堺正章・夏目雅子、唐沢寿明・牧瀬里穂、香取慎吾・深津絵里
西遊記DVD-BOX | |
坂元裕二 | |
ビクターエンタテインメント |
これは、日本では、女=守られるもの、男=守るものというジェンダーバイアスのためだと思う。
玄奘三蔵は、男だが、肉体的には非力であり、仏教の慈悲の心が強すぎてすぐに悪者や妖怪に騙されて、窮地に陥り、孫悟空らに助けてもらう羽目になる。日本のジェンダー役割分担意識では、こういう人物を男優がやるよりも女優がやる方が自然だからだ。
もし男優がやっていたら、「なんてふがいない」ということになり、共感を呼ばないんだろう。
こんなところにも如実に表れるジェンダー・バイアス、嘆かわしい事態だ。
私は中国法も研究しているのでよく中国に出張するが(今年だけで4回)、どの地方に行ってもどこかのチャンネル(地上波が40以上ある)で必ず西遊記のドラマをやっているが、玄奘三蔵は必ず男優がやっているぞ。
それから、「電車男」のジェンダーバイアスについても触れておこう。
外見も経済力も劣る男が美人を彼女にするから夢物語だというのが気に入らない。
そこでは、エルメスが、電車男の外見や経済力に囚われず、心の美しさを評価してくれる見る眼のある性格のいい女性だということになっている。
しかし、エルメスが美人でなければ、いくら性格が良くても夢物語にはならないのだ。
つまり、自分は「外見や条件より俺の中身を見てくれ」と主張しつつ、女性に対しては、外見がいいことを求めるという甚だ手前勝手な欲求があるのを正当化しているのが気に入らないのだ。
なぜ、男は性格さえよければよく、女はまず外見、それに性格が良ければなおいい、というダブルスタンダードがまかり通るのだ。
電車男 DVD-BOX | |
中野独人 | |
ポニーキャニオン |
男が主人公の漫画やエンターテインメントってみんなそうでしょう。
のび太がどんなにだめでも、未来ではかわいいしずかちゃんがお嫁さんになってくれる。
でも、しずかちゃんがいくら性格が良くても外見がかわいい子でなければこのファンタジーは成立しないのだ。
(ちなみにしずかちゃんの姓は源、でも、「王様のレストラン」で山口智子の役名を「磯野静」にした三谷幸喜の方がよく歴史を踏まえている)
王様のレストラン DVD-BOX La Belle Equipe | |
三谷幸喜 | |
ポニーキャニオン |
昔、「寺内貫太郎一家」というドラマで、左とん平が、その外見から嫁の来手がなく、美人とはいえない女性の見合い写真をもらって、仲人に「気立てがとってもいいお嬢さんなんですよ」といわれたとき、「でも気立ては連れて歩いても他人に見えないだろう!」と怒鳴って断るシーンがあった。容姿の劣った男という設定の人物にこういう科白をしゃべらせる国なんだな、ここは。
寺内貫太郎一家 DVD-BOX 1 | |
向田邦子,福田陽一郎 | |
TCエンタテインメント |
小倉千加子がいうように、日本のような性差別社会では女の美貌と男の経済力が交換されるが、「電車男」の場合、男が交換するものが「性格の良さ」になっただけで、女の方から差し出さなければならないものがまず第一に美貌であるということにかわりはなく、ジェンダー・バイアスの枠組の中に入っていることにかわりはない。