goo

No803『スリー☆ポイント』~3つの地点の向こうにみえるもの~山本政志監督トーク

7月30日の土曜、シネ・ヌーヴォでのレイトショーでの上映後
山本政志監督のトークが行われました。

ヌーヴォの8.9月スケジュール誌に添えた案内文で、
「やんちゃ男・山本のどこに行っても友達になれる才能(?)が見事に花開いています」
との言葉どおり、山本監督は、
人前に立ってしゃべる時は、とてもざっくばらんで、
一見ちゃらんぽらんなようにもみえるけれど
映画に対する姿勢は、極めて真摯で、厳しく、映画でしかできないことを
深く追い求めているように思う。

舞台挨拶では、開口一番、
「大阪では、あまり宣伝していないようだから
観た人は、うなされたように、いい映画だったと繰り返し言ってください」
「俺は、今日、財布を忘れて来て、朝一番に、
今日のトークの聞き手の島田くんに電話して、
貸してくれと頼んだところ」と言って、会場の笑いを取っていた。
本当に気取らず飾らない監督です。

トークの聞き手である、島田角栄監督(『デストロイ・ヴィシャス』)にとって、
山本監督の『闇のカーニバル』、『ジャンク・フード』は
聖書のような映画、とのこと。
「優しいキャラなのにすごく暴力の匂いがする」
本作については、
「言葉にできないものを映像にしている。
凶暴にみえる人でも、優しいところがあると思った」

さて、山本監督の新作『スリー☆ポイント』は
京都、沖縄、東京と3つの地点から
3つのスタイルで描くユニークなつくり。

京都では、ラッパーの若者たちへの取材を元に
3つの男女のエピソードが展開、
そこに、沖縄の行き当たりばったりで撮られた
おもしろ人間ドキュメントが挿入される。
沖縄で出会う人は皆個性的だが、
なかでも、髯づらの野生人てっちゃんの存在は圧巻。
東京では、
妻子を亡くした男と、亡妻を演じる女との
不思議な生活を描いた中篇ドラマ。

それでは、トークの概要をご紹介したい。

山本「京都、沖縄、東京のどれが好きかは、
観た人の感覚によってさまざま。
俺としては、3つやってみたかった。
通常の企業映画では成立しないことを、自由にやりたかった。
一つのテーマで3つを系統だてるのは嫌だった。
3地点とも、俺が撮ることによって、どこかつながっていればいい。
同じテーマにしない“よさ”もあるはず」

島田「沖縄では、本当にヤクザとうなぎを取りに行ったのか?」

山本「映画にうつっているとおりで、
ヤクザの事務所にも、カメラを持って、そのまま入っていった。
スタッフの学生達は、びびっていたが、
それ以降も、昼間は暑かったので、三品茶も飲めるし
よく涼みに行っていた」

島田「ヤクザと仲良くなれるのはなぜ?(笑)」

山本「はじめは『銭(を地元に)落としていけ』と言われたが
正直に『全然ない』と答えた。
意外に、人のことを信じやすい人たちで、
会っているうちに仲良くなった」

島田「映画で、暴力のにおいがするところがすごく好き」

山本「今までの作品に比べれば、暴力性は抑えている。
京都篇で、松葉杖ついている青年は、
アクション監督の不手際で
リハーサルの時に、けがをしてしまい、出れなくなった。
しかし、代役も見つからず、
松葉杖をついたままでいいからと説得して、出演してもらった。
彼の、怖そうで、迫力に満ちた顔がいい。
最近の日本映画では、アウトローが少なくなっている。

韓国の『チェイサー』のナ・ホンジン監督の
新作(第2作)『黄海』をみたが、
顔がゴツゴツしていて、アウトローの匂いがプンプンしている。
リアルなアウトローが日本映画の近作には、いなくなった。

沖縄、京都は、何も決めていなかったが、
京都はヒップホップだと唐突に思い、
些細な日常の出来事を撮りたいと思った。
ドラマの部分は長回しが多い」

島田「僕は沖縄篇をずっと見てみたいですね~」

山本「皆そう言うけど…、
カメラを持って切り込むのはわくわくして、
頭がひろがっていく感じがしておもしろかった」

島田「監督が被写体を愛していて、
その距離が観客も、映画を観ていて、わかる」

山本「京都篇は、
過去にどんなひどい目にあったことがあるか、という質問を
大勢の若者たちに尋ね、
幾つかのエピソードを、本人以外の人に演じてもらった。
3日間リハーサルをして、練習は相当に重ねた。

できあがった映画を見て、
観客に、『ちっとも演出してないし、何もやってねえじゃないか』
と言われると、逆に『やった!』と嬉しく思う。

東京篇では、青山真治監督に出演してもらったが、
とても上手かったし、やりやすかった。
「自分で考えて」と言っただけ。
出演してもらうかも、とはお願いしていて、
キスシーンがあることは、当日伝えた。
鬱ぎみの、おもしろいキャラ。

東京編のヒロイン、蒼井そらは、
『聴かれた女』(山本監督 07年)で主役を務めたが、
濡れ場を含めて、あんなにうまくできるとは思っていなかった。

今回の撮影に当たっては、
撮影前日まで、蒼井が、演劇で舞台をやっていたので、
リハーサルの初日は、舞台芝居っぽい演技だったが、
台本と違うことをやってから、台本に戻していくという形で
リハーサルに1週間かけた」

島田「京都篇の3つのエピソードのうち
リサという、回りに喧嘩を売ってばかりの女優がすごくよかった」

山本「リサとメンションを演じた二人だけは、
スケジュールに余裕がなく、演技力もあったので、
リハーサルをやめ、
撮影当日、二人に1時間与えて
自分たちで、ドラマをつくらせてから
それを手直しした」

島田「山本節だと思ったのが、ヒステリックな女リサと
沖縄篇のうなぎをとりにいく場面。
東京篇は、フィクションだけれど、ドキュメンタりーっぽい感じがした」

山本「役者は、のせてなんぼ、のもの。俺は現場では怒らない。
主役の村上淳は、すごくいい奴。
ホテルのロビーとか、デパートのシーンは、
許可なしで撮影しただけあって、かなりリアルに撮れた。
次回作は、日本では撮らないと思う」

島田「『ジャンクフード』みたいなアウトローを撮ってください」

トークの概要は以上です。
よくわからないまま書き留めたところもあり、
かなりとりとめのないメモですが、ご容赦ください。

『スリー☆ポイント』では、京都、沖縄が交錯しながら描かれ、
最後は東京が展開します。
トークの記載では、便宜上、「京都篇、沖縄篇、東京篇」という表記をしましたが、
それぞれが微妙に交差しており、一つの「篇」という独立した感じでもないので、
注記させていただきます。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« No802『大鹿村... No804『スリー... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。