が悪いのは重々承知しているけど、でも、この映画は彼らしくない。アプローチとしては、悪くはないのかも、しれないが、こうして外側から描かれるイラクの姿は、なんだか違和感がある。もちろん僕たちは部外者だ。何も知らないし、ここに描かれる怒りや悲しみは頭ではわかっても身体ではわかるはずもない。だが、ここまで距離感を感じてしまうのはなぜだろうか。イラクの戦場で死んでしまった親友の死、その理由を突き止めるため、彼の妻と共に原因究明に乗り出す。調べていくうちに衝撃的な事実が見えて来る。サスペンス・タッチのお話で、ケン・ローチの映画にはめずらしいアクション映画の要素まで盛り込まれてあるのだが、なんだか中途半端な娯楽映画みたいで、まるで映画に乗れなかった。

 なにが、原因なのか。自分の居眠りなんか、棚に上げて、この映画のダメさが、とても気になった。ケン・ローチの映画が、ここまで魅力的ではないし、違和感を拭いきれないのはなぜか? それはこの映画の悲劇が身に沁みてこないことにその原因があるのではないか。なんだか主人公の怒りも、夫を失った妻の悲しみも、とても空々しいものに見える。映画がなんだか嘘くさいのだ。

 実は今日、ツタヤで、『バビロンの陽光』という映画をレンタルしてきた。そして、さっき、見た。本当はこの映画ではなく、その映画のことを書きたくて、パソコンに向かったのに、延々とこの『ルート・アイリッシュ』のことを書いてしまった。今日だって1週間の疲れからフラフラなのだが、この淡々とした映画を見ながら一瞬たりともスクリーン(TVだけど)から目が離せなかった。同じようにイラクが描かれる。巨匠ケン・ローチには、心動かされなかったのに、この若いイラク人監督の映画には、心揺さぶられた。この2本の映画の格差が、今の僕にはなんだか、心地よい。ケン・ローチが悪いだなんて、言わないし、そんなはずはない。だが、今、この1本に出会ったことで、『ルート・アイリッシュ』を受けいれられなかった訳がなんとなく、わかった気がする。まぁ、それって、個人的な気分の問題でしかないのだろうけど。後日『バビロンの陽光』の話を書く。

 

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