夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

読書記録

2007年09月25日 | 読書
吉原手引草 (幻冬舎文庫)松井 今朝子幻冬舎八日目の蝉

犯罪者を主人公にしており、一瞬桐野夏生を思い出した。角田光代はこれで新境地を開拓したのではないだろうか。
人物の描写がすばらしく、とくに主人公の親友の「正しいのに心の温かい人」という理想的な人物像をごく自然に描いていた。

八日目の蝉 (中公文庫)
角田 光代
中央公論新社



悪人

吉田修一のほかのものとはだいぶ違う。大岡昇平の「事件」を思い出させるような、ごく普通の人間が犯罪の加害者や被害者になる過程を描いて静かな感動を呼ぶ。
あまりにリアリティがあるので、実際に起きた事件のルポルタージュかと思ったほどである。



悪人
吉田 修一
朝日新聞社



沈底魚

本年江戸川乱歩賞受賞作。本賞には珍しく公安やスパイを扱っている。
この頃かなり受賞作の質が低迷していた中ではいいほうだと思うが、次回作もぜひ読みたいと思うほどではない。
ただし、女性のキャリア理事官や主人公の同僚警察官の妻の描き方が、女性特有の性質を見事なほど全く出さず、フェミニスト的には絶賛ものだった。

沈底魚 (講談社文庫)
曽根 圭介
講談社



奥田英朗

「サウスバウンド」がトヨエツで映画化されるらしい。はじめは生活能力のない能書きばかりの全共闘崩れの父親に反感をもったが、だんだんその生き方がすばらしく見えてきて最後は落涙。
「家日和」「マドンナ」等も、どうしてこの人はこんなにサラリーマンの気持ちがわかるのか?と不思議に思うほど、面白い。


サウス・バウンド
奥田 英朗
角川書店



万城目学
「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」を読んだ。
森見登美彦に続いて、またも私の京都大好き指数を極大化してくれた作品。

こちらはモリミーと同じ京大だが、法学部卒。
文系らしく、京都・奈良の歴史を踏まえた作品で、モリミーとはまた違った面白さがある。「鹿男」の方は、理系の研究者が教授に進められて高校教師になるという設定がドラマ「高校教師」と同じなのだがその後の展開は全然違う。

モリミーは、トップランナーに出るというので、観覧希望を出したのだがだめだった。質問欄に「京都の歴史を踏まえた作品を書く予定はないのですか?」などとかいてしまったからいけないのかな。

モリミー作品に出てくる法学部卒の友人のモデルになった人は新司法試験に受かったそうである。

東野圭吾

「使命と魂のリミット」「夜明けの街で」どうも、この頃、すぐに先が読めてつまらない。
10月から月9でガリレオ(福山雅治)をやるのが楽しみではあるのだが。

じゃあ、加賀刑事が出るシリーズもやらないかな?

吉原手引草

松井今朝子 吉原で失踪した花形花魁の事件について、さまざまな関係者が語り、最後にあっという種明かしがある。一度も語ることはない花魁本人の魅力的な人物像が多くの他人の話でいきいきと表現されるのは作者の筆力だと思う。

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